2016.07.28 (木)

清水盛三が語る バスマスターエリート第6戦&第7戦 
緻密なトップウォーター戦略で優勝争いを演じたカユーガ戦(前編)

バスマスターエリートシリーズ第5戦トレドベンドで決勝進出を果たし、シリーズ後半戦に向けて猛烈な追い上げを見せる清水盛三。そのままの勢いで臨んだ2016年6月8~12日の第6戦、自身初フィールドとなるレイクテキソマでは思わぬアクシデントが……

そして、ビッグフィッシュ賞を獲得する魚を持ち込み、初日のトップウエイトを叩き出し首位スタートとなった6月23~26日の第7戦カユーガレイク。「試合中は完全にゾーンに入っていて、ここ数年で最高のパフォーマンスを発揮できた」と語る清水がその戦いを振り返ります。

■ 好調のプラクティスから一転、悪夢の第6戦レイクテキソマ

第6戦のレイクテキソマは初めての湖だったので、1日だけしか時間がとれなかったが春に試合の隙間を縫ってプリプラクティスを行なっていた。その時は大減水していて、小さいレイクだなという印象だった。時間もなかったのでサラッと一周見ただけだったけど、クランクベイトを巻くだけで4ポンドクラスまでが普通に釣れ、良い感触でプリプラを終えた。

しかし、公式プラクティスを迎えると状況は一転。10m以上の大増水で陸上の木が水に浸かり、全域冠水ブッシュだらけのレイクへと激変。まるで別の湖のよう。湖畔の公園や公園のトイレまでもが水没しており、中止になってもおかしくないほどひどい状況だった。

さらに悪いことに、公式プラクティスの前日クモに噛まれてしまい、ふくらはぎが1.5倍になるくらい腫れあがっていた。それをおして湖に浮かびなんとかプラクティスはこなしたが、夜になっても痛みと腫れが引かず、その晩救急病院に行く羽目になってしまった。しかも、夜も遅いのでさすがに他に病院もないからなのか僕の他にも多くの急病の患者さんがいて、順番が来るまで数時間待つことに。

夜の救急病院、静まり返る中で時折聞こえる泣き声……ひとりアメリカでこの状況はさすがに精神的にも辛い。結局、病院から戻るころには、通常のスケジュールだともう起きて準備を始めないといけないような時間だった。しかし、さすがに一睡もせずアメリカの湖にひとりで出るのは危険。さらに、ベストな体調で試合に臨むためにも、休むことも大事だと考えプラクティスは昼からすることにした。

しかし、そこからのプラクティスは順調だった。短い時間だったので数は5本しか釣れなかったが、すべて4ポンドオーバーで揃えることができた。釣り方も1/2ozのキャスティングジグでブッシュやスタンディングティンバーを撃っていくというもので、決勝進出を果たした前の試合トレドベンド戦からの良い流れを引き継いでいた。

さらに、公式プラクティス最終日も同じ釣り方で推定20ポンド超え。「これは絶対いける!」と前回に続き、数は釣れなくても来ればデカいというパターンを狙ってラバージグを撃ちまくるという作戦でいくことに決めた。あとは体調次第。ふくらはぎの状態は完全ではなかったが、薬で痛みと腫れを抑えての出場となった。

ところが、試合が始まると急激な減水に見舞われた。僕がメインにしていたエリアは水がなくなり、水温も一気に上昇。魚が完全に散ってしまっていた。初日はなんとかリミットをとったものの狙いのビッグフィッシュを1本も入れることができなかった。

見失った魚を速く探さなければという焦りに抗生物質による倦怠感のようなものが加わり、少し集中力を欠いていたことは否めない。釣りが速く雑になってしまっていたのだと思う。そのうえ、いくら減水したとはいえ、もともとの大増水ぶりから見ればまだ通常水位よりは遥かに高く、まだまだカバーは無限にある状態。なので、とにかく「次のカバー、次のカバー」と気持ちが空回りしている感じだった。

しかも、今年は季節の進行が遅く、6月になってもまだスポーニングに絡む魚が大多数をしめていた。そうなると、なおさらゆっくり釣らないとビッグフィッシュは口を使ってこない。2日目後半になってようやく、アジャストできるようになりビッグフィッシュが喰い始めたが……カバーの本当にややこしいところで掛けているので、完全にフッキングさせられなかったり、巻かれて出てこなかったりと悔しい思いをした。

ビッグバスとの紙一重の攻防は、やはりケガの影響からか、微妙にアタリに対しての反応が遅れていたのだと思う。結果は13ポンド2オンスで99位。

とはいえ、勝負できる魚を見つけていたし、釣り方もわかっていた。「この借りは次の試合で必ず返す」との思いを胸に秘めて、次の第7戦カユーガレイクへと向かった。


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■ 第7戦 カユーガレイク サイトフィッシングか普通の釣りか、狙いを絞れず終えたプラクティス

このレイクでは2年前にもバスマスターエリートが開催されており、そのときは準決勝へ進み30位でフィニッシュとまずまずの成績だった。琵琶湖に良く似たタイプの湖で、南湖のようなグラスフラットや北湖西岸のように3~4mにブレイクラインがあってそのショルダーにウィードが生えているという、僕的には得意なタイプのフィールド。

2年前の試合のメインの釣り方も、ロングカーリーテールワームのキャスティングテキサスリグという琵琶湖で学んだ釣り方だったので、今回も琵琶湖の釣りが活かせればと考えていた。

しかし、琵琶湖と違う点もあった。それは、琵琶湖以上に水質がクリアなこととスモールマウスがいるということ。試合前の日中の気温は25度くらいまで上がっていたが、朝の最低気温が12度前後とまだ低く、おかげで水温が20度前後までしか上がっていなかった。そこに、クリア、スモールマウスとくれば、今回もまたスポーニング絡みだろうと予想できた。

公式プラクティスで湖に出てみると、予想通りスポーニング中のスモールマウスがいっぱいいる。また、グラスパッチに浮いているスクールも数回見かけた。3~4ポンドはある良いサイズも多かったが、スモールの足の速さ、さらには他の選手にも見つけられているかもしれないということを考えると、全く当てにできる魚ではなかった。

一方ラージマウス狙いの普通の釣りはというと、クランクベイトでは数は釣れるがサイズが伸びず、いっても14~15ポンドくらいまでというパターン。トップウォーターにも出たものの超単発。グラスへのパンチングでもバイト数は少ない。

公式プラクティス中の最大魚は約3ポンドととても満足のいくサイズではなかった。その釣り方も、パンチングしていると、軽くバックラッシュしたような感じでスプールからラインが浮いてしまうことがあるが、それを直すために全然違う方向にキャストして巻き直しているときに釣った、というかたまたま釣れたという感じ。

スモールマウスのサイトフィッシングとラージマウス狙いの普通の釣りをどのように使い分けるか……前の試合までの良い流れをつくってきたストロングスタイルをどこまで貫けるか……プラクティスを終えてもやるべきことが絞り込めず、正直試合が始まるのが怖かったが、あとは自分の直感を信じて動くしかないと腹をくくった。


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■ 完璧な試合運びでDAY-1トップウエイト&ビッグフィッシュ賞獲得

迎えた試合初日、朝一最初に入ったエリアはプラクティスで3ポンドを釣った場所。ここは奥にコーブを控え、ちょっとした岬になっている。狙うスポットの水深は1.5mほど。その岬周りで、まずはジャックハンマーからキャスト。朝の早い時間帯ということもあるが、プラクティスの3ポンドもフリッピングの回収中に獲っているので「横の動きに反応するはず」と考えてのセレクト。

その数投目、魚が触ってきた感触がロッドを通して手元に伝わった。そこで次の1投はリトリーブスピードを若干落として喰わせにかかる。そして、狙い通りその日の1本目をキャッチ。サイズは2ポンド半ほど。もちろん納得いくサイズではないが、幸先の良いスタートを切った。

さらに、ジャックハンマーを投げ続けてもう1本追加。その後バイトが遠のいたが、水の中を覗き込んでみると、下にはデカいバスのスクールが。しかし、クリアウォーターでしかも無風状態ではムービングベイトには簡単に口を使ってこない。

そうこうしているうちに少し風が吹き出したので、すかさずジャークベイトにチェンジ。その1投目に来た。貴重なキーパーだがあまり大きくなかったので、またすぐ別のルアーにチェンジ。

セオリーではクリアウォーター=トップウォーターだが、この日のように風があるときはトップウォーターという選択肢は除外するのもセオリー。しかし、水面がざわつきバスの警戒心が薄れるため、クリアウォーターのビッグフィッシュを攻略するチャンスでもある。とはいえ、並みのトップウォータールアーではその動きや音が風や波にかき消されてしまいアピール不足。

そこで、そんな状況でもバスを引き上げるパワーを持つトップウォーター、シャワーブローズをピックアップ。さらにアピール力を増すために、また、普通のことをやっても釣れそうもない感じだったので、こんなクリアウォーターでは誰も投げないであろうカラー、モリゾーピンクをセレクトした。

その5投目……狙い通り4ポンドオーバーが出た。さらに、同じエリアを流し直して、またしてもビッグフィッシュが出たがミス……と思ったが、そいつがまた喰い直してきた。4ポンド半はあるナイスサイズで早くもリミットメイク。

しかし、「下の3本は入れ替えないと上位にはいけない」と次のエリアに移動。そこは練習中にグラスの中へのフリッピングで数本釣っている場所。

しかし、この日の状況から判断して、グラスの中ではなくエッジを狙うことに。朝一のエリアと同様、まずはジャックハンマーをキャスト。その3投目……4ポンドをキャッチ。入れ替え。さらに3ポンド半。そしてもう一発4ポンドとジャックハンマーで怒涛のビッグフィッシュラッシュ。これでライブウェルの中は、1本を除いてすべて4ポンドオーバーに。

この時点で11時。ここまでは、頭で考えた通りに体がすぐ反応し、それを実践するとすぐに答えが返ってくるという完璧な試合運び。あと1本、一番小さい3ポンド半を入れ替えることができれば、確実に上位にくい込める。ここで、もう1つの戦略の柱であったサイトフィッシングの可能性を確認することに。

まず、練習で見つけていた魚を探しに行ったが……いない。魚を見つけていた他の場所にも行ってみるが、そこにもいない。練習中気になっていたけど風が吹いていて見えなかった場所にも行ってみるが、そこにもいない。しかし、水中をじっくり覗き込んでみるとスポーニングベッドだらけだった。なのに全く魚がいないということは、「もしかして全部釣られてしまったのか?」「みんな物凄く釣っているのでは?」この状況を見てそう思えてきた。

結局、約3時間をサイトフィッシングに費やし、1本も獲れず残り時間もあとわずかに。「このままでウェイインするわけにはいかない。あと1本絶対に入れ替えてやる!」と誓い、ジャックハンマーで3本入れ替えのビッグフィッシュを獲っているグラスエッジに最後の望みをかけることにした。

そのエリアに着いてみると、強い北風が吹いており、自分が狙いたいスポットに濁りが入っていた。「これはイケる!」と直感しジャックハンマーをキャスト。グラスに絡めながらリトリーブしていく。そして……

またしてもビッグフィッシュがジャックハンマーを吸い込んだ。慎重かつ大胆なやりとりでキャッチしたビッグバスは、なんと6ポンドオーバーのスーパーキッカー。この魚が、このトーナメントの最大魚で4日間を通してのビッグフィッシュ賞を取った魚だった。まさに読み通りの展開。これで一番小さかった3ポンド半をリリースして入れ替え。大幅にウエイトを伸ばした。

そして帰着。上位にいけるという確信はあったが、ウェイインを待つ間他の選手のウエイトが発表されるのを聞いていると18~19ポンドはざらで、20ポンドを超えている選手もかなりいる。「怖いヤツらばかり集まった凄い集団だな……」と思っていたが、僕のウエイトも負けていなかった。ステージに上がりスケールに乗せると……23ポンド6オンス!怪物達のなかでも飛び抜けており、初日のトップウエイトを叩き出した。

(to be continued…)


■清水盛三が語る バスマスターエリート第6戦&第7戦
緻密なトップウォーター戦略で優勝争いを演じたカユーガ戦(後編)は
コチラ

■第6戦タックルデータ
ロッド:シナジー CSCY-71H スーパーディトネーター
ライン:フロロカーボン 22lb
ルアー:キャスティングジグ 1/2oz

■第7戦タックルデータ
ロッド:ヘラクレス HCSC-73HG レパード
ライン:フロロカーボン 16lb
ルアー:ジャックハンマー(プロト) 3/8oz

ロッド:シナジー CSYC-70M+ マルチローラー(プロト)
ライン:PE 25lb
ルアー:シャワーブローズ

■関連サイト:B.A.S.S. Bassmaster

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