最初に理解しておきたい事は、ここまでリリースされたカレイド6機種は、レギュラーシリーズであり、初級者からエキスパートまで十分に使いこなす事が出来る汎用性の高さを意識して作ったモデルであると言う事。

共通する特徴としてスペックにゆとりを持たせた「タフ&ヘビーデューティー」がある。ガイド一つとってもチタン製Wフットガイドが標準装備であり、軽量化のためのシングルフットを使用していない。また、10ポンドクラスを相手にした実戦テストでも、バット強度を全く問題としない頑強な構造となっている。これらの機種はどの部分をとっても平均的バスロッドのスペックを遥かに凌ぐパワーと、長期に亘るヘビーユースに対するタフさを持たせたのが特徴である。

実際、これらの機種はテムジン従来機種と比べてロッド自重自体、スペック的にはむしろ重いのだ。しかし、実際に使ってみると「軽い!!」と誰もが口にするほど、このシリーズのバランスの良さを物語っている。無論、グリップエンドバランサーなども使ってはいない。

2000年、テムジンがデビューした当時は琵琶湖を中心としたトーナメント全盛時代で、競技最優先、自分のスタイル最優先でこれらのロッドを作っていた。高弾性をふんだんに使ったガニングシャフト電撃やエゴイストはまさにその象徴だった。受け身ではなく、全てを自ら意図して仕掛ける、積極的操作的好みは高弾性ロングロッドである事は間違いなく、ガニングシャフト電撃を今も現役で愛用しているトーナメンターもいる。

ただ、これらのロッドは間違いなく使い手を選ぶ。キャスト時に、僅かなテイクバックで瞬時に高弾性を十分に撓らせる握力と上腕の力がなければ、この手のロッドを使いこなす事は到底無理なのである高弾性は全て倍速の世界になる素材なのだ。事実、プロ野球の4 番打者や、超一流プロゴルファーが、アマチュアと同じバットやクラブを使っていなのと同じで、平均レベルを超越した結果を要求されるエキスパートは、エキスパートにしか使いこなせない道具を普通に使いこなせるのも事実なのである。

しかし、理想はアマチュアですらエキスパートの領域に近づく事のできる道具、すなわち使い手のレベルをサポートし、平均以上のスコアを出せる道具が望ましいのは当然の理である。この領域を目指し2004年に発表したのがクロスファイアであった。

しかし、ロッド製法上難易度が高いものの、その割には尖った所が無く、派手さを求めるアマチュアアングラーには解りにくい、コア過ぎるロッドでもあった。今でも、クロスファイアは、その当時のロッドコンストラクションのタブーに触れる、ロッド製法の究極、最終目標だったと思っている。そして、実質、クロスファイアを最後に、ロッド開発に限界を感じていたのも事実だ。2008年、衝撃的な素材による「スーパー4軸製法」との出会いまでは・・・・・・

そして2008年、この新素材「スーパー4軸(スーパークワトロ)」の完全武装強化によって、全てが一変した。限界に来たと思っていたロッドの開発に再び大きく門が開かれたような衝撃が走った。テムジンが持つ高弾性のキレと瞬発力、軽量高感度を維持しながら、クロスファイアの捻じれモーメントに対する圧倒的な耐久強度(トルク)を持ち、なおかつ、初代コンバットスティックのボロンを彷彿させる靭性とタフさも兼ね合わせた「スーパー4軸製法」。まるで最高の食材を目の前にして、どう料理し、何を作ろうか、余りに多くの可能性に迷いに迷っているようなワクワク感があった。

そしてまず、その素材の良さをストレートに生かし、圧倒的なトルク感と軽量感、操作性のキレとタフさを発揮させたのが、2008年秋にリリースされたカレイド・フラッグシップモデルのスーパースタリオンである。

7フィートオーバー、ヘビーロッドのイメージを変えたスーパー4軸完全武装のヘビー級バーサタイルロッド。最も使用頻度が高いカレイドの超基本モデルでもある。続いてリリースされたのが、同じく全身にスーパー4軸をまとったスーパーコブラで、この2本があれば全ての基本的バスフィッシングテクニックは完結する。若干の不自由はあっても、ほぼ何でもできる。実際に2008年、ベイトに関しては、ほとんどこの2本のロッドしか使っていない。それでハード、ソフト、ビッグからライトまで、ほぼ全てをカバーできる。

ならば、「これでカレイドは完結か?」と言うのは間違いである。逆にこの2本で全て賄うには、使い手の柔軟な対応能力が必要なのも事実。そこから次のベーシックステップが、スーパーコブラ66MXを中心とした、ブラックレーサー66MFX、ブラックレイブン66MHXの「トリニティー66M・X」シリーズになる。これは、日本でも最も使用頻度の高い66Mアクションを、ローカル性、そして使い手の性格に合わせて選べるようにセッティングしたシリーズである。つまり、スーパーコブラをフィールドの状況やアングラーの好みによって他の66Mに組み変えることで、スーパースタリオン + 66Mという2本のロッドですべてをカバーするカレイド・ベーシックモデルとしての機能が、より強固なものとなるのだ。

トリニティー3兄弟の中心となるスーパーコブラ66MXは中弾性をメイン素材とし、特に耐久性能とタフさ、ハード、ソフトに両面に汎用性の高さを持つ、最もバランスのとれたミディアムアクション、レギュラーテーパー。ティップの先端まで完全武装のため、耐久性能、リフティングパワー、タフさは3兄弟随一で、カレイドスーパー4軸の粋を集めた代表作。トリニティー3兄弟の全ての要素を受け継いでいるため、1本で全てこなしたい人には、このスーパーコブラが最も適している。ただ、エキスパートの視点からみると、全てに優れている「正義の味方」は若干、毒味にかけているとも言える。私がブラックレイブンを多用するのは、その毒の強さが好みだからなのだが・・・・・・

私がスーパーコブラを多用するのはオカッパリ取材の時で、ロッドの本数を減らしたい時や、未知のフィールドでは重宝する。ルアーはスピナーベイト全般、バズベイト、バイブレーション、シャロー~ミディアムクランク、ノイジー系トップ、ミドル級ビッグベイト、5~10g程度のテキサスや4~6インチ高比重ワームノーシンカーにも向いている。

ブラックレイブン66MHXは高弾性の特性を持ち、軽量ながら高感度高靭性をもち、もっとも競技色が強い、ティップまで張りのあるエキスパート向けの性格を持つ。4~10mのディープでの感度、操作性も「トリニティー」3兄弟中NO.1。カバー際の攻防にも優れ、見た目以上のパワーも併せ持つ。カバーに入れて即バイトが来るようなイージーなカバー攻めではなく、カバー内部での繊細なシェイクやリフト&フォール、中層の枝に引っ掛けてのシェイクからのフッキングに優れ、カバー越えランディングも難なくこなす。積極的に感じる、掛ける、制圧するといった意思的な操作を好む人向け。ハングオフと同時に起こる、瞬間的リアクションバイトを掛ける能力は3兄弟の中でも傑出している。

私が多用するルアーは、1/2ozスピナーベイト、小型スイムベイト、5~14gテキサス、1/4~1/2ozラバージグ、4~6インチ高比重ワームノーシンカー等。超軽量級にも関わらず、5/0フックを一撃で貫通させる瞬発力はこのロッドのレスポンスの鋭さを物語っている。

ちなみに3兄弟で現在、私が最も試合で多用するのがレイブンで、常時2本は積んでいる。プロスタッフの間でも、試合投入の最も多いのがこの機種で、プロアングラーと一般アングラーの環境の違いによって、大きく評価の分かれるロッドだろう。

ブラックレーサー66MFXはトリニティー3兄弟の中でもかなり異質な存在になる。一言でいえば一番使い手に優しく、穏やかな性格であり、積極的、能動的な他の2機種にくらべ、やや受動的な性格を持つ。ただ、3兄弟の中で最も優れた柔軟性と技術アシスト能力を持っているので、いざという時には全て竿任せでなんとかなってしまう。66MFXと言う表記は、フレックスファーストアクションの意味で、2.5:7.5の明確な硬度差もつティップセクションが特徴。しかし、適度に張りを残した優しく柔軟性に富むソフトティップを持ちながらも、他の兄弟にも劣らぬ強靭なバットと意外性に満ちた強靭なベリーというギャップを持ち、ティップで優しく包み込んで、ベリーでバッサリ切り落とす。ある意味、一番エグい性格を持つのがブラックレーサーでもある。バスにとっては、本気で牙を剥くと一番厄介な存在かもしれない。

ルアーは90~110mmミノー、ジャークベイト、50~180cmレンジクランク、1/4~3/8ozスピナーベイト、60mmバイブレーション、ポッパー、ペンシル等10~14gトッププラグ、オープンウォーターでノリの悪い時や喰い込みが浅い時の4.5インチ高比重ワームノーシンカー、小型スイムベイト、ヘビーダウンショット、3.5~9gテキサスリグ、バズベイト等多岐にわたる。

シェイキングアクションやタメの効いたジャーキング、乗せ調子の巻き物などに向いている。ガツッっと一気に貫通させて掛ける人より、ズニュっと針先を捩じり込むようなフッキングを好む人向け。ソフトカバーや、ライトカバーでは、ソフトティップの良さを生かし意図的に軽くスタックさせて誘えるので、ブラックレーサーを多用する。特に霞水系では評価の高いロッドである。

超基本モデル、トリニティー66M・Xシリーズのベーシックモデルとは別に、カレイドでは2009年2機種のサイドラインをリリースしている。それがハスキーワインダークワトロプラスとインパラである。サイドラインと言うのは、常に必要とするものではないが、必要な人には本流以上に必要な場合があるモデルである。フィールドのローカル性に応じたあくまで汎用性の高い、好みによっては常時スタメン化出来るシリーズでもある。

そのサイドライン1番手が世界初規格となるスーパー4軸コンポジット・グラスロッド、ハスキーワインダークワトロプラス。私がグラスロッドで一番こだわった部分は、UD(ユニディレクション)と呼ばれる単一縦方向繊維を使用すること。これは、竿の理想と言われる「竹(BAMBOO)」のような柔軟性と伸び、そして腰のある戻りシロを持つ。私の選択肢の中でUDである事は、絶対に外せないグラスロッドの基本なのである。

しかしUDグラスの最大の弱点に、ブランク横方向からの「潰れ」に極端に弱いということがある。簡単に言えば、よく曲がるグラスロッドは、その曲がりの中心部で「楕円」に変形しようとする。横方向の補強を持たないUDグラスは、あっという間にヘシャげて潰れて(折れて)しまう事になる。

これを防ぐために大昔のグラスロッドは異様にレジン量の多いシートを使っているのだ。これでは筋繊維の上にたっぷり脂肪がのっているようなもので、重くて愚鈍なロッドになるのは当然なので、現代の「低脂肪(低レジン)高タンパク(筋肉質)」路線から遠く離れた存在だったのである。確かに近年主流の低レジン製法は、ロッドを軽く高性能に変えてきた。しかし、それは同時に現代人的「ひ弱さ」にも繋がって行ったのである。

スーパー4軸が、このUDグラスの最大の泣き所を、最小限の補強で最も効果的に解決する理想的素材である事はすぐに理解できると思う。脂肪(レジン)のかわりに、縦横方向には弾性を落とした伸びのある筋繊維を補助配置。屈曲方向には高弾性繊維を45度角で双方向から配置し、最も負荷のかかるバット~ベリーの潰れと捻じれを重量を増すことなく排除した。

そして4軸で全てを補強してしまうのではなく、断面が潰れにくい細身になるギリギリの部分、すなわちUDグラスの命とも言える伸びシロを必要とするティップ~ベリーにかけては、その特性をいかんなく発揮させるため、例外的にシングルフットガイドを採用し、4軸補強を潔く外している。その分、ベリーの強度を維持する接着効果を高めるため、このロッドだけが、「Wコーティング塗装仕上げ」になっている。UDグラスに対する私のちょっとしたコダワリである。そしてここに竹の鞭とも呼べるハスキーワインダークワトロプラスが完成した。

7フィート3インチでありながら片手でも扱える究極の軽さを持ち、UDグラス特有の伸びを持つベリーと、スーパー4軸ならではの胴の強さは、驚異的ウエイト適応力を持つ。吸い込みシロを残した適度なハリは操作感を犠牲にせず、ウィードエリアでのバイブレーション、カバー際での3/8~1/2ozスピナーベイト、バズベイトも悠々と扱える。特に足の速いスモールマウスの表層~中層高速スピナーベイティングには最適である。個人的にはハードボトムフラットのクランキングにもっとも多用しており、特に180~250cmレンジではアクションの増幅が大きく、ロックパイルへのカミ込み回避、その後のライジングにも最高の相性を見せる。

このロッドは、どんな湖でも絶対に必要なロッドかと言えばそうではない。事実、関西圏での通常取材で出番は少ない。しかし、いざ遠賀川や霞ヶ浦、北浦、利根川、八郎潟といったマッディフラットなフィールドで、延々と続くリップラップや長大なテトラエリアに直面した時、その存在の偉大さは何物にも代えがたいものとなる。このロッドは、UDグラスロッドの奥の深さとスーパー4軸製法ならではの世界観を、同時に楽しめる貴重な存在だと思っている。

最後に登場するのはあの伝説の名竿、ショートロッドの伝説を作ったインスパイア・ガゼル(1997年発表)の正当後継機種「カレイド・インパラ」である。インパラを設計するにあたって、インスパイア・ガゼルを再度徹底的に細部に亘って検証しなおす作業を行った。

インスパイア・ガゼルは金属単繊維素材「ボロン補強」ゆえの強力なトルクと耐捻じれ性能、そして高靭性を持っていた。「張り」と「粘り」と言う相反する要素を奇跡的にこの時代に既に持ち得ていたのである。ただ、レジン量が多く、さらに金属繊維であるボロンをベリー部まで採用し、分厚くグリーンに塗装していたのだから、あまりにも重い。しかし、未だにインスパイア・ガゼルのフィーリングは、一般アングラーを中心に根強い支持を維持しているのだ。その理由は、重い事は承知の上で「ショートロッドながら非常に強く、幅広いウエイトに対応が効き、オールWフットガイドが標準装備のタフなロッドは現在ほとんど存在しない」事が考えられた。

正直告白してしまうと、私自身このインパラは当初全く必要とするモデルではなかった。65以下のロッドに明らかなアドバンテージを感じなかったのである。なのに何故、インパラを作ったのか?その答えを明かすと、スーパー4軸ならボロンの良い部分だけを再現し、かつてのインスパイア・ガゼルを完全に超越するロッドが再現可能なのではと言う、純粋に革新技術に対する興味であった。しかし、全く同じマンドレルを再現用に使用しながら、ガゼル独特のトルクある粘りと剛性は簡単には再現できなかったのである。

「何故に???」しかし、検証している間に意外な事に気がつく事になる。温故知新とはよく言ったものだが、全てが高精度、軽薄短小に進化すれば快適便利と言うものでもない事を、改めて痛感する事になった。この温故知新的発見は、インパラを見事にボロン・ガゼルの領域に到達、いや無論、予想通り、その領域を超えてしまった。スーパークワトロの特性は中弾性ピュアカーボンにボロンの強靭性と、捻じれを封じ込む剛性を与え、同時に劇的な軽量化を果たした。そしてここに近年では希少な存在となる6フィート2インチのMクラス、しかもチタンフレームオールWフットガイド仕様のショートバーサタイルロッドが進化、復活する事になった。

その特性はMクラス・レギュラーアクションながら、余裕溢れる破格のトルクを温存する。事実バカラックのテストでは、10ポンドオーバーを2本、このインパラで仕留めているが、ランディング寸前まで完全にサイズ誤認をしてしまっている。これこそがインパラの突出したトルク特性を、ハッキリとあらわしたものだと言えるだろう。硬いMでなく、強いMと表現すべき特性である。

推奨できるルアーとしては、クランクなら潜行深度50~250cmまでは余裕の守備範囲、スピナーベイトは1/4~1/2ozはベストフィットだろう。トップに関してはポッパーから、ザラスクープまで非常に広範囲に適応し、特にロッドワークを必要とする水面系や90mm程度のジャークベイトには62Mは最適の取り回しだ。想像以上にしなやかに入るティップはウエイトのノリが抜群に良い。ワームジグに関しては電撃系セットフックには向かないが、 3.5~7gテキサス、ベイトネコ、CCラウンド系ジグ、3.5~4インチ高比重ワームノーシンカーは余裕でカバーする、まさにショートバーサタイルの名に相応しいロッドだと言える。

個人的には、このロッドをメインとして使う事は少ない。しかし、もし私がトーナメントプロでなければ、このロッド1本を車に積んで週末を気軽に楽しんでいたかもしれない。

最後に試合やロケ、または購入においてロッドを選ぶ時、柔らかい方か硬い方か迷った場合、私は硬い方を迷わず選ぶ。硬いロッドは自分の腕次第で軽いルアーも投げられるし、ラインのスラック操作次第で柔らかいロッド並みに操る事は可能だ。想定外の魚が来た場合でも、全てはロッド性能の限界内での自分の処理能力次第だ。しかし、柔らかいロッドは重すぎるルアーを使うと限界を超えた更に上の所で操作する事になる上、風や波で糸フケが出過ぎた場合、操作的にも感度的にもそのテンション処理能力の限界を超えてしまう。想定外のサイズが来た時も同じだ。あくまで私の個人的見解だが、慣れと力量でカバー出来る自信があれば硬い方を選ぶ、これが私の選択である。参考までに。

これまでリリースされたカレイドは、どれをとっても悩んでしまう程素晴らしいロッドになっていると思う。何より、スーパー4軸武装のいい所は、その違いが「明快に使って解る」と多くのユーザーが語ってくれている事だろう。是非、この詳細解説をよく読んで理解し、貴方にとって最高の1本を手にしてみて欲しい。