2015.06.24 (水)

清水盛三が語る バスマスターエリートシリーズ第5戦 
ポストスポーンをフィネス&スイムベイトで攻略

2015年6月3~7日に開催されたバスマスターエリート第5戦は、ケンタッキー州とテネシー州にまたがるケンタッキーレイクが舞台。清水盛三にとっては過去に優勝経験もある得意なレイクでの試合ではあったが……その変貌に戸惑う清水がとった戦略とは。

■ テキサスリグで沖のハンプを狙いグッドエリアを発見

レイクハバス戦が終わって一時帰国後、短い滞在期間中に日本での仕事を終えてまたすぐに渡米。車とボートを置いてあった西海岸から次の開催地、ケンタッキーレイクまでの移動距離は約2700km。そこを3日掛けて運転する予定だった。

ところが、車にトラブルが発生してほぼ1日つぶれてしまった。これでは普通に走っていたら公式練習に間に合わなくなってしまう。だから、移動2日目は、16時間ドライブ、睡眠時間1時間という超強行スケジュールになってしまった。それでなんとか公式練習には間にあったものの、練習前からかなりの体力を消耗してしまった。でも、これがアメリカを1人でトレイルするということだし、今回のケンタッキーレイクは優勝経験もあり、常に賞金圏内に入賞している得意なレイクということもあって、いつも通り淡々と準備に取り掛かった。

この時期のケンタッキーレイクと言えばオフショアの地形の釣り、いわゆるレッジフィッシングがメインになる。グラスはないので、ブレイク、ハンプ、チャネル等の地形変化とベイトフィッシュが絡むスポットがキーになる。と言っても、そんな場所が無限にあるので、とてもじゃないけど公式練習に全体を見るのはもちろん無理。ただ、エリアさえ見つければ、あとはストロングな釣りで釣れる湖……だったんだけど、今回は今までのケンタッキーレイクとは違う一面を見せられた試合となった。

エリアに関して言えば、過去の経験から自分にとっての実績場を何箇所か持っているけど、勝つためにも、自分の釣りを進化させるためにもそこばかりを頼りにはできない。だから、公式練習初日は、新たなエリアを開拓することにした。

でも、先程も言ったように、広大、かつオフショアの地形の釣りがメインとなるケンタッキーレイクでハニースポットを探し当てるのは至難の業。特にマップ上で良さそうな場所は他の選手も当然チェックしている。だから、誰にでもわかるようなわかりやすいエリアは避けて、他の選手が気付きにくいような自分だけのスポットを探していったんだけど……結局この日は3ポンドくらいのを1本釣っただけだった。

実際湖に浮いてみて驚いたのは、水温がこの時期としては低い23℃しかなかったということ。練習中はコールドフロントが来ていて、最低気温13℃、最高でも17℃という感じで、防寒レインを脱がない日もあった。さらに、水温低下と増水が重なって、まだまだスポーニングもありそうな感じだった。

練習2日目にはちょっとだけシャローを見に行った。すると、ブレーデッドジグで4ポンドクラス1本とキーパーが2本きた。でも、時期的にスポーニングの魚は減ってポストスポーニングで沖にでる魚が増えるし、デカいヤツほど先に沖に出ているはずなので、やはりオフショアの地形変化を釣らないと、「4日間の試合では勝てない」と判断して、すぐにオフショアの釣りに戻した。

そして、1箇所バタバタと釣れるエリアを発見。水深4m前後のハンプ状の地形でルアーはロングカーリーテールの10.5gテキサスリグアワセ切れするようなデカいのも喰ってきた。その他にも2箇所使えそうなエリアを見つけることができ、優勝したエリアも合わせると「やはりオフショア」という感触を得て2日目のプラクティスを終えた。

プラクティス最終日は、前日見つけたエリアとスタート地点の間で新たなエリアを探していった。見つけていたエリアまでの移動時間は約45分とまあまあ走らなければならなかったので、試合中の移動効率を考えての戦略。ただ、なかなか2日目のような良い場所は見つからず、さらにエンジンの修理もしなければならなかったので半日で早上がりして試合に備えることにした。

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■ DAY-1 & DAY-2 スピニング・フィネススタイルでビッグウエイト

迎えた試合初日、朝一はもちろん今回のプラクティスで見つけたあのエリアに走った。ところが、ある意味予想していたことだけど、ローカルの釣り人が入っていた。ここケンタッキーレイクはローカルトーナメントも多く開催されていて、釣りをしているのを双眼鏡で見られたり、プロの釣りがマークされている。優勝したときなんかは、まわりで待機していて、僕が移動しようとしたらそのスポットで釣り始めたりということもあって。結構それがトラウマになっていた。

だから、このエリアはスルーした。下手に入って横で魚を釣っているところを見られてしまうと、それこそ一生そこに居座られてしまう。次も練習で見つけた場所。そこには誰もいなかったので、まずはテキサスリグからスタートするものの、いきなり根掛かり。良く見ると僕が狙いたいドンピシャのラインに延々とナマズの仕掛けが入っている。こうなると、これ以上釣りはしにくいので移動することに。

次は優勝したとき使っていたエリア。この場所もかつては、ディープクランク、フットボールジグ、テキサスリグで釣れていたのに、今回は全然ダメ。結局、最終フォローのつもりで準備していた7インチストレートワームのワッキーリグで1本キーパーギリギリをキャッチ。

でも、それっきりで、1時間ほど粘ったけど全然釣れず迷いが出だした。練習で釣っていたシャローが近かったので、「少しだけでも見に行こうか」とかなり気持ちが動いた。でも、「シャローに時間を使っていたら絶対に上位には行けない」と思いとどまった。結果的にこの判断は良かったと思う。次のスポットが炸裂したからね。

で、朝一に入りたかった場所に移動。ローカルアングラーはもういなくなっていたので、狙いのスポットに入って釣り始めた。しばらくやったけど、全然バイトがない。風も良い感じで吹いているし、すごく釣れそうなのに魚探に魚が全然映らない。「季節の進行が予想以上に速く少し深い方に動いたのか、でもいきなりそんな遠くまでは離れないはず」と考え、狙っていた4mレンジから少しレンジを下げて同エリアの4.5~6mまでを魚探でチェックしていくと……魚探に魚の反応が。

そして、ついに炸裂。とは言え、ここでもスピニングでのフィネススタイル。ロングストレートワームのワッキーリグのシェイキングで連続キャッチ。しかし、その後しばらくパタッとアタリが止まってしまう。そこで、もう一度魚探を掛け直して、生命反応が多い所を見つけて釣ると、またしても連発。リミットメイク。その後もその繰り返しで4回ほど入れ替え。ウエイトは推定19ポンドまで上げた。

この時点で残り約1時間半。完全にパターンをつかんでいて、投げれば投げただけ釣れるという状況になっていた。しかし、コンフィデンスを持てるエリアがここしかない状況だったので、明日以降のことを考えて、残り時間で新たなエリアを開拓に行くことにした。

と言っても、一から探す時間もないので、スタート地点に戻りながら気になるエリアを釣っていった。しかし、パッとする場所もなく結局そのままウェイイン。ウエイトは19ポンド5オンス。「このウエイトならまずまず」と自分では思っていたけど、まわりが予想以上に釣っていた。結局32位。このウエイトでこの順位は今までのケンタッキー戦では考えられなかったけど、1~2ポンドの間に多くの選手がいたので、まだまだ問題ないと気を引き締めて2日目に臨んだ。

2日目、この日は朝一から狙いのエリアに入ることができた。そして、初日同様、ロングストレートワームのフィネスで2本キャッチ。その後1本獲ったあと、アタリが全く止まってしまった。前日あれだけ釣れたのだから魚は絶対いると信じて粘るも時間ばかりが過ぎていく。

その後も大きくエリアは変えずに、このエリア内で気になる所をチェックし続けたけど全然反応がなく……ついに残り1時間に。「リミットも取れないのか」と思ったそのとき、ピックアップしようとしたワームに4ポンドフィッシュが喰ってきた。

「これか」とこのビッグフィッシュをキッカケに魚が浮いていることをつかみ、残り30分でリミットメイク達成。その後、2本入れ替え。さらに、ラストキャストでも入れ替えに成功。2日目のウエイトは16ポンド2オンス。43位でなんとか準決勝進出を決めた。

ピックアップに喰ってきたバスがいなければ、また、ラストキャストの入れ替えがなければ、準決勝に行けていなかったかもしれない。でも実はこの日、同じエリアでスイムベイトも投げていて、乗らなかったけどガツガツというアタリがあった。だから、「バスは浮いているかも」と考えて心の準備もできていたので、あの時のチャンスを逃さず獲ることができたんだと思う。

それと、やはりロッドの性能も大きい。パワーシェイカーの、その名の通りのシェイキングのしやすさはもちろん、ショートバイトを奥まで喰わせられるティップのおかげでもある。さらに、そこからのフッキングのバットパワーがあるので、今回の試合では、かなりの数のバスを掛けたけど、ワームを取られた1回を除いてパーフェクトフッキング、パーフェクトランディングだった。

さらに今回は、パワーシェイカーの611Mをデッキにライン違いで2セット用意していた。メインはオーソドックスにフロロカーボンライン。もう1セットは、特に逆風に向かって投げる時に少しでもロングキャストできるようにPEラインを巻いていた。


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■ DAY-3 スイムベイトとグラスロッドの組み合わせで順調にウエイトアップ

迎えた試合3日目、準決勝。今大会は特別ルールで、準決勝に残れなかった選手が別の湖で敗者復活戦を行なうため、準決勝の前日は準決勝進出メンバーは休みだった。おかげで今までの睡眠不足を取り戻すべくしっかりと10時間ほど寝ることができて、この日は、頭が凄くクリアな状態で試合に臨むことができた。

もちろん朝一からあのエリアに直行。しかし、そこにはローカルのボートが3艇。しかも、ほぼドンピシャの位置に陣取っている。とは言え、「もうこのエリアしかない」と、この日は他の場所に移動せずローカルが釣っていたハンプの反対側に入った。

実は反対側は2日目までも釣っていたんだけど、全然釣れなかったスポット。でも、釣り方もだいぶ絞り込めてコンフィデンスを持っていたので、もう一度魚探を掛け直して、魚が映るスポットをしっかり釣っていくと……いきなり4ポンド。すぐに3ポンド。そしてもう1本追加。すべて前日までと同じスピニングタックルでのロングストレートワームのワッキーリグ。朝から順調な出だし。

しかし、連発のあとはアタリがストップ。でも、これも想定内。前日につかんだことを活かし、この日はここでスイムベイトを投入。そして、狙いどおりバイト。しかし、乗らず。そこで、「この状況でしっかり吸い込ませるためにできることは」と考えて、まず、スイムベイトのシンカーを軽いものにチェンジ。さらに、それまでスイムベイトに使っていたカーボンロッド(プロト)からリールを外してグラスロッドのレパードに付け替えた。

そしてその1投目……いきなりの4ポンド。狙いどおり思い切り吸い込んできた。疲れが溜まっていると、リグのチェンジが面倒くさく感じてしまい、ついついそのまま投げ続けてしまうなんてことになっていたかもしれないが、前日しっかり寝ることができたおかげで、この日は頭が冴えていたし体もそれについて来てくれた。

そこからは風がないときはスピニング、風が吹いているときはスイムベイトを投げてリミットメイク。そして数回の入れ替え。10時の時点で推定16ポンド。

しかし、なぜかその後全く反応がなくなってしまった。しばらく粘ってみるものの風も完全に止まり、気配が完全になくなったので移動を決意。1時間ほど違うエリアをやってみたものの、バイトはない。残り約1時間となり「ダメか」と思い始めたところで風が吹きはじめた。「状況が変わった」そう直感し、いちばんコンフィデンスがある朝のエリアに大急ぎで戻ることに。

そして移動後、まずスイムベイトを投げると……4ポンドのビッグフィッシュ。入れ替え。その後もスイムベイトを投げ続け、入れ替えはならなかったものの何本かキャッチ。「まだイケる」とラスト15分。スピニングタックルに持ち替える。ラスト5分、ロングストレートワームで2本獲って、ついに入れ替え。結果17ポンド11オンスで、2日目の43位から最終32位まで順位を上げることができた。

過去に優勝経験もあるし、僕のなかでは得意レイクだと思っていたケンタッキーレイクだけど、ケンタッキーという湖の違う一面を知ることができた今回の試合。今までは魚がいるエリアを見つけさえすれば釣れていた感じだけど、ルアーや釣り方までしっかり絞り込む必要があった今回の試合。しかも、今までのケンタッキーでは考えられなかったフィネススタイルまで投入するという、いないから釣れないのではなく、いても口を使わない、セレクティブな状況だった。

ただでさえ広大な湖で、エリアだけじゃなくルアーと釣り方まで絞り込まないといけないというのは至難の業だけど、今回やっと、ケンタッキーをどう釣れば良いのか、本当の意味でわかった気がする。もしこのレイクでまた試合があれば、次は今回の経験を活かして絶対釣ってくる自信はあるよ。

まずはその前に今シーズンの後半戦。最後の最後まであきらめずに全力で臨みます。後半戦の巻き返し、期待していてください!

■タックルデータ
ロッド:シナジー CSYC-71H スーパーディトネーター
ライン:フロロカーボン 18lb
ルアー:ロングカーリーテール テキサスリグ
シンカー:E.G.タングステンバレットシンカー 10.5g

ロッド:ヘラクレス HCSS-611M パワーシェイカー611M
ライン:フロロカーボン 8lb
ルアー:7~8インチストレートワーム ワッキーリグ

ロッド:ヘラクレス HCSS-611M パワーシェイカー611M
ライン:PE1.5号+フロロカーボン 8lb
ルアー:7~8インチストレートワーム ワッキーリグ

ロッド:ヘラクレス HCSC-73M レパード
ライン:フロロカーボン 16lb
ルアー:ライトスイムベイト

■関連サイト:B.A.S.S. Bassmaster

清水盛三オフィシャルサイト「NEVER GIVE UP」
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清水盛三オフィシャルブログ“I HAVE NO LIMIT”
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