フロロカーボンラインの登場により、バスフィッシングの世界は大きな転機を迎える。
もともと伸びが少なく根ズレに強いという理由から、ハリスとして使用されていたフロロラインを一部のエキスパートアングラーがバスフィッシングに導入。たしかにフロロラインのメリットは大きかったものの、スプールへのなじみが悪く一般アングラーにとっては使いにくいものであった。
そんな状況のなか、1999年にエバーグリーンでは「本当の強さ、本当の使いやすさ」を追求した“バスザイル・マジックハード”を市場に投入。
強さと扱いやすさのトータルバランスを重視した製品として多くの支持を集め、「今まで敬遠していたフロロラインの印象が変わった」という声を多くいただいた。
マジックハードの誕生から3年後、「さらに強く、さらに細く、さらにしなやかに」といったコンセプトのもとで開発された、“バスザイル・マジックハードEX”が生まれる。
トータル強度をワンランク細い線径で実現し、さらに扱いやすくしなやかに進化させたことで多くのファンを集め、プロアングラーから一般アングラーにまで幅広く愛用されるフロロラインとして、不動の地位を確立したのである。
当時の日本記録、無数のロクマル実績、JBウエイトレコード、クラシック制覇など、いまだ色褪せない数多くの実績がこのラインの性能を何よりも雄弁に物語っている。
その一方で、プロアングラー達の要求は再び厳しさを増してくる。マジックハードEXの使いやすさはそのままに、さらに感度アップした製品が欲しいという声が多く聞かれた。
感度を上げるためには、硬くて伸びないラインでなければならない。しかし、ある程度の伸びがあるからこそ、しなやかで扱いやすいラインになるというのも事実である。この相反する要素をマジックハードEXより、さらに高次元で両立させなければならない。
この難題を提起されたときから、新しいフロロラインの開発が水面下でスタートしたのである。
大きな課題を託されたエバーグリーンのライン開発。素材の選定はもちろんのこと、フロロカーボンの特性をより深く研究し、より厳しい条件でのテストやデータ集積の日々が続いた。
そしてわれわれが出した結論が、実際のフィールドの状況に合わせて適切にラインの伸びをコントロールするということ。
右下のグラフを見てほしい。これはマジックハードEXとNEWライン(マジックハードR)のそれぞれのラインを引っ張る力の強さ(横軸)に対して、どのくらい伸びるか(縦軸)を比較したものである。
まず、弱いテンション領域に注目すると、マジックハードEXよりNEWライン(マジックハードR)のほうが伸びていないことが分かる。
次に、強いテンション領域を見ると今度はグラフが逆転しており、NEWライン( マジックハードR )のほうが伸びていることが分かる。
つまり、EXに比べてNEWライン( マジックハードR )は、「伸びないけど伸びるライン」なのである。
果たしてこれは何を意味するのだろうか。実際のフィールドを想定してみよう。
例えばキャスト後、ワームをズル引くなどのルアー操作時は、ボトムや障害物を感じ、バスのアタリをダイレクトに感じ取るために、ラインは伸びないほうが良い。このとき、ラインに掛かるテンションは弱い。
つまり、感度の良さを求めるならば弱いテンション領域での伸びは抑えたい。
一方、フッキング後、バスとのファイト中にはビッグバスの急激かつ猛烈な突進によるラインブレイクを防ぐために、ラインは粘り強く伸びたほうが良い。このとき、ラインには強いテンションが掛かっている。
つまり、粘り強さを求めるならば強いテンション領域での伸びをアップさせたい。
このように実際のフィールドでは、弱いテンション領域(=ルアー操作時)と強いテンション領域(=ファイト時)でラインに求められる特性は違うのだ。「伸びない」「伸びる」という相反する機能性をそれぞれの領域で実現できれば、実戦において理想的なラインになる。
マジックハードEXのしなやかさはそのままに、より感度アップさせる方向で開発を進めていたわれわれは、弱いテンション領域から強いテンション領域までの全領域の伸びを全体的に抑えるのではなく、弱いテンション領域という限られた領域だけの伸びを抑えることで、扱いやすさを維持したままで高感度なラインが実現できると考えたのだ。
そして、ボトム感知力やバイト感知力を高めるために、弱いテンション領域での伸びを抑え、扱いやすさを犠牲にすることなく、プロアングラー達の厳しい要求をクリアする高感度なラインをつくり上げたのである。
その後さらなる完成度を求め、マジックハードEXのトータル強度をも超えるべく、強いテンション領域では逆に伸びをアップさせる開発に着手。ビッグバスの足元での最後の強烈な抵抗にも屈しない、粘り強い伸びも向上させることに成功した。
そして、ついに「弱いテンション領域では伸びないが、強いテンション領域では伸びる」という両極に進化を遂げた、理想のフロロカーボンラインが登場することになる。
フロロラインの常識を大きく変えたマジックハードEXの登場から、早くも6年の歳月が流れた。
マジックハードの「本当の強さ、本当の使いやすさ」というベースコンセプトはそのままに、弱いテンション領域での感度と、強いテンション領域での粘り強さという両極をさらに進化させたラインがついに完成した。
フィールドで求められるそれぞれのテンション領域に応じて、最適な伸度コントロールでアングラーをサポートする性能を持つ、超実戦仕様フロロカーボンライン、それが“バスザイル・マジックハードR~レボリューション~”である。
弱いテンション領域、すなわちボトム感知やバイト感知においてはラインの伸びを抑えて、ダイレクトに伝わってくる感度を重視した「高感度設計」を施した。
一方、強いテンション領域、すなわちビッグバスとの戦いの中で、トルクフルな走りや急激な突進に対してはラインの伸びでショックを吸収し、粘り強さを発揮してラインブレイクを防ぎきる「高強度設計」を両立させることに成功した。
その他の特性として、耐摩耗性が高く根ズレに強い、吸水による劣化がほとんどない、そして巻き癖が付きにくく取れやすいという、より長期間の使用に耐える「タフネスさ」を併せ持つ。
プロアングラー達からの高い要求を十二分にクリアし、ただ使いやすいだけでなく状況に応じて最適な伸度を実現し、すべてのバスアングラーをサポートするラインとして大きな進化を遂げている。
フロロカーボンラインに求められる『鋭い感度』。
バスザイル~バスとアングラーをつなぐ命綱~の名を継承するにふさわしい『さらなる粘り強さ』。
われわれがマジックハードに求め続けた『本当の扱いやすさ』を実現した“バスザイル・マジックハードR”。
フロロラインの進化の歴史は、Rの登場で革命的に早まったことだけは確かである。