ウォーガゼル 詳細解説
~ ロッドコンストラクション編 ~
開発ストーリーからの続き)
今江克隆のメジャー4大タイトル制覇を記念して2002年にリリースされたテムジン・スーパーグランドスラム(SGS)ガゼル。高感度・高弾性志向を前面に打ち出し、尖ったチューブラーブランクスを採用したこのモデルは、主にジャークベイトやトップウォーター等のテクニカルなハードベイトや、ヘビーダウンショット、ライトテキサスを使用するためのロッドであった。
ふとしたきっかけから、その20年前のロッドをロケで使用することになった今江は、忘れかけていたSGSガゼルの魅力を思い知らされることになる。
「このロッドは、テクニカルハードベイトだけでなく、ハングマンが目指していた領域を超えて、ベイトフィネスをさらに進化させる可能性を秘めている……」
バットからティップ先端までのメインシートに
トレカ®M40Xとトレカ®T1100Gを
ダブル採用。
その後フィールドテストを繰り返す中で、SGSガゼルは、長く固定観念化していたトーナメントにおけるソリッドティップ万能神話を融解させ、ベイトロッドの大基本であるチューブラーロッドの本質を思い出させてくれた。
しかし、20年前の超高弾性カーボンを使用しているため、破断強度に不安が残る。そんなSGSガゼルを、現代の最先端素材&技術でアレンジするという開発基本方針から誕生したのが、ウォーガゼルである。
まずは、ロッドの特徴を形作る重大な要素であるブランクスであるが、バットからティップ先端までの全身に、高強度・高弾性カーボンの「トレカ®M40X 」40トンと「トレカ®T1100G 」33トンをダブルで採用。驚くほど細身であり、かつショートレングスのチューブラーブランクスは、初代テムジンのように全身に漲る「切れ味鋭い強烈な張り」に加え、強度を手に入れた。
そのうえで、バット部に超高弾性50トンカーボンをコンポジットして高感度化を図りながらも、スパイス的に中弾性30トンカーボンシートもプライアップ。操作時には高弾性のキンキンに張り詰めた鋭いフィーリングを実現しながらも、力が掛かると、追従する特性が適度に現れる。仕上げに、±45°カレイドスーパークワトロクロスで捻じれを抑制しつつ、さらなる強靭化も達成。
■ ウォーガゼル ブランク素材構成図
※「トレカ®」&「ナノアロイ®技術」は東レ(株)の登録商標です。
ベイトフィネスと相性抜群、
超高弾性フルチューブラー・ショートレングス。
さらに、トレカ®M40Xとトレカ®T1100Gの「張りがあるのに曲がる」「曲がるのに張りがある」というユニークな特性から、やや重めのベイトフィネスだけでなく、軽量ルアーのキャスタビリティも進化。2gのリグをキャストでき2kgフィッシュを吊るし上げるリフティングパワーを持つという、ハングマンが備えていた二律背反の要素を取り入れることにも成功した。
ショートレングスで圧倒的に細身のブランクスは、一見するとライトアクションロッドにも見えてしまうだろう。華奢なショートセパレートハンドルが余計にその印象を深めるかもしれない。
しかし、実際にPEラインと組み合わせたベイトフィネスで使ってみると、カバー内での不利な体勢からでも瞬発的なシングルハンドフッキングが決まり、そのスピードゆえバスを反転させず顔をこちらに向けたままでリフト。と、華奢な見た目を圧倒的に超えるパワーを体感できるだろう。そして、最先端の高弾性素材&技術が成し得る強靭性。カバーを攻撃する上での不安はない。
フルチューブラーブランクスの恩恵は、キャストや操作面にも顕著に現れる。やや重めのリグをピッチングしたときにもティップの垂れが起こらず、狙ったスポットより手前に着水してしまうイライラから開放される。
また、吊るしで使った場合には、アクション入力時にティップ部のみのお辞儀がないため、アングラーの意図通り、より正確に丁寧に操ることができる。ティップでカバーを躱す動作も意図通りで、カバーへのスタック率も大幅に減少する。
ガゼルの真骨頂、
テクニカルハードベイティングにも
明らかな進化。
ガゼル本来の性能を発揮できるハードベイト使用面でも、明らかな進化が感じ取れる。ペンシルポッパーやカバーラットの高速ドッグウォークには、継ぎ目がないレギュラーテーパー・チューブラーで張りのあるティップからベリーがきれいに追従し、ギクシャク感は皆無で好みのビートで自在に刻むことができる。
超軽量なショートハンドル設計で、グリップエンドが操作時の邪魔にならない。もちろん、ジャークベイトの操作も、驚くほど軽快にテンポよく行える。
また、短く細身で軽量なことからスイングスピードが上がり、反発力に優れたトレカ®T1100G &トレカ®M40Xの高弾性の弾き出すパワーで、6フィート3インチとは思えない気持ちの良い飛距離をもたらしてくれるのも、実戦面での大きなアドバンテージとなる。
研ぎ澄まされたスペシャリティが結集して
形作られた新時代のバーサタイル。
トレカ®M40X&トレカ®T1100Gがなせるショート&スリムボディのシャープな超軽量性と、それに反するクラスを超えたパワフルさと実用的な対破断強度。接近戦PEベイトフィネス専用機・ソリッドティップ「ハングマン」の開発を停止に追いやった、20年の時空を超えたフルチューブラー革命。
一見特殊な超高弾性ショートレングス。しかし、バスアングラーのレベルがここ十数年で劇的に上がったことで、超高弾性ロッドに対する評価が高まっているのは紛れもない事実であろう。
そして、現代のバスフィッシングに要求されるテクニックを見渡すと、このロッドがフィットする領域はことのほか多い。
スモラバ2gのベイトフィネスから5g前後のワイルドフィネスまで。接近戦だけでなく遠距離戦にも。さらには、7g前後のフットボールジグやテクニカルワーミングに。そして、操作系ハード&ソフトベイトにおいては、110mm級ジャークベイト、大型ペンシルベイトすら、平気で扱えてしまう潜在パワー。このように、適応範囲の広いバーサタイルな一面も併せ持つのも超高弾性フルチューブラー・ウォーガゼルの特徴である。
「開発ストーリー ~プロローグ~」で述べた通り、バーサタイル性だけでは打開できない場面が存在するのは事実である。しかし、研ぎ澄まされたスペシャリティが結集し形作られたバーサタイル性ならどうだろうか。
他を寄せ付けない精度で軽快かつ鋭いロッドワークを可能にする超高弾性フルチューブラー。ひとつひとつのテクニックに圧倒的なアドバンテージを発揮する特化型ロッドでありながら、現代バスフィッシング攻略の鍵となるテクニカルなメソッドを広くカバーする。ウォーガゼルがあれば戦える。そんな新時代の超高弾性バーサタイルが誕生した。
IRSC-63MHR-TG40X
 ウォーガゼルRS 
●Length:6'3" ●Power:M-Heavy ●Weight:111g
●Lure:2~20g ●Line:6~14lb/PE1~2号