時は日本バストーナメント黎明期にあたる1990年、実戦至上主義の名の下に世に姿を現したエバーグリーン初のバスロッド、コンバットスティックシリーズ。最前線で戦うトーナメントアングラーのハイレベルな要求、すなわち実戦で得た解答からつくり上げられた戦士の剣コンバットスティックは、デビュー以来数々のトーナメントを制し、輝かしい栄光を築き上げてきた。
当時のバスロッドの主流であったパラボリックなアクションとは一線を画す、全身に金属的な張りを持つスティフかつシャープな鋼のようなシャフトは、「感じ取れないアタリを感じ、バスに吐かれる前に上アゴを貫く」という攻撃的なフィッシングスタイルを可能にし、バスフィッシングの新たな時代を築いた。
清水盛三がエバーグリーンプロスタッフとしてそのキャリアをスタートさせた1994年、今江克隆、菊元俊文、藤木淳、下野正希らエバーグリーンプロスタッフのトーナメントでの華々しい戦績から、すでに「勝つためのロッド=コンバットスティック」という印象が定着しつつあった。
「コンバットスティックのイメージはとにかく強いロッド。みんなこれで勝っている。自分がもっと道具に追い付かなければ」と当時を振り返る清水。
そして、コンバットスティックを自分の右腕として走り抜けた日本での10年間のトーナメント生活。その言葉の通り、清水の釣りはコンバットスティックによって進化し、結果を残してきた。1997年JBスーパーバスクラシックウィナー、2000年JBワールドU.S.チャレンジinレイク・ミード優勝など輝かしい戦績の数々。これらは同時に「勝つためのロッド=コンバットスティック」の証明ともなった。
その後、活動の場をアメリカに移してからも清水の快進撃は続いた。米国参戦初年度にB.A.S.S.ウェスタンオープンで年間上位に立ち、わずか1年にして翌シーズンからのトップカテゴリー参戦権を獲得。同年BFLコロラドリバーディビジョンにおけるデビュー戦で優勝。
トップカテゴリーのB.A.S.S.バスマスターツアーでは、2005年にレイクガンターズビル戦で準優勝、そして2006年にはケンタッキーレイクで悲願の初優勝を果たす。さらには、2015バスマスタークラシックに2年連続3度目の出場と、コンバットスティック、あるいはそこから派生したコンバットスピリットを受け継ぐ後継シリーズを手に華々しいキャリアを築き上げてきた。
「長い間トーナメントの最前線で戦い続けられているのも本気で信頼できる道具があったからこそ。極限状態で自分の釣りをしっかり支えてくれる良い道具がね。刻々と変化するトーナメントシーンに対応するためには、それこそ10年という単位で使い続けることができる、自分の体の一部と言えるような道具が絶対に必要になる」
この清水の言葉通り、彼のトーナメント人生を長きに渡り支えてきた代表的なロッドとして挙げられるのが、コンバットスティック・タクティクス ディトネーターである。ヘビーカバーへのピッチング、スキッピングロッドとして、また、オフショアでのロングキャストロッドとして、清水のワーム&ジグフィッシングの中心的存在と言えるディトネーター。
「このロッドをボートに乗せない日はない。しかも必ず複数積んでいる」と言うほどの溺愛振りで、バスマスターエリートシリーズ・ケンタッキーレイク戦ではフットボールジグ、テキサスリグロッドとして、優勝に大きく貢献した。
コンバットスティック・タクティクス ディトネーターは、パワーと喰わせをハイレベルで両立した他に類を見ないワーム&ジグロッド。
「世界で戦うためには、ヘビーカバーから10パウンダーを引きずり出すパワーを持つと同時に、タフコンディションでのショートバイトを確実に乗せる喰わせの力を併せ持ったロッドが絶対必要」と世界最高峰舞台での挑戦を始めた当時の清水盛三。
しかし、ロッド製法においては一般的に、カバー&ビッグバス対策で強く硬くするほどバイトを弾いてしまう。一方、喰い込みを良くしようと柔らかくするとパワー不足でカバーからビッグバスを引きずり出せない。また、ジグを思い通り動かせない。
この一見両立不可能とも思えた清水の要求を、今まで多くの契約プロスタッフのこだわりをカタチにしてきたエバーグリーンのロッドメイキングノウハウで実現。そのどちらをも犠牲にすることなく、高次元で両立するため辿り着いたカタチ。バットからティップ先端までの全身にコンバットスティックを象徴する「張りの強さ」、すなわちビッグバスの固い上顎を貫き、瞬時に浮かせるパワーを持つにもかかわらず、小さなバイトをはじかず吸い込ませる「喰わせの間」も併せ持つディトネーター。
このロッドを手に入れた後の清水の活躍はめざましく、本場アメリカ・バスマスターエリートシリーズで優勝。ディトネーターがコンバットスティックの伝統に新たなる歴史を刻んだ。また、TVロケでの10ポンドオーバーも記憶に新しい。もちろん、タフな日本のフィールドでの取材やトーナメントでの使用頻度も高く、実績も十分。
このロッドをさらに進化させたいという強い思いが、究極とも思えるタクティクス ディトネーターを超えるシナジー スーパーディトネーターを生み出すことになる。
「でも……」世界最高峰の舞台に身を置く清水は言う。「世界の猛者達を相手に戦っていると、自分自身のレベルも進化していく。そうすると、今まで自分を支えてきてくれた道具が自分の腕に追い付かなくなる時が来る。つまり、自分のレベルが道具を超えたということ。その時こそ新しい道具が必要になるとき。それらがさらに自分のレベルを高めてくれることになる」
アメリカで10年を超えるキャリアを積んできた現在、清水が自分の右腕として使用するロッドのなかにも、彼のハイレベルな要求を満足させられないモデルが出てきたのも事実。前述のディトネーターもしかりである。
そこで我々は、さらなる飛躍を遂げるために新たな武器の開発に取り掛かることにした。ひとつの道具を徹底的に使い込んだからこそ分かる超感覚を頼りに様々なプロトタイプをつくり、テスト&検証を繰り返す。今までも幾度となく繰り返された気の遠くなるような行程。その繰り返しによって清水も、そしてコンバットスティックも進化していく。まさに終わりなき戦い。
この彼の熱い思いの原点は、アングラーとして、いやプロフェッショナルとしての思いをより強固なものへとしてくれた初代コンバットスティックとの出会いにあることは言うまでもない。全ては勝つために。
しかし、彼自身の進化を物語るその高い要求を形にするのは困難を極めた。「まだ使っていてストレスを感じる。何かが足りない」と一進一退が続く。
そんな折、我々に転機が訪れた。ダイワテクノロジーとの出会いである。アメリカにチャレンジし続ける清水の熱い思いに共感し、リールのサポートを続けるダイワ。清水とのリールの開発を通じて、ダイワのエンジニアは清水の道具に対する徹底したこだわりに強く心を動かされていた。さらに、その清水の強い思いの源が、実戦至上主義、妥協しないモノづくりの姿勢から生み出されたコンバットスティックにあると知る。
「自分たちの最新テクノロジーを他社に提供してでも清水の熱い思いに応えたい」
ここに、清水盛三というプロフェッショナル・トーナメントアングラーを通じて夢のプロジェクトが実現。
とは言え、そこからの道のりもまた平坦ではなかった。日米様々なフィールドで、時にはトーナメントの実戦の場でもテストを敢行。3者が一体となり、トップアングラーの言葉にできない感覚をカタチにするためにビルド&スクラップを繰り返す。
アスリートとして、世界と互角に戦うために、そして自分自身の進化のために克服しなければならない矛盾だらけの要求をぶつける清水に対し、エバーグリーンが今まで築き上げてきたロッドメイキングのノウハウとダイワの最先端技術で応戦する開発スタッフ陣。強烈な個性が激しくぶつかり合うことで発生する莫大なエネルギーが幾度となく融合を繰り返し……
深紅の剣コンバットスティック・シナジー、その第一弾となるモデル、スーパーディトネーターがついに誕生。その特徴を一言で表すと、掛けた魚を瞬時に浮かせて確実に獲り込むパワーと軽快な操作感の両立。ごくありきたりな表現ではあるが、どの日本人プロアングラーよりも、日米数多くのフィールドやシチュエーションで過酷な経験を積んできた清水ならではの途方もなく高い要求が、その行間に込められていることは言うまでもない。
数々の融合により拓かれたバスロッドの新たなる境地。コンバットスティック・シナジー。その根底に流れる思想は実戦至上主義。「コンバットスティック=トーナメントで勝つためのロッド」という思いは一切のブレなく、清水の心の底で熱く燃えている。世界を相手に戦う男が、勝つことを宿命づけられたコンバットスティックの伝統とダイワが誇るテクノロジーの革新から生み出される深紅の剣を手にした今、遥かなる高みを目指し新たなる挑戦が始まる。
● Length : 7’1” ● Power : Heavy ● Lure Weight : 3/8~1・1/2oz. ● Line : 12~25lb. ● ¥77,000(税別)
■ 対応ルアー&リグ : ガード付ジグ / テキサスリグ / ライトテキサスリグ / フットボールジグ / ヘビーキャロライナリグ etc…
スーパーディトネーター製品ページ ▶ シナジー全製品一覧シナジー・スーパートライアンフを語るうえで忘れてはならないのが、清水盛三による1997年のJBスーパーバスクラシック制覇であろう。クラシック勝利を機に渡米し、その後数々の実績を積み重ねてきた清水にとっても生涯忘れ得ぬ試合の1つである。
同年からスタートしたJB最高峰ワールドプロシリーズ(現TOP50)に出場していた清水が打ち立てた目標は、もちろんアングラーズ・オブ・ザ・イヤー獲得。しかし……
初戦から好位置に付け、迎えた第4戦霞ヶ浦。最終戦を残し一気に年間レーストップに躍り出るだけのハイウエイトを持ち込みながらも、エントリーカードに記入漏れがあり、まさかの失格。自ら招いたミスによる戦線離脱で、その年の年間レース1位獲得はならなかった。
だがしかし、清水の勝利への強い思いは、まったくもって消えることはなかった。シーズンを締めくくる総決算戦、JBスーパーバスクラシックがその借りを返す舞台となったのだ。
この年のクラシックはくしくも失格となった霞ヶ浦で2日、さらに河口湖で2日という計4日間に渡る長丁場の戦いだった。前半戦となる霞ヶ浦では、初日を4位でスタートした後、2日目には7本7,800グラムという圧倒的な大会最重量ウェイトと共に霞ヶ浦ラウンドを首位通過。
その後、2位に大差を付けたまま河口湖ラウンドも首尾よく好成績を叩き出し、見事に念願のJBスーパーバスクラシックタイトルを獲得。直前のJBワールドシリーズ霞ヶ浦戦の失格という、同フィールドにおける忌まわしい記憶を払拭することに成功した。
転んでもただでは起きぬ。清水の不屈の精神が「大勝利(トライアンフ)」を呼び込む、実にドラマティックな出来事だった。そして、霞ヶ浦首位、その原動力となったのが2代目コンバットスティックとなるインスパイアのトライアンフであったのだ。
トライアンフというロッドは、電撃アワセを世に知らしめた初代コンバットスティック・ガニングシャフトのパワーをそのままに片手で扱えるように、細身でシャープかつハイバランスにと、あの今江克隆が開発に携わり、彼の右腕として活躍したジグ&ワームロッドである。
そのトライアンフの特性を活かし、テキサスリグとフットボールジグを巧みに操り手中に収めたクラシックタイトルであった。
さらに、1999年9月に琵琶湖で行われたJBマスターズ戦も清水とトライアンフを語るうえで忘れてはならない試合であろう。この試合で清水がボートに持ち込んだルアーは、当時開発テスト中だったスピナーベイト、Dゾーン3/4oz(プロト)を 5枚のみ。約600人ものコンペティターが出場しハイプレッシャー下で行われたトーナメントにおいて、ヘビースピナーベイトのみで勝負し見事表彰台を勝ちとったのだ。
清水がこの試合で使用したロッドはトライアンフ1本。固定観念にとらわれない清水は、その金属的な張りと高い感度はジグ&ワームロッドとしてはもちろんスピナーベイトのスローローリングで類い稀なるパフォーマンスを発揮すると感じていた。
だからこそ、このロッドが潜在的に持つポテンシャルを引き出すことができたのだ。敢えて言い換えるなら、コンバットスティックの能力に清水自身がついに追い付いた、そう言っても良いのではないだろうか。
その後もトライアンフはジグ&ワームフィッシング、スピナーベイトのスローローリングにおいて長きに渡り清水の右腕として活躍し、彼の釣りを支え続けてくれた。それに伴い清水の釣りもレベルアップ、数々の実績を積み上げてきた。
そして、さらなる高みをめざし新たなる境地への突入をもくろむ今、シナジーシリーズの立ち上げにあたり「自分を育ててくれたトライアンフに応え、さらに自身のレベルを高めるためにも、次は自分がロッドをつくりあげる番」とトライアンフに変わるロッドの開発をスタートした清水。
「それは絶対的にトライアンフを超えるものでなければならない。そのためにも、絶対スーパートライアンフという名前でなければならない」と。
「大勝利」を意味するサブネーム、トライアンフ。それは開発に携わり、名付け親である今江にとっても思い入れのある名前。だからこそ、今までコンバットスティックの歴史のなかで育てられ、その重みを知る清水にとって、その名を使いたいと簡単には口にできなかったのも事実である。
しかし、その年のバスマスターエリートシーズン戦をすべて終了し翌年のバスマスタークラシックへの出場を決め、実戦を中心とした開発テストにおいて、ある程度そのロッドに対して思い描いていたものが形になってきた2014年晩秋のある日、清水は意を決し今江にすべてをぶつけた。
長きに渡り使い続け、自身の血となり肉となってきた名竿の名を、自分がプロデュースするロッドに使うことは何物にも代え難い喜びと……
だが清水の予想通り、「自分の分身でもあるその名前、そう簡単には手放せない」とトライアンフに対する思い入れは今江にとっても格別のものであった。
「やはり難しいのか……」と思い始めたその時、「でも……」今江の言葉が清水の心を奥底から揺さぶった。「トライアンフという言葉が一番似合うのは盛三かもな。そして今一番必要な言葉でもあるよな。クラシックでトライアンフして来い!」
コンバットスティックの歴史の重みを知る清水にとって、今江克隆というトーナメントアングラーはまさに絶対王者。「その今江さんが清水盛三を本気で認めてくれた」そう感じた瞬間、25年間続けてきたトーナメントですら一度も味わったことがない震えが清水の全身を走り抜けた。
トライアンフという言葉の意味を含め、実戦至上主義という今江らがつくりあげてきたコンバットスティックの重厚な歴史の一端を背負うことを意味する、清水にとって非常に嬉しくも重い言葉であったからだ。
そして、その言葉を胸に渡米し戦い抜いた2015年バスマスタークラシック・レイクハートウェル戦。
バスマスタークラッシック史上最悪の超極寒のなかでのトーナメントであったが、その実戦すべてがテストの場である清水にとって開発中のシナジーシリーズを試す究極の場でもあった。
しかし……スーパーキッカーとなる6lbフィッシュをランディング時に手で触りながらもバラしてしまうという不運に泣かされ、結果は惨敗。極限とも言える状況でのテストという難関をクリアすることはできなかったが、このような経験を経て清水自身はもちろん、彼がプロデュースする道具達も進化を続けてきたのだ。
スーパートライアンフ(プロト)で掛けたあのビッグフィッシュが教えてくれた課題点。その後、それらを克服するためにさらなるテストを繰り返し、その時の72MHというスペックから7フィート3インチへとレングスアップ、さらにはMHからMH+(ミディアムヘビープラス)へとパワーアップするなど進化を続けてきた。
様々な難題を克服することが道具を進化させると同時に清水の釣りも進化させる。そして、さらに高い要求をぶつけられる道具達……
そしてついに、世界基準のMH+バーサタイルとしてその使用域を拡げ完成を見たスーパートライアンフ。
しかし、ここでその進化が止まるわけではない。これからこのロッドをもっと使い込むことで到達するであろう新たなる境地に向けて、清水の釣りをさらに進化させるにポテンシャルを秘めている。
かつて今江がつくりあげたインスパイア・トライアンフ。その意思を受け継ぐシナジー・スーパートライアンフを手に大勝利を収めるべく、清水の飽くなき挑戦はこれからも続く。すべては勝つために。
● Length : 7’3” ● Power : M-Heavy Plus ● Lure Weight : 3/8~1・1/4oz. ● Line : 12~20lb. ● ¥79, 000(税別)
■ 対応ルアー&リグ : スピナーベイト / ヘビースピナーベイト / ブレーデッドジグ / スイミングジグ / テキサスリグ
/ ライトテキサスリグ / キャロライナリグ / フットボールジグ / フィネスラバージグ etc…