2016.10.14 (金)

清水盛三が語る 状況変化激しい夏のリバーフィールドに挑んだバスマスターエリート第8戦&第9戦

2016年シーズンが終了したバスマスターエリートシリーズ。今回は、8月11~14日にメリーランド州ポトマックリバーで開催された第8戦と9月8~11日にウィスコンシン州とミネソタ州の州境を流れるミシシッピーリバーで開催された最終戦の模様を清水盛三が語ります。

得意の真夏のタイダルリバー&今まで準決勝進出なしの苦手なリバーという対照的なフィールドに、清水はいかに立ち向かったのか……

■ 攻めのラン&ガンで勝負したタイダルリバー 第8戦ポトマックリバー

第8戦目の舞台は真夏8月のポトマックリバー。ここは広大なタイダルリバーで、考えるべき要素が膨大かつ複雑なうえ、このフィールドでは7~8年ぶりの試合になるので、6月末のカユーガ戦の直後にプリプラクティスに行ってきた。時間は2日間しか取れなかったが、走行ルートを確認しながら広くエリアをチェックしていった。

キーになると考えたのはグラス。まずはグラスのある場所を探しながら、その種類や量、そして生え方などを素早く確認して記憶&記録していく。そして、タイドによる影響も考えながら、さらには、試合が行われる8月にグラスはどこまで増えているかを予想しながら、この作業を繰り返した。

少しだけ釣りもしてみたが、すぐにクオリティーフィッシュを見つけることができた。調子が良かったカユーガ戦の直後だったこともあるかもしれないが、8年前と比べると明らかに魚を見つけるスピードが速くなっている。しかも、勝ちにからめるクオリティーのある魚を見つけることができている。こんな感じで順調にプリプラクティスを終えることができ、日本での仕事をこなすために一時帰国した。

そして1カ月半が経過。公式プラクティスでボートを浮かべてみると、グラスは予想通り増えていて良い感じに思えたが、水温が約28℃と6月末とそんなに変わっておらず、少し違和感を感じた。果たしてそれがバスの動きにどう影響を与えるのか……

そんな不安も吹き飛ばすかのように公式プラクティスは好調だった。タイドが合うとクオリティーフィッシュが連続で来る。ルアーはジャックハンマーとパンチング。

そして、勝負できるエリアを4カ所見つけていた。しかも、それぞれのエリアでタイドの動きにズレが生じるように、上流から下流までの間に散らばるようにエリアを持っていた。それにより、タイドに合わせて移動していけば、それぞれのエリアでベストなタイミングで釣ることができる。

真夏のタイダルリバーと言えば、初日2位スタートから15位入賞した一昨年8月のデラウェアリバー、昨年8月のチェサピークベイでは初日3位スタートから14位入賞と2年連続で好成績を収めており、「今年も、いや今年こそは!」と気合を入れて臨んだ。

そして迎えた試合初日、朝一にいきなりジャックハンマーで4本キャッチ。しかもすべて、このフィールドにしてはナイスサイズな3ポンドクラス。しかし、これは夏ならではのモーニングバイト。本番はこれから。タイドに合わせてラン&ガンを繰り返す。

ところがあと1本がなかなか来ない……

僕が狙いたかった1つのエリアには2つグラスの塊があったが、その両方ともに別の選手が陣取っていて、そのエリアには入れなかった。2人はそのエリアで1日粘ったようで、2人とも15ポンドくらい釣って初日上位に入っていた。

僕の方はというと、走り回ったものの結局最後まで何も起こらず、4本のままウェイインすることになってしまった。とはいえ、4本ながらも46位と思ったより良い位置につけることができた。上位とのウエイト差もそれほどなく、2日目次第でまだまだ決勝も狙えるウエイトだったが……

2日目も朝一にジャックハンマーですぐに3本キャッチ。しかし、前日と違いサイズが小さい。明らかに魚が入れ替わっている。上位を狙うためにはビッグフィッシュが絶対必要。そこでこの日もタイドに合わせてラン&ガンを繰り返していくことに。しかし、前日同様、朝一の魚のみでのウェイインとなってしまった。

結果は73位。大幅に順位を下げてしまった。タイドに合わせるには、初日15ポンド釣った2人のように1カ所に留まって時合を待ち続けるのか、それとも自分から動いて合わせに行くかだが、ラン&ガンを得意とするあのケビンバンダムが初日ゼロだったことから考えると、この試合では1カ所で粘る選手の方が良かった気がする。しかも、実際の潮はタイドグラフ通りには動かないので、いけると思って走って行っても全然ダメということもあった。

でも、自分のスタイルを貫き、ビッグフィッシュを狙って走りまわり勝負した結果なのでしかたがない。もちろん結果には納得いかないし、冷静に分析すると、逆にその攻めるという気持ちが空回りして焦って動いてしまったのかもしれない。が、全力で攻めるという気持ちを持ち続けることができているし、意味のある試合だったと思う。


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■ 第9戦ミシシッピーリバー 複雑なトーナメントウォーターもフロッグで初日好スタート

ポトマックリバー戦を終えた時点での年間順位を考えると、次のミシシッピーリバー戦の後に行われるチャンピオンシップへの出場権獲得は現実的にかなり厳しいものとなってしまった。最終戦は全力で勝負にいくしかないという状況だったが、ミシシッピーリバーというフィールドでは過去に2回試合で釣りをしたことがあるが、どちらも準決勝に進めず苦手なフィールドという意識があった。

その特徴と言えば、今回のトーナメントエリアはミシシッピーリバーの中でも上流部になるが、ルイジアナデルタまでつながる北アメリカ最大の川で、トーナメントエリア内にも何個かダムがある広大さ。そのダムのゲートを超えるのに時間を要するうえ、グラスが豊富で、ウッドカバー、リップラップ、ボートドック等もいたるところにある狙いどころの多さも特徴。

そして、ラージマウス、スモールマウス両方がターゲットと、前戦に続きここも考えるべきことが山のようにあるフィールドだった。

さらにもう1つ問題だったのが、この試合に適用されるややこしいルール。トーナメントエリアがウィスコンシン州とミネソタ州にまたがっていることで、ウィスコンシン側は普通に入れ替えしてもOKだが、ミネソタ側は入れ替え禁止というルールがあった。

実際、前回ここでエリートが開催されたときにアメリカ人選手でもこのルールに引っ掛かり失格になっている。にもかかわらず、今回の試合でもまた別のアメリカ人選手が失格になっているほど複雑な試合で、水上の州境をしっかり確認する手間も必要だった。

そんな公式プラクティスでは、このフィールドのメインカバーであるグラスでのパンチング系の釣りを中心に探していった。しかし、その釣り方では良いサイズが見つけられず、他もいろいろと試してみた結果、ビッグフィッシュは水面への反応が良いことを発見。エリアは3カ所ピックアップした。

試合初日、朝一は今年のトーナメントで数々のキーフィッシュを獲っている自信のジャックハンマーでモーニングバイト狙い。そのジャックハンマーが期待に応えてくれ、すぐに3ポンドと2ポンド半をキャッチ。

その後、今回のメインベイトと考えていたフロッグ(プロト)にチェンジ。すぐに2本追加。悪くはないが、思ったほどのサイズではない。そこで次に念のため1ozテキサスリグのパンチングでフォロー。するとまたしても狙いが当たり1本追加。朝の比較的早い時間でリミットメイク。幸先の良いスタートを切ることができた。

ここからはウエイトアップを狙い、今回一番ホットだと思っていた上流のエリアまで走ることに。そこに行くにはダムを超える必要があるのだが、ダムに到着してみると……

アメリカ中央部を北から南に縦断するよう流れるミシシッピーリバーは貨物輸送においても重要な役割を担っているようで、バージと呼ばれる巨大な荷船が多く見られるのだが、そのバージがダムを超えるための水門に先に入っていた。バージは商業船なので優先され、その間バスボートは中に入れない。

しかたがないので一旦この周りで釣りをしながら1時間ほど時間をつぶし、再びダムに行ってみるが……まだバージは水門を超えていない。この時点で時間もすでに11時。ここで時間を大幅にロスしてしまったので、このまま待ち続けて上流に行っても釣りをする時間はほとんどとれない。そこでこの日は上流をあきらめ、スタート地点に程近いエリアで釣ることにした。

その場所でも今回のメインパターンの1つであるフロッグでナイスフィッシュをキャッチ。入れ替えに成功。さらに同フロッグで1本追加し、またしても入れ替え。一番ホットだと考えていた上流に行けずストレスを感じる場面だったが、長年テストしてきたプロトのフロッグがハマり順調にウエイトアップすることができた。

まだ多くは明かせないが一言だけ言うと、このフロッグは一般的なフロッグと違いがあって、正直使いにくい状況もあるのは事実だが、状況を見極めて正しく使うことができれば本当に恐ろしい威力を発揮する爆発力のあるタイプのフロッグと言える。この試合ではシナジー・スーパートライアンフとの組み合わせで、出た魚はミスなく全部ランディングすることができたのも大きい。

ただ、このフィールドはパイクが多く、鋭いパイクの歯に悩まされた。ソフトボディのフロッグはその鋭い歯で傷つけられてしまうことがあった。プロトタイプのため手持ちは3個しかない。でも、このフロッグは他のフロッグでは代用が効かない特徴がある。だから、ボート上でその傷を接着剤で修理しながら大事に使っていた。

そんなわけで、1つを乾かしている間に別の物を使うというように、手持ちの3つをうまくローテーションしながら使ってはいたが、何度も修理しているうちに徐々にバランスが狂ってきてしまい……その後はバイトがなく、残り時間を次の日からのプラクティスを兼ねて、他にホットな場所がないか探していった。

しかし、追加できずそのままウェイイン。トータル13ポンド2オンスで37位。とはいえ、アメリカの他のフィールドと比べると、ここは決してビッグフィッシュが多いフィールドではないので、ウエイトにバラつきがなくトップから僅差で並んでいる。まだまだ決勝を狙える位置だった。


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■ 激しいサンダーストームにも集中力を切らさず戦い抜いた2日目&準決勝

2日目は状況が激変、雨のなかでのスタートとなった。初日が終わってから降り出した強烈な雨が、朝になっても降り続いていた。朝一は初日と同じエリアからスタート。まずジャックハンマーを投げるがバイトはない。

雨による増水と濁りが状況を変えてしまったのか……そこでひらめいて投げたワンズバグにこの日1本目、スモールマウスが来た。しかし、後が続かない。

次は初日フロッグで入れ替えフィッシュを獲ったエリアへ。しかし、雨はますます強さを増し、まさにサンダーストームという状態に。雷は鳴っているし雨も強烈に降っているし風もきつくて、とても釣りができる状況ではない。そこでやむなく、危険な状況を回避するために、バンク付近にボートをつけて一時釣りを中断することにした。

1時間ほど様子を見ていると少し収まってきたので、意を決して釣りを再開。しかし、そのエリアはグラスが強風により吹き飛ばされており全然釣れない。上流に持っていたエリアに行こうにも、マシになったとはいえ強い雨と完全には鳴り止まない雷でとても無理と判断。

そこで、朝一のエリアに戻ることにした。初日に3ポンドフィッシュも獲っているし、それを5本揃えて15ポンドいけば確実に上位に食い込めるフィールドだから、ここで腰を据えてやろうと決断した。

しかし、相変わらずの強い雨の中ではさすがに水面の釣りは厳しいと判断。さらに表層付近の釣りも厳しかったので、レンジを下げてドロップショットで勝負することにした。そして、じっくりと狙っていくと……単発ではあるがキーパーを4本絞り出し、なんとかリミットメイク。

そこで念のためにと、一旦そのエリアを離れて他のエリアもチェックしたが不発。やはり先程のエリアで間違いないと確信を持って、三度戻って最後の勝負に。

完全に迷いを消去した状態で、自分のエリアと釣り方に集中して釣っていくと……ついに入れ替えフィッシュが来た。釣り方はドロップショット。さらに、もう1本追加して入れ替え、狙いが当たりウエイトアップ。

2日目の最終ウエイトは11ポンド10オンスで50位と、なんとか準決勝進出を決めた。

もし最後の2本がなければと考えると……あのサンダーストームのなか最後まで集中力を切らさず戦えているし、上位とのウエイト差も大きくないので、少し順位は落としたもののまだまだ決勝への道はあきらめていなかった。

迎えた準決勝。この日はもちろんビッグウエイト狙いで勝負。そして朝一はいつものエリアに。しかし、サンダーストームが通過し雨は上がったものの、前日以上に濁りがきついせいか全く釣れない。

そこで、初日と2日目に行けなかった上流に行こうとダムまで走ることに。すると、またしても初日同様バージが入っている。すぐに切り替えて、一旦作戦を変更。朝一のエリアに戻り、前日入れ替えフィッシュを獲っているドロップショットで勝負することにした。すると、狙いが的中し4本キャッチ。1本3ポンドクラスが入り、「まだまだこれから!」と気合を入れる。

そこから再度上流を目指してダムに向かう。今回はバージも入っておらず無事水門を通過することができた。

しかし、狙いのエリアに到着してみると……前日の強風のせいで、ここでもグラスが流されている。さらに雨によってカレントが効ききすぎている。カバーもなく流れが発生したことで、魚が散ってしまい狙うべきスポットが絞り込めない。

強風の中、ここで2時間ほど費やしたが結局1本も獲ることができず、上流をあきらめ下流に戻ることに。そして、朝一の場所でラストの1時間を費やし、ドロップショットで1本獲ってリミットメイクしたものの、そこで終了。この日は11ポンド5オンス、少し順位を上げてトータル42位でこの試合を終えた。

天候の変化が激しく、しかも水門の通過に手間取ったりとタイミングが合わない試合だったが、そんななかでも最善を尽くせたと思う。また、苦手意識があったフィールドで準決勝まで進めたことは、次への自信にもなった。

フロッグで水面を狙いつつも、状況にアジャストしてドロップショットに切り替えるという、全く違う釣りに頭も体もしっかり対応してくれたことからも、昨年より明らかに成長していると実感できた試合だった。

このミシシッピーリバー戦をもって僕の今シーズンが終了した。結果は……年間成績を見るとここ最近で最悪の結果。当然悔しい。でも、昨年とは内容がまるで違う。今年は勝負した1年だったと思う。カユーガ戦では優勝争いを演じることもできたし、ビッグフィッシュ賞を取ることもできた。また、結果は伴わなくても自分のなかで何かつかめたと感じた試合も多かった。

それも、見えていないからと言って無難にまとめにいくのではなく、たとえ追い込まれても攻める気持ちを持って、自分本来のスタイルでビッグフィッシュを狙う釣りをメインに据えて、その場その時を釣るという気持ちで戦うことができたからに他ならない。

厳しい試合もたくさんあったけど、本当に紙一重の差で良い結果が出ることもわかるし、厳しいからこそ学ぶこともたくさんあった。必死にやることで得られるものは結果以上にあると実感できたシーズンだった。そしてなにより皆さんの声援が、この厳しい状況に切れそうになる気持ちをつなぎとめてくれたと思う。

本当に1年間ありがとうございました。この1年を決して無駄にせず、次のステップに向けて必要な1年だったと言えるよう信じて進んでいきます!

■第8戦タックルデータ
ロッド:ヘラクレス HCSC-73HG レパード
ライン:フロロカーボン 18lb
ルアー:ジャックハンマー 3/8oz

■第9戦タックルデータ
ロッド:シナジー HCSC-72MH+ スーパートライアンフ
ライン:PE 60lb
ルアー:フロッグ(プロト)

ロッド:シナジー(プロト)
ライン:ナイロン 13lb
ルアー:ワンズバグ

ロッド:シナジー(プロト)
ライン:フロロカーボン 7lb
ルアー:6インチストレートワーム ドロップショットリグ

■関連サイト:B.A.S.S. Bassmaster

清水盛三オフィシャルサイト「NEVER GIVE UP」
http://www.morizoshimizu.jp/

清水盛三オフィシャルブログ
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清水盛三オフィシャルFacebook
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