2015.10.14 (水)

清水盛三が語る バスマスタークラシック出場権をかけ鬼気迫る追い上げを見せたAOYチャンピオンシップ

2015年9月17~20日にウィスコンシン州スタージョンベイで開催されたバスマスターエリートシリーズ第9戦は、2015年レギュラーシーズン全8戦の年間ランキング上位50名の選手によって争われるAOYチャンピオンシップ。バスマスタークラッシック出場権をかけ、鬼気迫る追い上げを見せた清水盛三がその戦いを振り返ります。

■ 荒れる巨大湖、3つのエリアに絞り込んだプラクティス

AOYチャンピオンシップの舞台となったスタージョンベイは五大湖ミシガン湖の西側にあるグリーンベイ内の東岸北部に位置するベイ(湾)で、ミシガン湖本湖とも直接水路でつながっている。公式プラクティス中の風向きによっては、試合エリアがスタージョンベイ~グリーンベイ側ではなくミシガン本湖側に変更になる可能性があるという不確定要素のあるなかで2日半の公式プラクティスがスタート。

グリーンベイでのトーナメントの経験はあったが、グリーンベイといっても広大なので、北側のエリアは僕にとっては未開の地だった。もちろんスタージョンベイ自体も初めてで、1つの湖のなかの湾といっても日本のそれとは違いとにかく広いし、さらにミシガン湖側までも視野に入れなければならないとなると、あまりにも選択肢が多すぎる。結局予定通りグリーンベイでの開催となったが、さすがに五大湖、毎日荒れるなかでのプラクティスだった。

ターゲットはスモールマウスバスで、練習前は凄く釣れるという噂だったけど、実際僕は1日15ポンドくらいしか釣れていなかったし、他の選手もそんなに釣れていない様子だった。そんななか、なんとか見つけた使えそうなエリアは3箇所。

まずは、スタート地点近くのエリアにある橋脚、リップラップ、グラス等。次に、少し走ったところにあるシャローの岬。そして、勝負場所としてオフショアのディープ。それら3箇所をローテーションして足の速いスモールマウスとのタイミングを合わせ、悪くても1日15ポンドを目標に試合に臨んだ。


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■ DAY-1 エリアは間違っていない、あとはタイミング

試合初日、まずは予定通りスタート地点近くのエリアに入り、ドロップショットでキーパーを1本キャッチ。その後1時間半ほど粘ったものの追加ならず。同エリアでもう1箇所入りたい岬状になったリップラップがあったが、先に他の選手が入っていたため、少し走ってシャローの岬に移動。

到着後すぐに、狙い通りジャークベイトで2ポンドを1本追加。その魚をライブウェルに入れて釣りを再開しようとすると、僕が狙っていた岬の内側にボートが1台入ってきた。そこから1時間以上は流したけど1本も追加できなかった。僕が狙いたいライン上に先程のボートが乗る形にもなっていたので、これ以上粘っても無駄と判断。オフショアのディープを見に行くことに。

そのエリアに到着してみると4艇ほどのボートが浮いている。でも、僕が狙いたい場所とは少しズレていたので、他のボートを避ける形で入った。魚探にはしっかり魚が映っている。しかし……2時間ほど粘ったがノーバイト。

自分の持っているエリア3箇所を一通りまわったところで、再び朝一に釣ったスタート地点へと戻ることに。すると、朝は他の選手がいて入れなかったリップラップが空いており、そこに入ることに。そして、すぐにドロップショットでキーパーをキャッチ。次に朝一のスポットで1本追加。

さらに、速い展開で移動、シャローの岬を狙いに。しかし、先程バッティングした選手がまだ釣っていたので、その岬から少し離れたスポットに入ってみた。そして、ジャークベイトを投げると……3ポンドはありそうなナイスフィッシュがヒット。しかし、スモールマウスバス特有の鋭い突っ込みからいきなりのジャンプでルアーが飛ばされてしまった。

結局この日は5バイト4フィッシュでウェイイン。9ポンドジャストで35位。1本ミスしたことでリミットメイクできず、本当に悔やまれる結果となってしまった。しかし、僕の狙っていたオフショアを釣っていた選手が1位から5位を独占、さらに岬を釣っていた選手も上位に入っていたのでエリアは間違っていない。やはり試合前の予想通り、あとはいかにタイミングを合わせることができるかどうか。


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■ DAY-2 痛恨のミスで切れかかるテンション

ところが、2日目は初日以上にリズムがかみ合わなかった。この日も朝一はスタート地点近くのエリアに。そして、まだみんながスタートしている最中にドロップショットにいきなりの3ポンドオーバー。しかし……急激な突っ込みにまさかのラインブレイク。朝一から、ありえないことがこの一番大事なときに起こってしまうという今年の自分を象徴するような出来事に、切れかかるテンションを保つのに精一杯だった。

そこで、気持ちを入れ替えるために移動。シャローの岬を狙いに行くとやはりそこには昨日と同じ選手が。しかし、僕も前日釣っていたので、その岬の狙いのラインに入った。そしてすぐに、ジャークベイトで1本目を獲ることができた。

しかし、それ以降続かず。オフショアに移動するもノーバイト。また岬に戻り、さらに前日バラしたスポットにも入りと、タイミングを合わせるために自分の持っているエリアに入り直すものの1本も追加することができなかった。時間もすでに12時をまわっており、あとはスタート地点近くのエリアに賭けることに。

そして、そのエリアにある橋脚でようやくバイトが。これはノンキーパーだったが、すぐに同じ場所にドロップショットを入れると再びバイト。今度はキーパー。そしてさらに次のキャストでもまたキーパー。明らかに場所とタイミングが合ってきた。

その次のキャストでもまたしてもバイト。しかし……その魚を抜こうとした瞬間、なんと痛恨のラインブレイク。このバラシをキッカケにバイトがピタッと止まってしまった。あれだけ入れ食い状態だったのに、初日に続きまたしても……

結局この日もリミットメイクならず3本でウェイイン。7ポンド7オンス、40位。正直、クラシック出場は絶望的な状況だった。でも、チャンピオンシップは予選がなく、出場選手50人全員が最終日の3日目に進める試合だったので、最終日に20ポンド以上持って帰ればまだわからない。可能性が1パーセントでも残っている限りやるしかないと気持ちを辛うじて繋ぎとめた。


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■ DAY-3 極限まで研ぎ澄まされた集中力で攻め抜きハイウエイト

最終日は時間配分を考え直して、釣れないエリアは早めに見切り、よりアクティブに攻めまくろうと決心して臨んだ。そしてまずスタート地点近くのエリアで2本。長居せずにシャローの岬、オフショアも見に行ってみたが釣れなかったのですぐに切り上げて、再びスタート地点に。

そこでついに炸裂。橋脚のドロップショットで4ポンドのキッカー。そこから橋脚やリップラップを中心に攻めて、ポツポツと3ポンド半、3ポンド、また3ポンド半という感じでナイスサイズを拾っていった。

狙っている水深は6~7mで、この日の魚は風やカレントに対してリグを入れる角度が合ったときにバイトが出る感じだったので、リグを入れる角度に気を使って慎重に攻めていった。そして狙い通り、その後も順調に、少しずつではあるが入れ替えてウエイトを上げていった。

しかし、ラストの1時間はカレントが止まってしまいアタリも止まってしまった。でも、最後の最後まであきらめずに攻め続け……ラスト5分。スイムベイトにチェンジして3ポンドをキャッチ。入れ替え。

結果17ポンド4オンスというハイウエイトをたたき出すことができ、この試合を29位でフィニッシュ。初日の4本で9ポンド、2日目の3本で7ポンド7オンスに対して、この日は、ほぼノーミスの5本で17ポンド4オンスと集中力が極限まで研ぎ澄まされ、本当に鬼気迫る状態で釣ることができた。


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■ 敗北によって取り戻した本当の夢を胸に新たなるスタートを切る

そして気になる年間ランキングは44位。クラシック出場までは10ポイント足りなかった。その差は、この試合であと4ポンドあればクリアできていた。つまりは、初日か2日目どちらかでもリミットメイクできていれば……という数字。たったの10ポイント、されど10ポイント。やはり初日と2日目のミスが致命的だった。

試合が終わってしばらくは、「あのミスさえなければ」「なぜシーズンを通して、いや、せめてこの試合の初日と2日目だけでも、3日目のあの集中力&気迫でできなかったのか」と考えると本当に悔しくて情けなくて、自分自身に腹が立って、気持ちはどん底だった。

実は試合の次の日から2日間同じ湖で取材撮影があって、その撮影中に釣れた魚を見ながら「この1本が入っていればクラシック行けたのに……」と試合結果を引きずったままの沈んだ辛い精神状態だった。

正直、試合直後は、もう世界最高峰トーナメントへの挑戦を続ける気力が残っていなかった。魚が全く釣れずに焦っていたり、ビッグフィッシュをバラしたりする夢を見てうなされることも何度もあって寝ている間にもストレスを感じて、もうこんなに苦しい思いはしたくないと。

でも取材が終わって、グリーンベイからストレージがあるスプリングフィールドまで1200kmのドライブ中ずっとひとりで、だからあらゆることを考えに考えて……すべてを出しつくした後、心の底から湧き上がってきたのは「今回はクラシックに行けなくて良かったんだ」という思いだった。それは、決して自暴自棄になっているわけではなく、冷静に自分を見つめ直した結果出てきた前向きな気持ちの表れだった。

自分はいったい何のために世界最高峰のトーナメントにチャレンジしているのか。世界チャンピオンになるためではなかったのか。ここ数年はクラシックを意識しすぎて、それが自分の最終目標になってしまっていたのかもしれない。クラシックに出るために、無難にまとめて年間ランキング上位を目指すのではなく、一番上を目指す。それが自分の本当の目標ではなかったのか。

いつしか、自分では精一杯やっているつもりでもどこかで妥協してしまっていたのかもしれない。アメリカでのトーナメント経験もソコソコ積んで、まあこんなものかとなんでもほどほどにこなせてしまう。厳しい見方をすれば惰性でやっている感があったのかもしれない。

こんな状態では、たとえクラシックに行ったとしても結果は目に見えている。だから、もっともっと進化するためには、そして世界の頂点に立つためには今回負けて良かった。これは負け惜しみとか無理やり自分に言い聞かせているとかじゃなく、本当に心の底からそう思うし、中途半端な気持ちでクラシック出場権を獲得してしまったら、ハングリー精神を失い確実にダメになっていたと思う。

今シーズンを振り返り客観的に自己分析すると、気持ちの上では自分は精一杯やっているつもりだったけど、この試合の3日目のような鬼気迫る精神状態と比べると、他の日は全然あまかったと今ならわかる。やれることはまだまだあった。こんな状態ではやめられない。結果はコントロールできないが、気持ちはコントロールできるのだから、難しいけどシーズンを通して全戦全日、この3日目のような気持ちで釣りができれば、たとえどんな結果になろうと悔いはない。本当に大事なのはこの気持ち。

自分自身にとってバスフィッシングとは、そしてトーナメントとは……今回の敗北のおかげで、忘れかけていた心の底にある本当の思いを取り戻すことができた。結果に納得がいかないのではなく自分自身の気持ちに納得がいかなかったのだと気付くこともできた。

そして、ある意味消えかけていたモチベーションの火を再び灯してくれた。だから、今は一刻も早く試合がしたいと思っている。それも目先の結果を考えて無難にこなすのではなく、たとえ一歩ずつでも前進するために全身全霊を傾けてチャレンジしたい。世界の頂点に立つためにね。

2015シーズンが終わりスプリングフィールドへと戻るドライブは旅の終わりではなく、次なるステージに進むための新たな旅の始まりとなる僕にとっては一生忘れてはならない大切な日になった。

今シーズンもたくさんのご声援、本当にありがとうございました。もう気持ちは前を向いて、そして本当の夢に向かって走り出しています。来シーズンはひとまわりもふたまわりも、いやそれ以上大きな男になります。決してあきらめない気持ちを持ち続けて!

■タックルデータ
ロッド:ヘラクレス HCSS-611M パワーシェイカー611M
ライン:PE 12lb
リーダー:フロロカーボン 7lb
ルアー:4インチワーム 1/4、3/8ozドロップショットリグ

ロッド:ヘラクレス HCSC-64M マニピュレーター
ライン:フロロカーボン 10lb
ルアー:ジャークベイト

ロッド:ヘラクレス HCSC-73MG レパード
ライン:フロロカーボン 14lb
ルアー:スイムベイト

■関連サイト:B.A.S.S. Bassmaster

清水盛三オフィシャルサイト「NEVER GIVE UP」
http://www.morizoshimizu.jp/

清水盛三オフィシャルブログ
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清水盛三オフィシャルFacebook
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