2015.03.19 (木)

清水盛三が語る 2015バスマスタークラシックを象徴する極限状態で掛けたスーパービッグバス

2015年2月20~22日アメリカ・サウスキャロライナ州レイクハートウェルで行われたバスマスタークラシック。強烈な冬型の寒気団に襲われ、気温マイナス10度以下というクラッシック史上最悪ともいえるコンディション下で開催された戦いに隠されたそのドラマとは。清水盛三が振り返ります。

バスマスタークラシック2日目。レイクハートウェル、中流域のとあるボートドックで掛けたスーパービッグフィッシュ。時間はまだ朝の9時頃。残り時間もまだたっぷりあったこの時点で、今回の僕のクラシックが終わっていたのかもしれない。

朝一に4ポンド半のビッグフィッシュを獲って、幸先の良いスタートを切った2日目。この日の目標ウエイトは20ポンド。そして、狙い通りに掛けた2本目は1本目を上回るサイズ。ボートドックから引き出し余裕でボート際まで寄せてくる際に見えたスーパービッグサイズ。その巨大な黒い塊をつかもうと手を伸ばしたそのとき、大きな口をめいっぱい開けた瞬間にジグが外れて……

この時の映像(The Hit)を見てくれた人にはわかってもらえると思うけど、試合後にカメラマンから「もうあと少し体が前に出ていたら水中に転落するところだったので、撮影している場合じゃない、カメラを捨ててでも盛三さんをつかまなきゃヤバイって思いましたよ」と言われた。自分でも覚えていないけど、何としてでも獲りたい一心で気持ちが前に行っていたからね。

思い出したくないけど、今回のクラシックを象徴するようなシーン(下の動画)だった。


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■ DAY-1 目標ウエイト=15ポンドオーバーも超巨大な寒気団に狂わされた歯車

今年のクラシックが開催されたレイクハートウェルは、以前バスマスタークラシックが開催されこともあるしFLWのトーナメントも何回か開催されていて、アメリカのトーナメントアングラーには比較的馴染みのある湖。僕にとっては、今まで全く釣りをしたこともない初めての湖だったけど日本での仕事もあったし、プリプラクティスに使えたのは全く初めての湖を見るには短すぎる、昨年12月のたったの1週間。

レイクハートウェルはアメリカの他のトーナメントレイクと比べると湖自体はそんなに大きくないけど、3本の大きなアームがあって、ワンドも無数にある。あとは、ボートドック、オフショアのハンプやブラッシュパイル、そして見えないスタンディングティンバーが無数にあるといった感じで、釣りをする場所はありすぎるぐらいいっぱいあった。

それら全部を1週間で見てまわるのはとても無理なので、湖の全体像をつかむために、以前試合で釣りをしたことがある、クラークヒルやウエストポイントというハートウェルの近くにある湖での経験を軸として、この水系のクセみたいなものを当てはめながら探していった。そして、2か月後の公式プラクティス~本戦のときに、どう魚が動いているかというところまでは頭の中でイメージできていた。

さらに直前の公式プラクティスでは、気温、水温、水色、水位なんかを加味してエリアや釣り方を絞り込むことができた。まずは、ドロップショットやフットボールジグでオフショアの7~13m位のハンプやブラッシュパイル、ティンバー、あるいはバスを直接魚探で見て釣る釣り方。あと、それより少し浅いレンジの5~6mのブレイクやちょっとしたグラスをディープクランクで釣る釣り方。それと、全体的にクリアな水色のレイクのなか、少し水に色がついている上流バンクでのシャロークランキング。そして最後に、ボートドックでのラバージグのピッチング。

ところが、公式練習から試合にかけては超巨大な寒波が来て、試合当日は気温もマイナス15度とかまで下がって。ボートも凍って正直釣りどころではない感じだし、15分もボートで走ったら気を失いそうになるほど過酷で危険ななかでの釣りだった。そんななかでは、僕がメインにしようと考えていたどの釣り方でも数は釣れないのはわかっていた。でも、めったに来ないけど来たらデカイというのもわかっていた。

クラシックは一発勝負だから小さいので揃えても意味がないし、これらの釣りで勝負できると思っていた。元々ここハートウェルはガンターズビルみたいにそんなにデカいのが釣れる湖ではないし、毎日15ポンド持って帰れば優勝に絡めると計算していた。さらに、僕のパターンなら20ポンドも狙えるという期待もあった。

特に試合初日の朝はあまりにも寒すぎて市から待機指示が出て、多くの選手のボートが凍っていてランチングにも時間が掛かって……結局2時間遅れのスタートになったんだけど、今になって冷静に自己分析すると、この時点で歯車が狂いだしていたんだと思う。

もともとたくさん釣れないのもわかっていたし、しかもこの寒さなんで、かなりスローに釣らないとダメなのもわかっていた。さらには、初日だから、湖の状況を把握するのに練習で見つけた中でもできるだけ多くのエリアを見たいという思いもあって、釣りができる時間が短くなってあせってしまったんだと思う。自分では気付かないうちに動作が速く雑になっていたんだろうね。

さらに、マイナス10度という気温がキャストのたびにガイドを凍らせるし、エレクトリックモーターを下ろしても、ロックピンが凍ってマウントにロックされずに、踏むたびにペラが「パラパラパラ」と空中に飛び出してしまったり。あと、コックピット側のGPSが朝の2時間で動かなるといった、オフショアの釣りでは致命的なトラブルがあったりと、寒くなるのはわかっていたけど、ここまで寒くなるか?というある意味、未知の世界での釣りだった。

それとエリア選択に関してももっと冷静な判断ができたはず。僕の狙っていたエリアは公式練習が始まってから試合までに水温が5度も下がってしまった。少しでも水温が高いところをと思って絞り込んできたけど、さすがに特にシャローで1週間のうちに5度も下がったらきつい。

結果としては、元から水温が低い場所もマイエリアとして持っておくべきだったかなと。コールドフロントが来ても、元々水温が低ければさらに低下しにくいし、元々低いところにいるバスにとってはそれが普通だからね。いろいろなことが重なって精神的に追い詰められていたんだと思う。

で、結局この日ウェイインした1匹を釣ったのも終了直前の2時過ぎだった。しかも狙っていたのと全然違う1ポンドちょっとの魚。12mのドロップショットでなんとか絞り出した。プラクティスのときは、ハンプの上にグッドサイズが入ってきていて、シナジー・スーパーディトネーター(プロト)+ リアクションフットボール3/4ozでかなりのバイトを確認できた自信エリアだったんやけど、この日はハンプの上に上がってきてなかったので、もう少し深いところを狙おうと思って釣れた1匹だった。


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■ 朝一ビッグバスで好スタートのDAY-2 2本目はそれを上回るビッグサイズが・・・

こうなったら2日目は20ポンドを超えないと3日目に進めない。でも、初日のプランを変えることは考えなかった。僕が釣っているエリアにはデカい魚がいるという自信はあったからね。

で、朝スタート後、モーニングバイト狙いのディープクランクから入って5~6mレンジをサッと見て、すぐにその沖のもっと深いレンジ狙いに切り替えた。12mラインにあるブラッシュパイルに狙いを定め、魚探を見ながら慎重にアプローチ。スピニングに持ち替えて4インチストレートワーム+3/8ozドロップショットをキャスト。そしてその1投目……

狙い通り4ポンド半のビッグフィッシュ! パワースピン611Mの吸い込み性能とフッキングパワーを活かして、低水温かつディープという条件でも確実に吸わせて掛けて獲ることができた。狙いを変えて1投目だったので、「これは炸裂するんちゃうか」と。

その後このエリアで、ブラッシュパイルの他にスタンディングティンバーを釣りながらも、魚探にバスが映ったらそれをダイレクトに狙う感じで1時間ほど費やしたけど続かず。元々そんなに釣れる状況じゃなかったから集中して釣り続けないとダメというのはわかっていたけど、そうなるとやっぱりシャローもボートドックも気になるし……いい魚を釣っているにもかかわらず、精神的には追い詰められていてあせりがあったね。

でもこうなれば、「とにかく勝負に!」と上流に向けて移動しながらボートドックを撃っていこうと移動を決意。そして、ボートドックを撃ち始めて比較的早い段階でついに……

狙い通りのスーパービッグがきた。シナジー・スーパートライアンフ(プロト)でI.R.ジグ5/16oz(プロト)をボートドックに撃ち込み、繊細に丁寧に誘って。微妙なアタリをしっかり捉えて、ガッチリとフッキングも決まって。そしてドックから余裕で引き出して、かつ慎重にボート際まで寄せてきた。

見えたバスは6ポンドクラスのスーパービッグサイズ。他の湖なら10ポンドの価値があると言ってもいいほどの巨大なサイズ。そして、そのバスをつかもうと手を伸ばした瞬間……

ジグは丸呑みされていたんで、どこに刺さっているかは確認できなかったけど、自分では完璧にフッキングも決まっていたと思うし、やりとりも問題なかったと思うけど、やっぱりあれだけ寒かったので体が思い通りに動いていなかったんだろうね。フッキングからのすべての動作が微妙に遅れていたのか、とにかくすべての流れが悪い方に進んでいて、ついにはこのバラシにつながってしまった感じかな。

あまりの悔しさに放心状態で、しばらくはデッキから立ち上がることができなかった。トーナメントは時間との戦い、1秒でも早く次のキャストをすべきだというのはわかっているけど、切れてしまった緊張感を取り戻すまでにかなりの時間が必要だった。でもその時点でまだ9時頃だったし、デカい魚が来るであろう釣りをやり通そうと。

とはいえやっぱり完全に流れが途切れてしまっていたね。その後追加できずに、この日も1本のウェイインに終わってしまった。あの1匹を獲っていれば明らかに流れは変わっていたし、プラクティスからの読み通り、4ポンド以上の魚を5本揃えてトータル20ポンドという数字も不可能ではなかっただけにホンマに悔しいよ。

世界最高峰のクラッシックという舞台に出るだけでも評価してもらえる物凄いことなんだけど、優勝者以外は全く評価されないのもまたクラシック。レギュラーシーズン戦のようにポイントを狙った試合をしていれば全く違う結果になったかもしれないけど、それでは出る意味がない。そういう意味で今回、基本的な戦略としては間違いではなかったと思うし、紙一重の試合だったと思う。でも、その紙は本当に分厚かったなぁというのが本音。

でもこの経験を通じてメンタル的にも成長できたと思うし、もちろん悔しかったけど、今まで体験したことがない極限状態での釣りだったので、スーパートライアンフの実戦テストとしてはこれ以上ないものとなった。発売まではまだ少し時間があるんで最後の最後までテストを繰り返して、もっと突き詰めていく。それが僕のものづくりへのこだわりだし、こんな実戦テストを経てつくり上げたタックルは絶対に信頼できるものになる。

とにかくこの悔しさをバネに、また来年もあのクラシックの舞台に立てるように今シーズン1戦1戦を集中して戦っていくつもりなので、皆さん期待して見ていてくださいね!

 

■タックルデータ
ロッド:ヘラクレス HCSS-611M パワーシェイカー611M
ライン:PE 16lb + フロロカーボン 8lb
ルアー:4インチストレートワーム 3/8ozドロップショットリグ

ロッド:シナジー CSYC-72MH スーパートライアンフ(プロト)
ライン:フロロカーボン 14lb
ルアー:I.R.ジグ 5/16oz(プロト)

ロッド:シナジー CSYC-71H スーパーディトネーター(プロト)
ライン:フロロカーボン 16lb
ルアー:リアクションフットボール 3/4oz

■2015バスマスタークラシック関連サイト:B.A.S.S.Bassmaster


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