ウォーガゼル 開発ストーリー
~ プロローグ ~
20年の時空を超えたフルチューブラー革命。
最新技術で進化を遂げ蘇る、
テムジン流 究極操作系・超高弾性シャフト。
インスピラーレ潮流の1つの終着点となった2020モデル、2つの7フィート、クーガーエリート7&ディアウルフワイルド7。最新素材を贅沢に使い最先端製法でつくり上げた、まさにバーサタイル性の極み。初級者から上級者まで、アングラーの技術レベルを問わず、使うだけでスキルが2~3段上がるような適応力に優れたロッドに仕上がっている。
しかし、バーサタイル性だけでは打開できない場面がある。それを体現したロッドが、2023年ついにデビューを迎えるウォーガゼルである。
ティップ先端まで超高弾性カーボンを用いたシャフト全身に漲る明確な張り。しかもショートレングス。年々ロッドがロング化するバスフィッシング業界のトレンドは、ほとんど無視。だが操作時の明瞭度はケタ違い。そのフィーリングは、研ぎ磨かれた日本刀。まさしく初代テムジンである。20年前、時代の先を走り続けた名竿が今、現代に蘇る。
一時、高弾性は脆い、折れやすい、と言われた。しかし、カーボン技術の進化は、高弾性ロッドの常識を覆す。トレカ®T1100Gに始まり、トレカ®M40X、そして次世代M50Xへと続く高弾性カーボンは、軽くてシャープで感度が高いだけでなく、粘りも強度も併せ持つという新しい時代に突入している。
「ショート」&「ストロング」。超高弾性テムジンコンセプトが、最新カーボン技術で進化を遂げつつ蘇る。今江克隆が再び世に問う、超高弾性カーボンの咆哮がこだまする。
最先端PEベイトフィネス専用機、
ソリッドティップ・ハングマン511MHの存在
2020年、JBトップ50シリーズがコロナ禍のため開催中止になっている期間、今江は頻繁にフィールドに出てテストに明け暮れていた。
その中には、ビッグベイトショートというコードネームで開発を続け、2022年にリリースされたジャイアントディアウルフを始め、吊るし対応のショートレングスベイトフィネスロッド・ハングマン、そして超高速打撃シェイキングでルアーに生命感を吹き込むスピニングロッド・ウッドペッカーなどがあった。
エバーグリーン2021カタログより
数々の最先端釣法&タックルシステムを先んじて切り開いてきた今江は、操作系ビッグ~ジャイアントベイトタックルシステムを進化させたジャイアントディアウルフのテストと並行して、現代トーナメントを戦うために必要となるPEベイトフィネスシステムを、進化完成させることにも注力していた。
そのためにテストしていた専用ロッドが、強化ソリッドティップを搭載したハングマン511MHSTだった。
オーバーハングの中でも取り回せる機動性を重視した5フィート11インチで、軽量ルアーをティップに乗せて繊細にキャストできるソリッドティップと、その名の通り大型バスを枝に吊るしてでも、ボートで近づいてランディングできるパワフルなバットを持つ、MHショートロッドのテストは順調に進んでいた。
エバーグリーン2021カタログより
しかし、フィールドで偶然出会ったあるアングラーの一言が、すべてを一変させることになる。
古くからの今江ファンだった彼は、今江が雑誌やブログで発表していたPEベイトフィネスやハングマンなどの最先端テクニックやタックルについて、非常に詳しく知っていた。ところが彼は熱く、このようにも語ってくれた。「僕にとっては、テムジン・スーパーグランドスラム(SGS)ガゼルが最高のベイトフィネスロッドなんです」と……
超軽量、超高感度の極み、
超高弾性チューブラーSGSガゼル
「テムジン・スーパーグランドスラム」と言えば、今江がJBワールドチャンピオン、JBスーパークラシック、JBアングラーオブザイヤー、そしてバサーオールスタークラシックのメジャー4冠をすべて複数回獲得したことを記念して、2002年に特別発売されたテムジン限定モデル3機種(ガゼルTMJC-63ML・SGS、コブラTMJC-65M・SGS、エアレイドTMJC-66MH・SGS)である。
エバーグリーン2002カタログより
テムジンは、高弾性・高感度志向を前面に打ち出した、尖ったチューブラーブランクスを採用したシリーズだった。
SGSガゼルの例を見ると、中弾性30トンから、35トン、40トンの高弾性カーボン、さらには50トンの超高弾性カーボンまでを適材適所に配置。主にジャークベイトやトップウォーター等のテクニカルなハードベイトやヘビーダウンショット、ライトテキサスを使用するためのロッドで、超軽量、超高感度の極みであった。
しかし一方で、24トンや30トンカーボン素材が主流だった当時のバスロッドと比較して、あまりにキンキンに尖りすぎており、使い手を選ぶロッドと賛否の議論を巻き起こしてもいた。
そのように希少な超高弾性の高額ロッドを、自分の愛竿として20年以上も使い続け、その性能に心底惚れ抜いている彼の言葉は、釣行から帰宅した後も、今江の頭にこびりついて離れなかった。
そこで、自宅倉庫からSGSガゼルを探し出し、次に予定していた湯原湖ロケに持ち込んでみることにした。その結果、この20年間で忘れかけていたSGSガゼルの魅力を、製作者の今江自身が思い知らされることになる。
ロケでは、まず試しに10数g程度のスプラッシュ型ペンシルポッパーをPE1.5号で投げてみることに。チューブラーロッドらしい癖のないキャストフィールと、高弾性ならではの弾けるようにぶっ飛ぶ遠投性能、超軽量6フィート3インチゆえの抜群な取り回し、そして首振りアクションの圧倒的なキレと高い操作性……
20年前のロッドがなんの劣化もなく、つい先日作られたかのような品質を保っている国産ブランクスに衝撃を受けながらも、ここぞというピンスポットでのクイックテーブルターンアクションで、ブリブリの55cmをあっさりとキャッチ。この釣行を機に、今江の「ガゼル熱」はヒートアップしていった。
また、この時実感したPEラインとの相性の良さは、あのアングラーの言葉と相まって、今江が注力していたPEベイトフィネスの可能性を感じさせるものでもあった。いや、それどころかPEベイトフィネスを追求してテストを繰り返していたハングマンを、開発停止にまで追いやるほどの破壊力を秘めていたのだ。
ハングマンを開発停止にまで追い込む
SGSガゼルの秘めたポテンシャル
ソリッドティップを搭載し、PEベイトフィネスを牽引するロッドとして開発中だったハングマン511MHは、繊細なティップが可能にする超軽量ルアーのプレゼンテーション力や一瞬の間を与えられる喰い込みの良さ、それに反するチューブラー・ベリーバットの強さでビッグバスを吊るすパワーを持つロッドだったが、軽量ルアー・接近戦専用という特殊性の塊のようなロッドでもあった。
確かに吊るしは、現代ベイトフィネスにおいて絶対に必要なテクニックの1つではあるが、状況に応じて、超軽量からやや重めのリグまでを精密に使い分け、超近距離だけでなく遠距離からのアプローチを要求される場面も多い。ソリッドティップロッドでピッチングする際、リグウエイトによっては、ソリッドのティップだけが垂れてしまい、狙いより手前にリグが着水してしまうことがある。
ソリッドティップの泣き所であるが、一方、SGSガゼルのようなチューブラーティップの場合、ソリッドに比べて張り感があるため、ティップ垂れは発生しにくい。
また、近年のプレッシャー対策として必須テクニックと言える、遠距離からカバー最奥をえぐるスキッピングやロングピッチングにおいても、ソリッドティップロッドと違い物理的継ぎ目が一切なく、力の伝達がスムーズなチューブラーロッドに軍配が上がる。
さらに、吊るしにおけるカバー越しのルアーアクションやフッキングを考えると、アングラーの意思を伝達するパワー&スピードに優れるのは、ティップに張りがありかつ継ぎ目がないチューブラーロッドの方である。
元々SGSガゼルが得意とするテクニカル系ハードベイトにおけるチューブラーティップの優位性は、疑う余地がない。特にロングキャストして操作する場合は、ソリッドティップではアクションパワーを吸収してしまい、アングラーが意図する通りに動かすことは不可能だろう。
これらを総合的に勘案し「超高弾性チューブラーロッドのSGSガゼルは、ハードベイトのテクニカル操作のみならず、ベイトフィネスの領域もカバーし、しかもベイトフィネスをさらに進化させる可能性を秘めている」と確信した今江。ほぼ完成の域に達していたハングマンとは別の切り口から、PEベイトフィネスロッドとしての「新たなガゼル」の開発を急いだ。
2021年のカタログでは、ブラックガゼルという名称でその途中経過が発表されているが、その後も開発サンプルの作成と実釣テストを繰り返し、ついに、テクニカル系ハードベイトのみならず、PEベイトフィネスシステムを進化完成させるべく、最先端素材で武装した「ウォーガゼル」が誕生することに……
Part2に続く……
IRSC-63MHR-TG40X
 ウォーガゼルRS 
●Length:6'3" ●Power:M-Heavy ●Weight:111g
●Lure:2~20g ●Line:6~14lb/PE1~2号