トレカ®T1100G全身採用、
ジグザグガイドシステム搭載。
オールチューブラーフィネスの究極解。
インクレディブルセンサー・デルジェス
開発ストーリー
運命的な出会いとは偶然なものである……今を遡ること数年前、今江のトーナメントの成績は安定感を欠き、日替わりの乱高下を繰り返していた。攻める時には圧倒的な強さを見せるが、守りに回った時の脆さが表面化。不本意な順位に喘ぎながらも、今江本来のスタイルとは違う守りのライトリグを積極的に使うことに、どこか抵抗意識があったのだろう。
特にネコリグを毛嫌いしていたこともあり、「常勝今江克隆の原点」でもある能動的に仕掛けるダウンショットロッド、インスパイア・エアリアルを自宅倉庫から引っ張り出したのも、この時期だった。1990年代後半に製造されていたエアリアルを、現代の最先端トーナメントに導入すべく、当時の旧式ガイドやグリップを現代風に再セッティングすることにしたのだ。
その後、実際にフィールドで釣り込むことでエアリアルの必要性を強く感じた今江がテストを繰り返し、リリースされたロッドが、エアリアル・レジェンドである。
G-nius project代表
青木哲氏
その際、グリップ&ガイドセッティングに関して協力を依頼していた人物が、今江が数年前から親交のあったルアーショップ擬似餌屋の店主でG-nius project代表の青木哲氏であった。
世界最大手のガイド、グリップ・サプライヤー富士工業サポートプロである青木氏のグリップ&ガイドセッティング理論には定評があり、彼自身が優れた職人的ガイドラッピング技術を有することも相まって、彼のショップにグリップやガイドのカスタマイズを依頼するアングラーも多いと聞く。
そんな青木氏の元にガイドチューンを頼みに行った時だった。今江は、工房に並べてあった、とあるスピニングロッドを目にする。擬似餌屋オリジナルロッドとして制作中のサンプルロッドであった。アジングロッドのブランクスを元に、青木氏がチューニングを施したカリカリのフィネスロッドで、高弾性オールチューブラーブランクスに超マイクロガイド多点セッティング。ガイド12個を装備しながらも、超極細で羽のような感覚……バスロッドとして、すべてが異次元だった。
「これええやん」今江は、本能的にそう思った。そのロッドを持った瞬間、青木氏の意図と可能性を感じ取り、とっさにこう言ったのである。「この竿も何本か作ってほしい」
その直感は正しかった。実際にフィールドでこのロッドを試用してみると、今江の中でライトリグの概念が大きく変わったのだ。
マイクロピッチシェイク・スイミングを極める。
アングラーの身体能力だけでは
カバーできない領域への到達。
当時、フィネスに長けたトップトーナメントアングラーが必須の武器としていた「マイクロピッチシェイク・スイミング」。極めて細かいピッチながら叩くような力強いティップ振動を与え続け、ワームをまるでバイブレーションかスピナーベイトのように激しく細かく振動させながら、デッドスローに泳がせるテクニックである。ライトリグに心理的抵抗感を持つ今江ではあったが、負けじとこのテクニックを自分のものにすべく練習を繰り返していた。
微振動の維持が決まれば、まるでワームでシャッドを巻くかのような感覚で、ベイトを意識するバスに対して抜群の能力を発揮してくれる。しかし、半日も連続でマイクロピッチシェイクをやり続けると肘や肩、頚椎に深刻なダメージが及んだ。ましてや3日間にわたる長時間、それを延々と乱れずキープし続けることは、通常のタックルでは事実上不可能だった。
しかし、青木氏のロッドは違う。細身のストレートワーム+0.9gネイルのネコリグですら20m先のルアーの存在感がまざまざと手元に伝わり、シャローからボトムまで、リグを絶え間なく痙攣しているように超高速シェイクで泳がせることができた。
超極細で羽のような軽さというだけでなく、ティップの先まで張り詰めたオールチューブラーブランクスならではの、細かくかつ強く、しかも高速で鋭くラインスラックを叩くようなロッドアクション。ネコリグが、自ら泳ぐシャッドに変身したような感覚。丸一日やり切っても、体へのダメージは桁違いに少ない。今まで決して到達できなかった緩急自在のウルトラマッハシェイカー。それは本当にレーシングな領域だった。
「このロッドがあれば……」ライトリグに悩む今江には、これまで最も毛嫌いしてきたネコリグが、強力な武器になるという予感があった。
ただ、バス用にチューニングされているとはいえ、元々が陸っぱりのアジング用ブランクス、しかも擬似餌屋オリジナルロッドとして販売する前のテスト中のサンプルロッドでもある。沿岸のアジのサイズに合わせて設計されたブランクスゆえ、バスの世界では想定負荷を超えてしまうだろう。実際、テスト釣行を兼ねて行ったトップ50戦の練習では複数本の折れが発生……しかし、それは製作者の青木氏も、そして使っている今江も想定内だった。
この羽のような操作感、圧倒的な高感度性、センサーのような高弾性感は何物にも代えがたい。このロッドを使うことでライトリグの世界がガラリと変わり、ネガティブなイメージがつきまとっていたライトリグを、すべてを感じ取れ把握できる積極的な手法へと転換することができる。あとは耐久性である。
機能的、アクション的には、青木氏の設計したサンプルロッドはほぼ完成されている……エバーグリーンには高弾性の張りと中弾性の粘りをミックスした最新鋭高性能カーボン、トレカ®T1100Gナノアロイをいち早く導入し磨き上げてきた独自の設計製造レシピがある……そう考えた今江は、2社(者)の共同開発という形を提案。
そしてついに、通常のカレイドロッド製造ラインとは別に、青木氏のオリジナルロッドをエバーグリーン基準で再現するという形で、EVERGREEN × G-nius project共同開発プロジェクトが実現した。
カーボン素材&テーパーデザイン。
超繊細系フィネスロッドでも無視できない
獲るための性能。
それから3年の歳月を経て誕生したインクレディブルセンサー・デルジェス。その間、耐久性はもちろんであるが、テーパーやアクション、レングス等に関しても様々な検証を行っていた。その開発の途中、2021年のカタログではウッドペッカーというコードネームで紹介されている。
最終形態デルジェスとして、メインシャフトはトレカ®T1100Gナノアロイ33tを全身に使用。さらに30tと40tカーボンをバット~ベリーに効果的に配置。超軽量性と凛とした高弾性感は維持しつつも、2kgリフトという基準をクリア。
超軽量、超高感度でラインスラックを叩ける高速振動ティップを実現しただけでなく、破断強度を大幅にアップさせ、超高感度、超軽量でありながら折れにくいという今江が理想とするライトリグ・オールチューブラーブランクスが完成した。
さらに、トーナメントで大外ししないためのフィネスロッドとして無視できないのは、バスを掛けた後、ランディングまで持ち込んでこそ初めて意味を成すという事実。しかも、それがキッカーとなるビッグフィッシュならなおさらである。その点においては、青木氏がこだわったテーパーデザインの耐久性をアップさせるために、トレカ®T1100Gを使用したことがプラス要因となった。
操作性を重視したティップの先まで張り詰めたオールチューブラーで、ブランクスの1点に強い部分をつくらず、力が掛かった分だけきれいに曲がり込む可変的ファストアクション。アングラー自身の指のようにティップの先から綺麗に入ることで超繊細な操作性を持ちながらも、ベリーからバットへと力がスムーズに伝達することでトレカ®T1100Gの反発力(リフティングパワー)を最大限発揮させることができる。
つまり、ブランクスの張りでバスを止めるのではなく、追従して受け止めるというロッドである。しかも、あえて高レジンタイプのトレカ®T1100Gを採用することで、張り詰めた中にも必要以上のピーキーさを排除している。
トーナメントで極限の緊張状態の中、どうしても力が入りすぎて体が思うように動かないという状況は多い。だからこそ、ここ一番で超ライトラインで掛けたバスを確実に獲るためには、リールのドラグだけに頼るのではなく、ロッドの曲がり込みも利用することで、ラインブレイクを防ぎたい。
極限の緊張状態でのキャストも同様。少しの力みで、狙いが微妙に外れてすべてが台無しに、などということも防いでくれる。
飛距離を犠牲にせず感度を高める。
軽量リグを扱う際のウィークポイントを克服する
ジグザグガイドシステム。
さらに、このロッドには象徴的な新構造が搭載されている。それは青木氏が考案した『ZIGZAGガイドシステム』である。その名のとおり、ティップセクションガイドを左右ジグザグに配置しており、搭載個数も非常に多い。見た目には異形で異端。真っ直ぐ付けることが正であった、これまでのガイドセッティングの常識を覆す奇抜なアイデアである。
しかし、ロッドの中で最も繊細なティップセクションのガイドにラインが常時接触する構造は、ノー感じになりやすい超軽量リグ使用時の感度向上という観点から見て理にかなっていることは、容易に理解できるはず。
だからといって、ガイドの傾きを大きくして、むやみにラインテンションを張りすぎる構造にすると、繊細なライトリグの操作に違和感が生じてしまう。なので、テンションを掛けない状態でも、可能な限りティップ~ベリー部分のガイドで常時複数接点を確保し、ラインからのボトム変化やバスのバイト信号を同時多発的にブランクスに増幅伝達するギリギリの角度にセットしている。
その絶妙な角度ゆえ、飛距離もまったく気にならない。しかし、誰もが思うだろう「これで飛ぶのか?」という素朴な疑問については、今江も同様だった。そこで今江は、同一ブランクスにノーマルガイドセッティングとジグザグガイドセッティングしたロッドを、納得できるまで長期間フィールドで使い比べてみた。
その感想は「まったく変わらない」だった。机上論ではなく、これがフィールドで使用した実感である。しかも、驚くことに「細号数のPEシステムでは、ジグザグガイドの方が良く飛ぶ」と結論づけた。
「通常のガイド配置では、ルアーが加速している段階ではまっすぐガイドを通っていくが、放物線の頂点を超え減速傾向になると、PEラインは波打つようにガイド間でバタつき始めることが動画解析から判明している。このバタつきが大きな抵抗となって、飛距離減が発生しているのは間違いない。特に軽くて飛ばしにくいルアーほど、PEラインのバタつきはより顕著に出る傾向にある」
「ジグザグガイドシステムは、軽量でバタつきやすいPEラインが、角度を付けて設置されたガイドのおかげで、逆にきれいに収束し、滑るように抜けていく。だから、軽量ルアーの飛距離はジグザグガイドが通常ガイドに勝る。リーダー連結のノットコブさえ最小サイズにできればね」
「それと、糸絡み防止ガイドを左右斜めにジグザグ設置しているため、ラインがフレームに絡みかけても自然に外れやすい傾向が強く、3年の実戦テストではPEラインのガイド絡みトラブルは皆無だった」と今江。
こうして機能的なアドバンテージは証明されたものの、見た目の違和感に加え、ガイドを取り付ける際の作業効率もすこぶる悪いセッティングであることから、量産品に採用すべきか、いや、そもそも量産ラインに乗せられるのか……という課題も浮上。
しかし、超軽量リグを、しかもシェイキングでラインを張って緩めてを繰り返すという、極めて感じにくい釣りにおいてのアドバンテージは計り知れないとの強い思いから、ガイドラッピングやグリップカスタマイズの熟練・青木氏から直接技術指導を受けるG-nius project提携中国工場での製造が現実のものに。これが、Evergreen × G-nius project共同開発プロジェクトが実現した経緯である。
ジグザグガイドシステムを搭載した超高感度デルジェスが開拓するのは、超軽量リグのマイクロピッチシェイク・スイミングだけではない。
例えば、ディープや中層。デルジェスの明確な高感度性は、盲目になりがちなディープや中層のスーパーフィネスで、まるでサイトしているかのごとくラインからの情報量を増幅してくれるため、驚くほどの集中力を持続させる効果を持つ。ラインスラックを多めに出すホバストでも、ワームに微かな振動を与えている感覚が手に取るようにわかる。
集中力の持続は、ボトムマテリアルや水中の微細な変化、極小バイトサイン察知力の向上にも繋がり「感度が良いから集中力を持続できる。集中できるからさらに感じることができる」と良いスパイラル効果をもたらしてくれる。
信じがたいほどの感知力(インクレディブルセンサー)はもはや神(デルジェス)の領域。カレイドの新守護神は、ベールに包まれた聖域を光で照らし出す。
TKSS-63L-ZZ
インクレディブルセンサー・デルジェス 
●Length:6'3" ●Power:Light 
●Lure Weight:1/32~3/16oz ●Line:3~6lb/PE0.4~1号
※「トレカ®」&「ナノアロイ®技術」は東レ(株)の登録商標です。
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