ディアウルフ ワイルド7 開発ストーリー
「気持ちええ~!」ディアウルフ ワイルド7を手に取り、振り抜いた直後、今江克隆が思わずつぶやく一言だ。オーバーヘッドでもサイドキャストでも、そしてバックハンドでもサークルキャストでも、脳内に思い描いた理想の弾道で、狙った小さなスポットに吸い込まれるように、ルアーが着水する。
ピンスポットに決まったすべてのキャストでバスが釣れるわけではない。にもかかわらず、ルアーが狙いのスポットに寸分たがわず吸い込まれた時の「よし!来る!」という快感、緊張感は、他のいずれの釣りとも違う、バスフィッシング独自のアドレナリンを噴出してくれる。バスフィッシングの根源的な楽しみであると同時に、バスフィッシング上達への足掛かり、それがキャスティング。
その重要性は以前にも増して高まっている。バスの数が減り、逆に個体が大型化している昨今のフィールド事情。数少ないチャンスを確実にモノにする一撃必殺スタイルが主流になった。アプローチミスは許されない。しかも、10年前に比べると使用するルアーのサイズが明らかに大きくなっている。一昔前は66Mであったバスロッドの基準が変わり、今やもうひとつ上の長さとパワーのロッドで同様の、いやそれ以上の精度を求められる時代となったのだ。
そんな現代の、さらには近未来のバスフィッシングと向き合うアングラーを、力強くアシストしてくれるタックルがある。それが、ディアウルフ ワイルド7。スーパークロスファイア(SXF)製法を採用し、ついにリリースされる「7フィートMHパワーのパーフェクトスパインレス」ロッドである。
スーパークロスファイア製法の完成
エリート&ワイルド
2つの対照的な7フィート
スパインレスロッドへ向けて開発のスタートを切ったのは約20年前。偏肉を可能な限りゼロに近づける特殊なクロスファイア製法を確立し、スパインの位置によって生じる、右から投げた時と左からの時とのキャスト軌道のブレを大幅に解消したクロスファイアシリーズを発表。未だに愛用者が多数存在する完成度の高いロッドを続々と輩出していった。
しかし、ロッドブランクスがカーボンシートを巻いて作るという製法上、長くなるほど、硬くなるほど、またテーパーがきつくなるほどスパインを除去しにくくなるという事実がある。したがって当時の技術では、6フィート台のローテーパーという枠の中でしか、スパインレスを形にできなかった。
そして、時代とともに製法は熟成。2019年、ついにクロスファイア製法の進化形、スーパークロスファイア製法が完成。従来のカーボンシートの約1/3の厚みの特殊な超極薄カーボンプリプレグを使用した超多層構造ブランクス化でパーフェクトスパインレスを実現。第一弾として、ライトウエイトスーパースポーツ・スーパースティードGT-Rを世に送り出した。
ローテーパーの軽量級バーサタイル、スーパースティードGT-Rは6フィート6インチでパワー表記がL+(ライトプラス)。スパインレス化しやすい柔らかめのパワーで、6フィート台のローテーパーという枠に収まってはいるが、スーパークロスファイア製法によってスパインレスの精度は明確に向上した。次はいよいよ、その上のクラスとなる7フィートクラス、M~MHパワー、しかもテーパーの制約を取り除いたパーフェクトスパインレスロッドの登場である。
■ クーガー エリート7 70MF-SXF
<7フィート・ミディアムパワー・7:3ファストアクション>
その解答のひとつが、クーガー・エリート7である。7フィート、ミディアムパワーながらパーフェクトスパインレスを実現。そのうえ、よりスパインの除去が難しいハイテーパー設計。さらに、高弾性化の流れである4軸スーパークワトロクロス製法をハイブリッドした「最新技術の結晶体」でもある。
「しなやかなキャストフィールと片手で自在に扱える俊敏性」「吸い込ませて乗せる能力と積極的に掛ける能力」という相反する要素を両立し、巻き物にもワーム・ジグにも、縦捌きでも横捌きでも高度な適応性を発揮する7フィートバーサタイル。まさに、現代のエリートと呼ぶにふさわしいロッドと言える。
■ ディアウルフ ワイルド7 70MHR-SXF
<7フィート・ミディアムヘビーパワー・6:4レギュラーアクション>
もうひとつの解答が、パーフェクトスパインレスロッドとしてひとつの最終形態にあったローテーパー、スーパースティードGTRの流れを引き継ぎ、長く、そして硬く、現代のバーサタイル標準ともいえる「7フィートMHパワー」へとアップグレードを果たしたディアウルフ ワイルド7。
正確性と飛距離はもちろん、なによりキャストの振り抜き感、あるいは吸い込みの良さやバラシにくさといった巻き物系ロッドに要求されるすべてのスペックを、パーフェクトスパインレスならではのワンランク上の感性で表現。クセのないベンドカーブを描く肉厚ローテーパーならではの分厚い粘りが、スーパークロスファイア製法によるパーフェクトスパインレス化でさらに際立つ、パワフルなロッドである。
ほどよい重量感のために
トレカ®T1100Gの新たな可能性
6:4レギュラーテーパーブランクスのメインクロスには、トレカ®T1100G(33トン)を使用。弾性率の高い最先端素材を使用しながらも、なぜこれほどのムチッとした感覚が生まれるのか。
ひとつは、メインクロスに高樹脂タイプの24トンカーボンをミックスアップしていること。そしてもうひとつが、軽さやシャープさを生み出す目的で使用されることが多いトレカ®T1100Gの方にも、あえてカーボン繊維密度の低い高樹脂タイプ(レジンリッチ)を採用していることが挙げられる。
高弾性の張りと中弾性の粘りを併せ持つトレカ®T1100Gは、バスロッドにとって夢の素材として、グランドコブラにいち早く取り入れ、その後もインスピラーレシリーズに採用してきたのはご存知の通りである。ただし、そのいずれもがカーボン密度の高い、いわゆる低レジンピュアカーボンと呼ばれるタイプのプリプレグ(カーボンシート)であった。最新ロッドコンストラクション=低レジンピュアカーボン、触れるまでもないことだろう。
しかし、ディアウルフにはトレカ®T1100Gの中でも、あえてレジン量の多いタイプのシートを選択。その素材の持つ優れた基本特性を変えず、ややマイルドな感覚を強めているというわけだ。
さらに、ベリーにセカンドクロスとして高樹脂タイプ24トンカーボンを巻き足し粘りを付加。仕上げにバットを再びトレカ®T1100Gで強化しているが、ここには低レジンタイプのものを採用。今やロッド素材の主流となったトレカ®T1100Gをメインとしながらも、狙いのアクションやフィーリングを生み出すために、低レジンタイプと高レジンタイプを適材適所に配置している。
トレカ®T1100Gついて詳しくはコチラをご覧ください
※トレカ®は東レ(株)の登録商標です。
そしてSXF製法を語る上で、忘れてはならないのがカーボンシートの厚みである。トン数、レジン量、厚み等、数多くある組み合わせの中から、価格や生産性を度外視した超極薄タイプのカーボンシートを選択し、精密かつ緊密に巻き上げることでスパインを極限まで排除。通常の3倍以上の手間と時間を掛けて、さらに肉厚に巻き込んでいくことで、強靭でムチムチとした全身バネのようなパワーと筋肉質なトルクを兼ね備えたブランクス特性を実現しているのだ。
スーパークロスファイア製法について
詳しくはコチラをご覧ください
その肉厚でムチッとした筋肉質のブランクスは、「超軽量」を謳う方向性のものではない。程良い「重量感」。すべては気持ちの良いキャスト、ズバ抜けた遠投力&アキュラシーのために仕組まれたもの。店頭でロッドを持った瞬間の驚くべき持ち軽さではなく、実際にフィールドでロッドを振った時の、ルアーに遠心力をつけて弾き出す瞬間のたくましい力感、振り抜いた後の心地良い爽快感が、その狙いである。
また、クセのないベンドカーブを描くブランクス特性を殺さないためにも、ガイドセッティングも重要である。そこで、ベリー部には強化シングルフットガイドを採用。バット部のダブルフットもガイドフット間が狭いタイプを選択して、その影響を最小限に抑えている。
グリップは、FujiリールシートTCSタイプ。ブランクタッチ部がないため握り込んだ際の遊びが少なく、7フィート肉厚ローテーパーでパワフルなブランクスを、手元でしっかり受け止めるための選択。手元がブレないことで、パーフェクトスパインレスの効果を最大化できるのだ。
7フィートMHパワーの
パーフェクトスパインレスがもたらす恩恵
スーパークロスファイア製法のロッドであるゆえ、ブランクス由来のキャストブレはほとんど存在せず、思い描いた弾道で狙ったスポットにショットがズバズバと決まっていく。そればかりか、無理な体勢からの不意打ちのようなアワセにもロッドティップが踊ることなく追従するため、パワーロスなくしっかりとフックポイントを撃ち込むことができる。これもパーフェクトスパインレスロッドならでは。
そのうえ、ムッチリした柔軟性を阻害するスパインによる引っ掛かりもないため、ファイト中にもブランクスがバスの不規則な動きにしっかりと追従。ボート際や足元まで寄せてきたラインテンションが緩みやすい状態でも、常にテンションを掛け続けることができるため、バラシリスクという面でも相当な恩恵を得ることができる。
これらのキャスト~フッキング~ランディングすべてにおける様々な恩恵は、“単に”パーフェクトスパインレスだからというだけでなく、「7フィートMHパワー」のパーフェクトスパインレス、という点から生み出されている。
約20年に及ぶ、スパインレス化へのあくなき努力と執念によって生み出された、ディアウルフ ワイルド7に対して「コンバットスティック史上最高の銘竿と確信させてくれるロッド」と溺愛ぶりを見せる今江。最近では、常にボートデッキに最低2本は常備される最強の右腕となっている。
その筋肉質でむっちりとしたブランクス特性から巻き物系全般に相性が良く、とりわけ1/2〜2ozのハードベイト&ソフトベイトの巻き物にベストなパフォーマンスを発揮。クローラーベイト、ビッグペンシル、フルサイズクランク、ディープクランク、ビッグベイト、スイムベイト、スイムジグ、ブレーデッドジグ、スピナーベイト、ビッグスプーン等、考えうる3/8oz(10g)以上の巻き物すべてに対応する。
セミロンググリップRSとショートグリップGT-R
使い分けの基準
ディアウルフ ワイルド7には、ブランクス&ガイドセッティングは同一で、グリップ形状が異なる2種類が存在する。それが、「コルクのセミロンググリップRSモデル」と「EVAショートグリップを採用したGT-Rモデル」である。
GT-Rのグリップは、RSと比べて約1インチショート化されているが、ロッド全長は7フィートのまま。つまり、ブランクスの有効レングスが1インチ延長されているのが面白い。同一ブランクスながら1インチの差によって、ブランクスが短いRSの方が若干ハードな印象、ブランクスが長い分GT-Rの方がややソフトなフィーリングとなる。
■ RS・GT-R 比較表
▼ 全長はRS、GT-R共に7フィートと共通
【グリップ】
RS:1インチ長い
GT-R:セパレート部が1インチ短い
【ブランクス】
RS:1インチ短い
GT-R:バットが1インチ長い
【特徴・用途】
RS:ややハードな印象
➡ロングキャスト 、フッキングパワー 、縦さばき横さばき、陸っぱりに
GT-R:ややソフトな印象
➡アキュラシーキャスト、バックハンドサークルキャスト、巻きアワセ、操作系ルアーに
ややハードなブランクスと長めのグリップの組み合わせのRSは、ロングキャストやフッキングパワーを必要とする分野に向いている。ただ、グリップが長めという表現は、あくまでGT-Rと比較してという話であり、7フィートMHロッドとしては、長すぎず短すぎずのバランスの取れた標準モデルと言える。
一方、やや柔軟なブランクスとショートグリップの組み合わせのGT-Rは、キャスト精度重視で、気持ち良いスパインレスキャストフィールが存分に楽しめるスペシャルモデル。ショートグリップ化による先重り感を軽減するため、センターグリップにEVAを採用した点も見逃せない。
■ RS
セミロンググリップの場合、右手と左手の距離が開くため、手首はロックされて肘を基点にロッドを回す形になる。そのため、ロングキャストやフッキング面においては両手間の距離がテコの原理で有利に働く。ビッグレイクや陸っぱりで大型ルアーを遠投、連投する場合は、コルク・セミロンググリップのRS。また、ややハードな印象のブランクスとも相まって、強いフッキングやアワセの瞬間的パワーを重視したいルアー向きでもある。
とりわけ、ソフトスイムベイトやスコーンリグ、スピナーベイト、ビッグスプーンなどのシングルフックルアーは、遠距離でのフッキングパワーを要し、乗せだけでなく、時にはリアクション的なバイトを積極的に掛けにいく必要もあるため、抜群に相性が良い。
また、ブランクスとグリップの長さのバランスも良く、巻きの横さばきだけでなく、ジグワーム的動作や縦さばきの操作性にも対応できる汎用性も併せ持つため、陸っぱりで持てるロッド数に限りがある状況でもバーサタイルに活躍してくれる。
■ GT-R
ショートグリップは、ゴルフクラブを握るように両手の握る間隔が狭くなることで、サークルキャスト時の回転の中心軸が1点に集約される形となり、円軌道のブレが少なくなるというメリットがある。ゆえにキャスト精度が安定する。比較的近距離の非常に狭いスポットを狙うとき、バックハンドサークルキャストを多用する場合は、明らかにショートグリップのGT−R が有利になる。
また、ロッドを体の正面で構えるオーバーヘッドキャストにも、脇を閉めて真っ直ぐ振り抜きやすいショートグリップ。キャスト軌道が安定しにくいクローラーベイトやS字系ビッグベイトを、護岸や桟橋、流木溜に沿って直線的軌道でキャストして引いてくるような状況にも適している。
手首の自由度の高さから、操作が必要なトップウォータールアーはもちろん、ややソフトな印象のブランクスとも相まって、巻きアワセで乗せるトリプルフック系ルアーにも相性が良い。
力強くも、しなやかなスイングで弾き出す。思い描いた通りの弾道で、ルアーが水面に吸い込まれる。気持ちが昂り、心地良い緊張感がアングラーを包み込む……
7フィートMHパワー×肉厚ローテーパーが生み出すトルクフルな粘りが、スーパークロスファイア製法によるパーフェクトスパインレス化で一層際立つ。従順にして屈強。ディアウルフ ワイルド7。
現代、さらには近未来に照準を合わせたレングス・パワーへとアップグレードを果たしてなお、バスフィッシングの根源的な楽しみが、ここに存在する。
2つのディアウルフ ワイルド7
IRSC-70MHR-SXF
 ディアウルフ ワイルド7 RS 
●Length:7'0" ●Power:M-Heavy 
●Lure Weight:3/8~3oz. ●Line:10~30lb.
GTR-C70MHR-SXF
 ディアウルフ ワイルド7 GT-R 
●Length:7'0" ●Power:M-Heavy 
●Lure Weight:3/8~3oz. ●Line:10~30lb.