2014年春、カーボン製造の最大手メーカーである東レ株式会社から、これまで技術難度が高いとされた高強度と高弾性率化の両立を実現したカーボン(炭素)繊維が発表された。20年に一度の画期的素材と謳われる『トレカ®「T1100G」』である。この最先端ハイスペック・ハイエンド素材をバスロッドとしては世界に先駆けて採用し、ファイナルプロトタイプからさらなる劇的進化を遂げ、3年の開発期間を費やしついに完成を見たインスピラーレ・グランドコブラ。「5グラムテキサスリグから4オンスビッグベイトまで」という既成概念を覆すこれまでにない革新的コンセプトの具現化であること、そしてそこに高いハードルとしてそびえ立つ様々な矛盾から、一時はこのプロジェクト自体を白紙に戻す寸前の窮地にまで追い込まれた険しい道のりを顧みると、この高強度・高弾性率炭素繊維『トレカ®「T1100G」』の登場なくしてグランドコブラの誕生はなかったであろう。
高弾性化からレジン開発の時代へ~カーボン繊維業界のトレンド
1990年代後半、カーボン繊維業界では高弾性化と低レジン化(低樹脂化)が推し進められていた。言い方を変えると、鉄などの金属と比べて軽くて強いというカーボン繊維の特性を活かしたまま、さらに軽量化をという波である。釣竿をはじめ、ゴルフクラブ、テニスラケット等のスポーツ・レジャー関連のカーボン製品において軽量化戦争がスタート。ほかに、宇宙開発や航空機製造産業も、軽量で高強度という特性を持つカーボン素材抜きには語れない分野であり、そこでは安全性を確保するための強度が求められるのはもちろんであるが、可能な限りの軽量化を図ることも重要な課題であった。その意図するところは、すなわち低燃費化である。また、それ以外の分野においても、例えば自動車やエネルギー関連の産業をはじめ世間では、何事につけ低燃費化が叫ばれた時代であった。



しかし、その高弾性化のトレンドも20年近く前に東レが発表した当時の新製品カーボン繊維を最後に頭打ちとなり、高弾性化という流れは強度的限界を見せつけられることになる。なぜなら、カーボン繊維は、高弾性化するに従い強度が低くなってしまうという特性があり、そのカーボン特性の常識を覆すのは非常に困難なことだったからである。

その後21世紀に入ると、カーボン製造メーカーの目はレジンの開発に向けられることになる。カーボン繊維自体を高弾性化して性能を上げるのではなく、レジンの性能、あるいはカーボン繊維にレジンを含浸させる技術等を研究することにより、実際の製造で使われるカーボンプリプレグ(カーボン繊維にレジンを含浸させたシート状のもの)の性能を向上させるという手法がとられたのだ。この流れにより、その分野においても優れた技術力を持つ東レの開発した新規マトリックス樹脂技術『ナノアロイ®技術』を適用したカーボンプリプレグは、昨今多くのフィッシングロッドに採用されているのはご存じのとおりであろう。

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異業種でも注目を浴びるハイスペック・カーボンマテリアル登場
そんなさなか、東レが約20年ぶりとなる新たなカーボン繊維を開発したとのアナウンスが飛び込んできた。それが弾性率33トンの『トレカ®「T1100G」』である。これは、ナノレベル(10億分の1)で繊維構造を緻密にコントロールする焼成技術により高強度と高弾性率化の両立を実現したもので、30トンを頂点に、それより弾性率が高くなるほど強度が低下するというカーボン繊維の力学特性マップ(下図)を塗り替える画期的な素材となった。



すでに宇宙・航空産業をはじめとするハイエンド用途で広く使用されている従来カーボン繊維に比べて大幅に性能が向上していることから、その宇宙・航空用途はもとより、ロードレーサー(高速走行を目的に設計されたレース用自転車)のフレームやゴルフクラブのシャフト、テニスラケットのフレームなど、特にスポーツ競技の世界でも注目を集めている。



なかでも、2016年7月にサイクルロードレースの最高峰ツール・ド・フランスを制したバイクブランド『ピナレロ』がフラッグシップモデルのフレーム素材としてこの『トレカ®「T1100G」』を使用しているのは、ファンの間では有名な話だ。ツール・ド・フランスといえば約3週間かけて3500km以上を走破する世界最大のサイクルロードレースであるが、そのコースにはアルプスの険しい山岳地帯も含まれており、選手にはもちろんロードレーサー(レース用自転車)にも極限の負荷が掛かる過酷の極みともいえるサイクルロードレースである。その山岳ステージで使用された「PINARELLO DOGMA F8 Xlight」というモデルに『トレカ®「T1100G」』が使用されているという。そして、世界最高峰の舞台でその優れたパフォーマンスを実証し、『ピナレロ』を12回目のツール・ド・フランス制覇へと導いたのだ。


ピナレロジャパンオフィシャルウェブサイト >> http://www.pinarello.jp/

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『トレカ®「T1100G」』衝撃の破断テスト結果
このように異業種ではすでに結果を出している『トレカ®「T1100G」』をいち早くロッドメイキングに取り入れ、まさに異次元の性能を手にしたグランドコブラ。この『トレカ®「T1100G」』最大の特性を垣間見ることができる破断強度テストの動画があるので、まずはご覧いただきたい。ロッドティップをバット方向(180°方向)に引き込むという、ロッドにとっては最も過酷な条件での強度テストである。このテストで使用されたロッドは2種類。1本は『トレカ®「T1100G」』を使用したブランク。もう1本は従来の30トンカーボン素材を使用したブランクで、同一条件で比較するためにテーパーと硬さを1本目に合わせたものを用意した。
検証動画〈1〉

『トレカ®「T1100G」』が強度的にいかに優れているかを感じていただけたと思う。このテスト結果から、新素材を使うことで破断強度を高められるのは一目瞭然であるが、注目すべきはロッドの破断の仕方である。破断したブランクを良く見ると、通常30トンのものは限界点に達した瞬間に最も負担が掛かる点を中心に破断するのに対して、『トレカ®「T1100G」』を使ったものは、最後の最後まで粘りついには粉々に砕け散っている。これは、掛かる力に応じてロッド全体のパワーをロスなく最大限使えるということを意味している。実際の釣りに当てはめて考えてみても、ビッグベイト等の重量級ルアーのキャストに、あるいはビッグフィッシュとのやりとりにこの特性が有効に機能することは言うまでもない。


さらに言えば、同じベンドカーブを持つ2本ではあるが、東レが公開しているカーボン繊維の力学特性マップや弾性率・引張強度比較グラフにもあるように(『トレカ®「T1100G」』を30トン「T800S」と比較すると弾性率が10%、強度が12%それぞれアップしている)、それぞれのカーボン素材で同じ硬さのロッドをつくる場合、『トレカ®「T1100G」』を使ったブランクの方が重量を軽く仕上げることができる。つまり、この素材のもうひとつの特性としてあげられるのが、強いだけでなく軽いということである。これは「軽いにもかかわらず強い」と言い換えることもできる。

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バーサタイルの概念が大きく変化~オカッパリで3オンスのビッグベイトが普通の時代
近年、バーサタイルロッドの概念が大きく変化、今や標準戦力として根付いたビッグベイトの影響で、使用されるルアーのサイズは年を重ねるごとに大型化している。ボートのみならず、今や野池のオカッパリでも3オンスクラスは当たり前の時代となった。それに伴い一昔前の「バーサタイルロッド」ではとても対応しきれない時代へと変遷している。その変遷に先陣を切ったグランドコブラ。そのコンセプトは「5グラムテキサスから4オンスのビッグベイトまで1本でこなせること」。それだけでも十分革新的だが、ただ使えるだけでは意味がない。常識外のルアーウエイト範囲すべてをハイレベルで扱えることが絶対条件である。



がしかし、考えてもみてほしい。5グラムのテキサスリグは、ワーム本体の重量を加えてもせいぜい10グラムそこそこ。それを正確にカバーへピッチングできる一方で、4オンスビッグベイトのフルキャストにも耐えられるロッドなど、アプローチ面ひとつとっても矛盾の塊である。ロッドメイキングにおいても同様、それがいかに困難な課題であるかは容易に想像できるはずだ。その格段に広いルアーウエイト範囲の中で、しかも撃つ釣りから巻く釣りまでの汎用性を持たせるため、グランドコブラはローテーパー、レギュラースローアクションをベースデザインとした。そして、一時はこのプロジェクト自体を白紙に戻す寸前まで追い込まれたさなかに登場した『トレカ®「T1100G」』を肉厚に巻き込むという製法を採用することで、ついにはその無理難題をクリアすることに成功した。



なぜ『トレカ®「T1100G」』でなければダメなのか。ベイトロッドとして最も汎用性が高い30トンカーボンを使用して33トンの『トレカ®「T1100G」』と同じベンドカーブ(硬さ)を実現しようとするとより多く巻き足す必要があるため重量が増加してしまう。重さを合わせにいくと今度は柔らかくなってアクションが変わってしまうのみならず、十分な強度も出せない。また、40トン等の高弾性素材を使用すると、グランドコブラのコンセプトに合わないただ硬いだけのロッドになってしまう。さらに、重量級ルアーを振り切るうえでの強度にも不安を抱えたロッドになる。

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すべての積層にハイエンド素材『トレカ®「T1100G」』を使用、さらに肉厚に
今の時代に合ったバーサタイルロッドとして規格外の性能を手にするため、グランドコブラには今までのカーボンの歴史を塗り替えた『トレカ®「T1100G」』の「軽くて強い」という特性が必要だった。従来のカーボン素材をこの素材に置き換えるだけでもパワーアップが図れるのだが、その素材特性を活かしてさらに肉厚に巻き込むことで、重量増を最低限に抑えつつもさらなるパワーアップと強度アップを図ったのだ。つまり、ローテーパーでカーボンシートを厚く巻き込むこと(細径・肉厚)により、ロッドが曲がるときに断面がつぶれにくくなる(楕円になりにくい)ため、バックスイングでロッドが戻るときにもパワーロスが少なく、ロッド全体が鞭のようにしなるローテーパーの特性と相まって、キャストの際、重いルアーへの対応力が向上。なおかつ、径が細くブランク重量も軽いことから、軽いルアーでもシャープな使用感で扱えるというわけだ。



6フィート11インチという6フィート台に設定された長さも、シャープな使用感を生み出す要因の1つであろう。テキサスリグをロッドワークで繊細に動かすという釣りは誰もがイメージできると思うが、フィールドのタフ化に伴い、ビッグベイトもただやみくもに投げて巻けば釣れるという状況ではなくなってきた。狙ったスポットに正確にキャストして、場合によってはライトリグ並みにスローで繊細なロッドワークで誘わなければならない場面も多い。このようにビッグベイトをフィネスに扱うのに、7フィートオーバーで極太のいわゆるビッグベイトロッドではつらい。しかし、いまだかつて操作性に優れた6フィート台のロッドで4オンスのビッグベイトを振り切れるものがあっただろうか。グランドコブラが、この長さでありながら十二分なパワーを得られるのも、『トレカ®「T1100G」』という素材の恩恵と言えるだろう。



また、バスロッドは通常複数のカーボンシートを組み合わせて作られているのだが、1本のブランクを同じ弾性率だけで作ることは稀であり、弾性の異なるカーボンシートを組み合わせることでブランクを特性づけることが多い。例えば、ベリーにストップ感が欲しければベリー付近に高弾性の素材を補助として使用するのが一般的である。しかし、グランドコブラに関しては、通常30トンカーボンとの価格比数倍というハイエンド素材『トレカ®「T1100G」』を惜しみなくふんだんに使用し、ティップからバットまですべての積層をこの素材で巻いている。1本のブランクを同じ素材で組み上げることで、よどみのないベンドカーブを生み出し、幅広いルアーウエイトに合わせた桁外れの追従性を生んでいるのだ。

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グランドコブラの核心~低弾性スローテーパー×高弾性ファストテーパー
このように革新的コンセプトを持つグランドコブラ生みの親、今江克隆はこのロッドの使用感を次のように表現する。「33トンの素材というと、30トンから弾性率が少し上がったという捉え方をしてしまうかもしれないが、そうではない。重いけど曲がって粘る中弾性24トンのスローテーパーと高弾性で軽くて反発力の高い40トンのシャキッとしたファストテーパーを足して2で割ったような(24+40)÷2=32≒33トンという捉え方が、このロッドを表現するうえでピッタリだと思う」



この特性は、使用可能なルアーウエイトの範囲が極端に広く、高い汎用性を持つことにつながっているのみならず、フッキングシーンにも顕著に表れる。バットから満月のごとくしなりブランク全体で魚の重みを受け止める低弾性スローテーパーロッドのベンドカーブ。一方、ティップだけがクンと入り、ベリーからバットにかけては直線的ないかにも高弾性ファストテーパーらしいベンドカーブ。ローテーパーでありながら、ハイテーパーのようにバシッと一旦止まり、なおかつそこから徐々に力に応じてバットへと入っていくという、「張りがあるのに曲がる」という相反する要素を併せ持つことから、電撃アワセでも乗せアワセでもロッドがしっかりと仕事をしてフッキングを決めてくれる。

百聞は一見に如かず。しっかりと腰を入れた乗せアワセ、レフトハンド一本での切れ味鋭い瞬間的なアワセ、さらにはフッキングストロークがほとんどとれない体勢からの究極の電撃フッキング。性格の違うこれらのフッキングを1本のロッドで難なくこなすグランドコブラの恐るべきポテンシャルを収めた貴重な真冬のテスト&ロケ映像があるので、ぜひご覧いただきたい。
検証動画〈2〉



20年に一度の画期的素材『トレカ®「T1100G」』の優位性を活かす数々のこだわり
さらに、『トレカ®「T1100G」』の特性を打ち消すことなく、その優位性をより発揮させるために、全身をカレイドスーパークワトロクロスで補強しネジレを抑制。ネジレにくさはロッドのパワーロス減少につながり、ひいてはビッグベイトのキャスト精度やフッキングパワーの向上に貢献する。また、強度重視のオールダブルフットガイドもネジレの抑制にひと役買っている。そのうえ、グリップ内部のブランクを別に専用設計。メインブランクと比べてさらに肉厚にすることでたわみ等によるパワーロスをなくし、手元側にバランス良く重心を分散させている。肉厚ローテーパー+オールダブルフットガイドでありながら、持ち重り感がなく、キャストやフッキングの際に剛性感があるのはそのためだ。



インスピラーレシリーズをはじめエバーグリーンのロッドは、メイド・イン・ジャパンであることにもこだわっている。その大きな理由として挙げられるのは、量産品のクオリティーの高さ。たとえ開発段階で納得のいく1本が完成しても、それを海外の工場で量産した場合、すべて同じ品質、同じアクションで作れるとは限らないからだ。当然ではあるが、たとえ最先端のハイスペック素材を使ったからと言って、最高のものができるとは限らないのである。素材を生かすも殺すも作り手次第。最先端素材の性能をしっかりと引き出すためにも、厳密に管理された量産体制が必要不可欠なのである。



ハイスペック・ハイエンドの最先端カーボンマテリアル『トレカ®「T1100G」』をふんだんに使い、独自のスーパークワトロクロスで全身を補強し、チタン製トルザイトリングを装着。さらには特注のオーロラ・ワインディングチェックでドレスアップしたグランドコブラ。高弾性と低弾性、あるいはハイテーパーとローテーパー双方の良いところを兼ね備えた、バーサタイルの概念を変える唯一無二のミディアムヘビーバーサタイル。画期的な素材と高い技術力を裏付けに具現化された革新的コンセプト。グランドコブラが、ついにバーサタイルロッドの新境地を切り開く。

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