清水盛三が語る バスマスターエリート第6戦&第7戦
緻密なトップウォーター戦略で優勝争いを演じたカユーガ戦(後編)
2016年6月23~26日にニューヨーク州カユーガレイクで開催されたバスマスターエリートシリーズ第7戦。初日23ポンド6オンスというハイウエイトを持ち込み、首位スタートを切った清水盛三。
自身がつくり上げた最強の武器の1つ、シャワーブローズによる緻密なトップウォーター戦略で優勝を掴んだかに思えた最終日決勝戦……その緊迫の試合展開を清水が語ります。
■ DAY-2&DAY-3 無風のタフコンディションでジャックハンマーが活躍
初日1位という結果以上に、自分の思い描く通りの試合運びができたことがなにより嬉しかった。プラクティスでは十分釣り込めていなかったので自信はなかったが、見つけていたエリアは間違っていないと確信。初日1日釣り込んで釣り方も見えた。自分の感覚を信じて、それも自分の得意なスタイルで戦って獲ったトップウエイトというのも大きい。
ただ1つ心配だったのは、2日目は風が吹かないという予報だったこと。無風のクリアウォーターでパワーフィッシングがどこまで通用するのか……それともサイトフィッシングなのか……
2日目。朝一は初日同様岬周りでジャックハンマーからスタート。そして狙い通り、短時間のうちに3本キャッチ。その後バイトが遠のいたので、シャワーブローズにチェンジ。ここでもすぐに出たがフックアップせず。少しだけ嫌な予感が。
その後、日が昇り始め、初日は風が吹き出した時間になっても、予報通りこの日は風が吹かない。後が続かず、「やはり初日とは何か少し違う」という感覚が強くなる。そこでスピニングタックルを持ち、とりあえずのキーパーを1本追加。しかし、この釣りではサイズは望めそうもない。
「サイズアップをはかるにはサイトフィッシングなのか?」と水中を覗き込んで探してみると……いた!そして、狙い始めてすぐに口を使わせることに成功。これで早くもリミットメイク。約3ポンド半のナイスサイズではあったが、前日と違い4ポンドオーバーが1本も入っていない。しばらくサイトで流してみたものの入れ替えできそうなサイズには巡り合えなかった。
そこで、前日6ポンドオーバーを獲っているグラスエッジのエリアをチェックに行くことに。到着してみると、予報通り風は全くない。しかし、前日風が吹いた影響かほんの少し濁りが残っていたので、前日同様ジャックハンマーに賭けることに。すると、4ポンドオーバーは出ないものの反応が良く、コツコツと入れ替えていくことができた。
そして、ついにジャックハンマーで4ポンドフィッシュを獲って最後の入れ替え。数はトータル20本ほど釣ったものの、やはり風がないのはきつかった。すべてをビッグフィッシュで揃えることができず、この日のウエイトは16ポンド10オンス。
しかし、初日の貯金があったおかげで3位に踏みとどまった。しかも、トップとのウエイト差はたったの8オンス。まだまだ優勝を狙える位置につけている。
3日目も2日目と同様、風が吹かないという予報だった。さらに悪いことに、前日風が吹かなかったためか、この日は僕のメインエリアの濁りがとれてクリアアップしていた。
晴天無風のクリアウォーター。ムービングベイトで獲るにはなにかキッカケが欲しい。必然的に、この日はスピニングタックルを手にする時間も多くなり、サイトフィッシングでも1本入れた。
しかし、結果的にはウェイインした魚のうち、4本はジャックハンマーで釣ったものだった。そういう意味では2日目と似たような展開だと言えるが、数は前日の半分以下しか釣れなかった。
明らかにタフになっていたが、なんとか絞り出したウエイトは14ポンド7オンスでトータル7位。決勝進出が決定した。
■ DAY-4決勝 風の中のトップウォーター戦略 シャワーブローズにビッグフィッシュが襲い掛かる……
トップとの差は4ポンド弱。2日目、3日目にウェイインしたバスはそれぞれ1本を除きジャックハンマーだったことを考えると、自分のパターンはまだ機能している。「ここまで来れば優勝のみを狙ってストロングスタイルで勝負!」「初日のように20ポンドを超えることができれば、絶対に逆転優勝できる!」と覚悟を決めた。
そして、最終日はその初日同様、風が吹くという予報が出ていた……
運命の決勝がスタート。予報通り朝から風が吹いている。しかし、結果の良かった初日のような北からの風ではなく、南からの風。でもないよりはマシと考え、朝一は岬のエリアに入った。そして、いつものようにジャックハンマーからスタート。いよいよ最後の勝負が始まった。
するとすぐにバイト。ところが、上がってきたのはバスではなくパイク。「今までパイクなんて釣っていないのに、なにかおかしい」と感じながらもジャックハンマーを投げ続けると、2本目、3本目と立て続けにパイクが来た。明らかに状況が変わっていると確信し、早々ともう1つのメインエリアであるグラスエッジのエリアに移動した。
そして、そこでもジャックハンマーを投げ続ける。しかしバイトが遠い。ここでもなにかが違うと感じながらも投げ続けていると、風は吹いているものの風向きのせいなのか、前日よりもさらに水がクリーンアップされていることに気がついた。
そこで、バスにルアーを見切らせないように、ジャックハンマーを表層付近で高速巻きしてみると……狙いが当たり3ポンド半をキャッチ。
その後もしばらく高速巻きを続けたが、出ない。「魚は絶対にいるはず」「風も吹いているので口を使わせる手段はあるはず」そこで、クリアウォーターでより見切られにくいトップウォーター、しかも風の中でもしっかりアピールできるシャワーブローズに絶対的な自信を持ってチェンジ。
そして、よりバスとの間合いを取るためロングディスタンスで狙う。さらに、風のなかでアピールするため、かつバスに見切られないよう激しく連続ドッグウォークを続ける。その5投目……
バコッ!と激しい水しぶきをあげ、巨大なバスがシャワーブローズに襲い掛かった。明らかに5ポンドは超えている。しかし、フックアップしない。そこであきらめずにシャワーブローズを動かし続ける。すると、もう一度出た。しかし、これもノラず。すかさずスピニングでフォローを入れたが反応なし。
完全にキッカーとなりえる、結果を大きく左右するビッグフィッシュを獲ることができなかった。明らかに気持ちが動揺しているのがわかる。でも、初日同様ルアーを変えてすぐに答えが返ってきたということは、やっていることは間違っていない。「まだまだこれから!」と気を取り直してシャワーブローズを激しくドッグウォークさせ続ける。
そしてまたすぐに4ポンドクラスのビッグフィッシュが水面を割った。しかし……一瞬ロッドティップに重さを感じたがすぐに外れてしまった。さらにその後、またしても4ポンドクラスが出たものの……ここでストレスレベルが全開に。
■ あの1本が……紙一重の世界のなかでの戦い
風があるなかでのトップウォーター戦略は、風がニセモノであるルアーをカモフラージュしてくれるのでバスを騙しやすいという利点があるものの、その見にくさゆえのミスバイトと隣り合わせの、ある意味リスキーな戦略でもある。
だから、一般的にこの日のように風がある状況でトップウォーターという選択肢は考えにくいと思う。でも、僕にはこんなときのためにつくり上げたシャワーブローズがある。そして、利点を活かし欠点を補うためのタックルセッティング、ルアーの動かし方、ボートの流し方等、自分のなかで全てが組み上げられていた。
その1つが、対クリアウォーターのロングキャスト、ロングディスタンスでのメリハリのあるアクションのための、そのうえ風でラインスラックがたくさん出ている状態でのフッキング対策として、7フィートというロングレングスながら操作性に優れるシナジーのプロトロッド(マルチローラー)とPEラインという組み合わせだった。
特にシナジーのプロトロッド(マルチローラー)は今まで練習や試合で酷使してきたためガイドが抜けてしまい、手持ちが1本しかなかったため、応急処置として自分でPEラインを巻いてガイドを固定して使っていたというほど。この状況を攻略するためには絶対必要なロッドだった。
様々な条件が複雑に絡み合い、ほんのわずかな違いが天国か地獄かという大きな差へとつながる本当に紙一重の世界のなかでの戦い。そんな修羅場をくぐり抜け、生まれてくる信頼できる道具達を武器に戦っているのだから、ここで自分が腐るわけにはいかない。
かなりストレスの掛かる展開ではあったが、気持ちを切り替えてシャワーブローズを投げ続ける。そしてついに……3ポンド半をキャッチ。すぐに2ポンド、さらに2ポンドと3本立て続けにキャッチ。少しバスとのリズムも噛み合ってきた。サイズダウンが少し気になったがリミットメイクまであと1本。しかし、「まだまだこれから!」と気持ちも盛り上がってきた矢先に、さらなる予期せぬ出来事が。
この日は日曜日。お昼近くになると僕が釣っている横をプレジャーボートがバンバン走り出した。風だけならまだしも、ボートの引き波で水面がかき回され、魚が沈み表層まで出てこない。しかし、プレジャーボートのように、自分では絶対コントロールすることができないことにイライラしている暇はない。この状況を受け入れて、最善の手を打つだけ。
そこで、潔くシャワーブローズのタックルを置き、ジャックハンマーにチェンジした。そして、ジャックハンマーを信じて投げ続け……1本キャッチ。ついにリミットメイク達成。
しかし、サイズが上がらない。そこで、状況が本当に変わってしまったのか再確認するために、朝一の岬のエリアに移動。そこでもジャックハンマーを投げ続ける。しかし、朝のパイク以降は沈黙。完全にこのエリアは見切ることに。「こうなったら最後はグラスエッジのエリアでやり切ろう」と再び移動を決意。
強風に加え、相変わらずプレジャーボートの引き波の影響があったので、いくらシャワーブローズとはいえトップウォーターは厳しいと判断。ジャックハンマーのセットされたタックルを手にとり、終了時間ギリギリまで投げ続けた。そして……2ポンド半のナイスキーパーを獲って入れ替えに成功。
この日は状況的にビッグフィッシュを獲るならトップウォーターだが、水面がかき混ぜられて釣りにならない。かといってレンジを落とすとサイズが上がらないという苦しい状況だった。結局このバスが最後の魚となり、14ポンド4オンスでウェイイン。最終結果は9位だった。
優勝はケビンバンダムだったが、その差は約3ポンド。前回決勝に残ったトレドベンド戦もケビンバンダムが優勝しているが、あのときは大差をつけられており現実的に優勝に届くウエイトではなかった。でも今回は、トップとの差を考えると逆転優勝の可能性は十分あり得る数字だったし試合運びだったと思う。
だからこそ本当に悔しいし、みんながフェイスブックに残してくれた応援コメントを試合後にもう一度じっくりと読み返していたら、これだけ多くのファンが期待してくれていたのに……と申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
でも、今こうして冷静に振り返ってみると、試合中は完全にゾーンに入っていて、ここ数年で最高のパフォーマンスを発揮できたと思う。
初日、ビッグフィッシュ賞となる6ポンドオーバーと23ポンド超のビッグウエイトを叩き出したジャックハンマーとシャワーブローズ。2日目、3日目の無風状態で耐えたサイトフィッシングとそんななかでも活躍してくれたジャックハンマー。そして最終日決勝、風のなかでのトップウォーター戦略。
狙い通りシャワーブローズでビッグフィッシュを出したところまでは完璧な試合展開で、完全に勝ちパターンをつかんでいた。まさにInto The Zone。
あとは、シャワーブローズで出した魚が1本でも2本でも入っていれば完全に優勝ウエイトを超えていた。本当に紙一重のところで掴み損ねた優勝。でもこれがトーナメント。とにかくあきらめずに進み続けていればいつかまたチャンスはめぐってくる。そのチャンスを確実にものにするためにも全力で走り続けるしかない。
この試合の直後、早速次のポトマックリバー戦のプリプラクティスにも行って来た。順調に魚も探せているし、今凄く良い状態にいることは間違いないので、残りの試合も全力で戦い抜きます!
■清水盛三が語る バスマスターエリート第6戦&第7戦
緻密なトップウォーター戦略で優勝争いを演じたカユーガ戦(前編)はコチラ
■第6戦タックルデータ
ロッド:シナジー CSCY-71H スーパーディトネーター
ライン:フロロカーボン 22lb
ルアー:キャスティングジグ 1/2oz
■第7戦タックルデータ
ロッド:ヘラクレス HCSC-73HG レパード
ライン:フロロカーボン 16lb
ルアー:ジャックハンマー(プロト) 3/8oz
ロッド:シナジー CSYC-70M+ マルチローラー(プロト)
ライン:PE 25lb
ルアー:シャワーブローズ
■関連サイト:B.A.S.S. Bassmaster
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