元来の漁具がルアー釣りとして進化し、様々な地域に浸透するタイラバゲーム。確実にフッキングに持ち込むことが難しく、そのゲーム性がのめり込む要素の一つと言えます。

タイラバゲームは乗り重視、アタリがあっても合わせてはいけない……。一定速度で巻き続けるだけで鯛がバイトすればどこかにフックポイントが立ち、頭を振ったり反転したり、鯛自身の力を利用してフッキングすることができます。しかし「カツカツ、ガガッと魚信が続いたが乗らなかった」「一度乗ったが外れてしまった」、こういった経験も少なくないはず。ここに疑問を感じた我々はタイラバゲームに対する新たなアプローチに向け食性から見直しました。

フィッシュイーターの捕食方法は様々ですが、「いきなり口を大きく開いて吸い込むタイプ」と「まずは歯を使って噛むタイプ」に大別することができます。口が小さく歯が発達している鯛は後者の方です。あまり抵抗しない小さなエサなら吸い込んで捕食することがありますが、一気に吸い込めないサイズのベイトフィッシュの場合、噛んで・振り回し・弱らせ・頭から捕食します。また一気に呑み込みにくい甲殻類なら、噛んで・脚を千切り・殻を砕き・身の多い胴体を捕食します。砂の中の生物は、まずはついばんで・引っ張り出し・捕食します。

タイラバに対しても、いきなり呑み込むのではなく、ヘッドに近い部分をまずは噛んで・頭を振り・また噛みついて、といった行動を繰り返します。フレキシブルなフックシステムを持つタイラバの構造上、この一連の流れの全てがヒットチャンスであり、また同時にフックオフの危険性もはらんでいるのです。

タイラバゲームで釣り上げた鯛を見ると、口の外にフックが掛かっている事が度々あります。鯛の食性とタイラバの構造上、百発百中で口の中にフッキングさせることは不可能。だったら、口の中であろうが外であろうがフックポイントが立ったら、いち早く貫通させフックセットした方が良いのでは。そこで我々は、普段から「掛ける」タイラバゲームを提唱・実践してきた香川県高松市の遊漁船「POSEIDON」の林船長とタッグを組み、掛けるための、それもいち早く掛けるためのロッドを目指し開発を進めました。



いち早く掛けると言っても「魚信を感じたら即、早合わせする」とは少し意味が違います。フックポイントが立っている感覚(「カッ」では無く、「ググッ」とくる重さ)を感じとったら、瞬時にフックを貫通させてやる。すなわち確実にフックが立つ感覚を感じ取れるティップ、感じてからフッキングまでの動作を瞬時に行える軽快でハイバランスなロッドセッティング、そしてしっかりフッキングを決め鯛を浮かすブランクパワー、この三位一体を追求して生まれたロッドがスパリッドマスターです。

待ってチャンスを失うことがあるなら、攻めに転じていち早く掛ける。掛けるタイラバゲームでルアーフィッシングの醍醐味を堪能して下さい。



■林 裕士 (はやし ひろし)
エバーグリーンソルトチーム・プロスタッフにして、香川県高松市の遊漁船「POSEIDON」の船長。

島々が点在し複雑に潮流が変化する瀬戸内で、繊細かつ大胆に鯛を攻略する手腕の持ち主。積極的に掛けるスタイル、攻めのタイラバを提唱。