清水盛三が語る 優勝だけに狙いを定めて挑んだバスマスターエリートシリーズ第6戦・バスフェスタ
2014年6月11~15日にテネシー州チカマウガレイクで行われたバスマスターエリートシリーズ第6戦・バスフェスタ。レギュラー戦とは異なるフォーマットに戸惑い、厳しい展開を余儀なくされた3日間の戦いを清水盛三が振り返ります。
■ シャローを切り捨てディープに絞ったプラクティス
5月18日にダーダネル戦が終わってからすぐに、アメリカのアウトドア・チャンネルのテレビ番組メジャーリーグフィッシングのトーナメントに出場するために移動。2日間メジャーリーグのトーナメントを戦ってまたすぐに、8月にエリート第7戦が行われるデラウェアリバーに向けて1,700km以上の大移動。
そこで2日間プリプラクティスをして、さらにその次のエリート第8戦開催の地、カユーガレイクに向けてまたまた移動。そこでも2日間だけプリプラクティスをして、今回の第6戦の舞台であるテネシー州のチカマウガレイクに向かい1,300km以上のロングドライブ。
で6月6日、やっとのことでたどり着いたチカマウガなんやけど、実はこの湖にはプリプラクティスには来ていなかった。この試合はバスマスターエリートシリーズの下部組織のオープン戦のシリーズ上位者が参加できるオープントーナメントで、エリートシリーズとはポイント計算法が全く違い、出場さえすれば順位に関係なく一律で全員に100ポイント付くというシステムだったからね。
だから、試合結果がポイントに反映されず、使える時間も限られているというなかで年間成績を考えると、チカマウガで練習するよりはその時間で残りの公式戦2試合が行われるデラウェアリバーとカユーガレイクを見ておいた方が良いと考えた。
そんなわけで、チカマウガでは公式練習のときが初めての釣りだった。それに加えて、ロングドライブの連続による体調面や、結果が年間ポイントに反映されないというメンタル面からも、この試合にはベストな状態で臨めたとはいいがたかったが、シリーズとしての長いスパンで考えると、これが今の僕にできるベストな選択だと信じてやるしかなかった。
とはいえ、この試合でも優勝すればクラシックの出場権は獲得できる。そうなると必然的に、手堅くポイントを稼ぐ釣りじゃなく優勝狙いの勝負の釣りに出るしかない。
チカマウガは、テネシーリバー水系のいわゆるローランドリザーバーと言われる低地にあるダム湖で、時期的にはポストスポーンから回復してサマーパターンに移行していくタイミングだった。その状況で優勝できるだけのビッグウエイトを出そうと思えば、シャローよりディープがメインになる。ということで、公式練習ではシャローを切り捨ててディープを探しに行った。
ここチカマウガでのディープの釣りは、オフショアの地形変化を釣るというのがメインになるんやけど、この湖は最上流から最下流までずっとチャネルが入っていて、例えるなら、琵琶湖全体がディープホールって感じ。さらに、チャネルに絡んでレッジがあったりハンプがあったりと地形変化は無限。だから全部見ようと思えば余裕で10年は掛かる(笑)
■ シャローのポテンシャルに気付くも……
ただ、これでも普段試合をしている湖からすれば小さい規模の湖と言えるし、3日間の練習で季節的にココと思えるエリアを何箇所かピックアップした。でも、さすがに世界最強のアングラー達の集まりなんで、試合ではグッドスポットには人が集中していた。
しかも、今回はオープンから出場選手がプラス33名ほどいたんで、余計にそんな感じで、ここはアメリカか?ってぐらいの船団で、隣のボートにロッドが当たるぐらいの距離で釣りをしているように見えた。
僕の場合は、誰が見ても良いと思うようないわゆる大場所じゃなく、他の選手に目をつけられにくそうなエリアを探していた。みんなと同じ行動をとっても優勝できないからね。とは言っても、裏をかくほど大きく外すのではなく、あくまでディープのなかで少し外すという感じでね。
で、試合初日のファーストエリアでは1人とバッティングしただけ。しかも、いきなり1投目で3ポンドオーバーがヘビキャロにきた。今までの経験上、こんな感じのときは1箇所で炸裂することが多いんでかなり期待してやり続けたんやけど……そこからは何にも釣れず。で、移動。
そこからもディープを何箇所かまわって、ライブウェルにはヘビキャロとリアクションフットボールで獲った3本が入っていた。でも、サイズはイマイチやったし、全然連発もしない。あまりにも釣れないので、全然違うことをしないとダメか?と考えているとシャローが気になり出して……
1時をまわった頃にシャロー行きを決断。その移動が功を奏して、ビッグシャロークランクでポンポンと4本釣って入れ替えにも成功したが、ウエイトが伸びず初日は75位からのスタート。
この日釣りをしてみて、みんなディープに集中しているしシャローが手薄になって簡単に喰ってくることがわかった。しかも、でっかいバスがボイルするシーンもあって。そいつらをよう釣らんかったけど、ディープと違いシャローでは実際魚を目で見てサイズまで確認できてるんで、もしかしてシャローの方がデカいのが獲れるのか?でも上位の顔ぶれを見るとディープで釣ってきている選手が多いし……と少し迷いが出始めた。
2日目、この日も朝一は初日と同じディープのエリアに走った。で、すぐに1本獲った。でも、前日同様この日もその1本だけ。このエリアにはタイミングを変えて何回か入り直したけど、その後全く釣れなかった。ホンマは地合が来るのを信じて、ここで1日粘ってないとダメだったかもしれないね。ただ、入り直して釣れないと、エリアに対するコンフィデンスがどんどんなくなっていくんで、やり切れなかった。
一方、期待のシャローも全然ダメ。やっぱり練習でシャローをきっちりやり込んでなかったから追いきれなくて、ホンマにどっちつかずになってしまった。結局その後1本も獲ることができず。最初から狙いすぎて極端な戦略をとってしまったけど、レギュラートーナメントのような感覚で、いろんな可能性を頭に置いてやった方が優勝には近づけたかもしれないね。
普段より多い参加人数のなかで人が集中することもわかっていたので、それを避けようと考えてエリアをピックアップしていたんだけど、どうせならもっと避けて最初からシャローも見ておくべきだったかなと。初日の後半でシャローのポテンシャルの高さには気づいたけど、練習で広く見れてなかったので2日目は対応しきれなかった。で、結果は全然ダメ。
■ 初めての湖でマップだけを頼りにエリアを絞り込む
ただ、このオープン戦はさらに変則的で、予選を通過できなかった場合すぐ下のニッカジャックレイクという湖で次の日に1日試合をして、上位10名がチカマウガの準決勝に進めるというフォーマットだった。でも、このニッカジャックレイクは1回も釣りをしたことがない全く初めての湖で、いかに短時間でクォリティーフィッシュを見つけることができるかが勝負だった。
で、チカマウガ2日目が終わった後、マップでエリアをチェック。やはり時期的に基本はディープ、ただしこの2日間のようなこともあるので、今回はシャローの可能性も捨てずにエリアを選定。そしてまずは、最下流にあるシャローフラットに目をつけた。さらにその近くで良さそうなディープに何箇所か目星をつけて試合に臨んだ。
そして試合の朝、地図でチェックしていた最下流のシャローエリアに向けて一気に走った。ただ、スタート地点が最上流にあったので狙いのエリアまではかなり遠く、実際1時間10分掛かった。全く初めての湖で、しかもマップからの情報だけでこの距離を走るのはまあまあ勇気がいる。でも、勝負が掛かっているし、自分のエリア選択眼を信じて走った。
そして、狙い通りモーニングバイトをビッグシャロークランクベイトでとり、まずは1本目。しかし、後が続かず。そこで次の狙いのディープに入った。で、そのディープが当たった。釣り方は今はまだ詳しく言えないけど、新しいテクニックを試したところ、それが当たった。そこで釣り続けてかなりの数を釣ることができた。そして、最後に4ポンド弱がきて……
ホンマはもう帰らないといけない時間だったけど、その時点で持っていたウエイトでは準決勝には進めそうもなく、あと1本入れば、という感じだった。ディープの釣りは連発があるんで、ここは勝負するしかないと考えてラストもう1投。そのキャストにまた同じくらいのナイスサイズがきたんやけど……木に巻かれて万事休す。
さすがにもう時間がないのですぐに釣りをやめて戻ったんやけど、帰りは下流から上流に向けて走らないといけなかったので微妙ながらもカレントがあって、その影響で行きよりも時間が掛かってしまった。で、人生で初めての帰着遅れで、5ポンドマイナスのペナルティを受けてしまった。最後の魚が獲れていれば準決勝に行けてたかもしれないけど、どっちみちあのままでは何位になっても一緒なんでギャンブルした。
予選を通過できなかったけど、新しいテクニックの威力も体感できたし将来にはつながったかな。フロリダでの第2戦のときもそうだったように、次に同じようなシーンに出くわせば、このテクニックでもっと釣ってくる自信はあるよ。それについては、また機会があればお話しするんでもう少し秘密にさせてくださいね。
ただ、新しいテクニックがどうこうよりも、全く初めて釣りをするフィールドで情報もないなか、しかも短時間で良いエリアにたどり着けたということの方が、僕自身としては良かったかなと思う。
「バスを探す」というのがバスフィッシングで最も大切なプロセスであって、情報に惑わされず自分の力で、マップを頼りにエリアを絞り、フィールドでその瞬間を感じながら魚を追いかけていくというのが、僕が思う本当のバスフィッシングのおもしろさ。
だから、日本での取材でも、そのとき釣れているからという情報で場所を選んだりしないし、メジャーリーグフィッシングにいたっては、湖に到着するまでどこで釣りをするのかさえ教えてもらえないなかで釣らないといけないから、厳しいけどやりがいはある。
今回のチカマウガとニッカジャックという2つの湖で釣りができたことも、ホンマに真剣に3日間やったからこそ学んだことがたくさんあるし、自分の釣りを進化させてくれたと思う。他のエリートの選手達も年々レベルアップしているけど、その世界最強アングラー達との戦いを通じて、僕自身も少しずつでも成長していければうれしいね。
ロッド:タクティクス TCSC-70X ディトネーター
ライン:フロロカーボン16lb
ルアー:リアクションフットボール 3/4oz+ツインテールワーム
ロッド:ヘラクレス(プロト)
ライン:フロロカーボン22lb
ルアー:4.8インチクローワーム 1ozヘビーキャロライナリグ リーダー20lb
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