2015.08.26 (水)

清水盛三が語る バスマスターエリートシリーズ第7戦 
ブレーデッドジグで夏のシャローグラスフラットを攻めて上位入賞

2015年8月13~16日、メリーランド州チェサピークベイで開催されたバスマスターエリートシリーズ第7戦。日本の常識を遥かに超える圧倒的な規模を誇るタイダルフィールドに立ち向かい、見事14位入賞という好成績を収めた清水盛三がその戦いを振り返ります。

■ 難易度超A級タイダルフィールド、大西洋に面する超広大な湾が舞台

大西洋とダイレクトにつながる湾、チェサピークベイが今回の試合の舞台。潮止めの水門や堰なんかがないので、モロに潮の影響を受ける汽水域のいわゆるタイダルフィールド。そして、毎回言っている気がするけど、今回試合が行われたチェサピークベイは特に、釣りができるエリアが無限にある超広大なフィールド。ボート全開で2時間でも3時間でも走れる。

淡水魚のバスにとってはとても快適だとは言えないほど塩分濃度も高く魚影が薄い上に、さらに広大、しかもバスがつきそうなマンメイドのカバーやグラスなんかも無限。まださらに、タイドによる水位の増減、カレントの有無、あとは4日間の試合のなかでの干満の時差なんかも考えないといけないので、釣れるエリアを見つけるのは至難の業。

さらに追い打ちをかけるように、公式プラクティス中の海側から湾に向かって吹き付ける強風。それが満潮のタイミングと重なると、水をより押し上げることになり超満水状態に。ただでさえ少ない魚が散ってしまうだけでなく、それは同時に海水が入ってくることも意味する。塩分濃度、ペーハー値が上がることでますますタフ化が進んでいく感じ。しかも、水温は30度と高く、本当に過酷な状況下でのトーナメントとなった。

結局2日半の公式プラクティスで釣った魚はたったの4本。しかも、バラバラのところで釣れているので、何がキーになるか良くわからないといった散々たる練習内容だった。下手をするとノーフィッシュもあり得るという、とてつもないプレッシャー、緊張感のなかで試合を迎えることになってしまった。

ただ、まわりの選手達も口を揃えて「全く釣れない」と言っており、結局試合では多くの選手はリリースフィッシュが多いスタート地点の近くを釣っているようだった。それだけまわりも釣れていない状況下で、自分だけのエリアで、少ないながらも3ポンドクラスというこのフィールドのアベレージからするとデカいサイズばかり獲れていたので、あとは「タイミングが合えば……」という期待もないわけではなかった。


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■ ブレーデッドジグで5ポンドオーバー、3位発進のDAY-1

試合初日、練習で釣った魚を手掛かりに、朝一はオフショアのシャローグラスフラットからスタート。水深は満潮時で約1m。ムービングベイトでグラスパッチやグラスフラットのエッジを中心に釣っていく。ローライトと潮が動くタイミングが重なっていたので期待はしていたけど、練習でも単発だったし、正直確信が持てない状況でのスタートだった。

しかし、いきなり5投目でジャックハンマーに3ポンドオーバーのビッグフィッシュ。これがこの試合の流れを決定づける魚だった。この1本があるかないかで大きく精神状態が変わる本当に貴重な魚で、少し位アタリが遠のいてもやり切れるというコンフィデンスを与えてくれた大きな価値のある1本。

そこからしばらくアタリが止まってしまったが、それでも最初の1本があったので焦らず釣り続けることができた。そして、またしてもジャックハンマーで3ポンドオーバーをキャッチ。その後、再びアタリがなくなってしまったものの投げ続けていくと、今度はスーパーキッカーとなる5ポンドオーバーが来た。結局2時間で3本のビッグフィッシュという好スタートを切ることができた。

ルアーはすべてジャックハンマー3/8oz。この試合ではジャックハンマー用のタックルをラインの太さ違いで2セット準備した。ロッドはいずれもヘラクレス・パワーグラスシリーズで、ヘラクレス・サーバルにフロロカーボン16lb、ヘラクレス・レパードにフロロカーボン18lb。この2セットで、タイドなどの状況に応じて微妙なレンジ調整をしていった。


そんな感じで、その後もさらに同じエリアで投げ続けるたが、アタリがピタッと止まってしまった。この時点で11時。タイドが完全に止まってしまったので、ベイに流れ込む川を上がって行きスモールマウスを狙った。そこですぐに1ポンド半ほどのキーパーが獲れたので、その後1時間半ほど粘ったけど全く後が続かない。さらにエリアを変えようと湾に戻り、今度はボートドック、桟橋をフリッピングで狙っていくが全く釣れない。

そこで、最後は朝一のグラスフラットへ。タイミング的には朝と違いロータイド。水深は60cmほどに。ローライトかつ満潮の朝一と違い、グラスの位置、カレントの動き等しっかり把握することができる。

そして見えバスを発見。慎重にノーシンカーを入れると口を使ってきたが、まさかのアワセミスですっぽ抜け。このフィールド&状況から考えると致命的とも言える重大なミスに精神的ショックは大きかったが、「まだあきらめるな」と自分に言い聞かせて……ついにラスト10分、ノーシンカーで3ポンドオーバーをキャッチ。

その魚をライブウェルに入れて速攻で戻りウェイイン。結果16ポンド9オンスで3位。釣ったのは5本とギリギリの試合展開だったが、次の日に向けてかすかな期待はあった。最後にメインエリアに入り直した時に、いろいろな情報を得ることができたし、この日の2位ビッグフィッシュとなる5ポンドオーバーを獲れたし、トップとも1ポンドも離れていない。


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■ 2日目を終えて5位、3日目の気がかりはタイド

特に2日目の朝一は、ローライトと潮の動く時間が重なるのでいけるという感触はあった。その予想通り、前日のグラスフラットでジャックハンマーを投げて3ポンドオーバーを2本。しかし、潮が上げ止まったのを境に、アタリもピタッと止まってしまった。

ハイタイドになったのでバンク寄りのボートドックに狙いを移し、潮が動き出すタイミングを待ちながら、とりあえずフリッピングやクランキング。しかし、状況は厳しい。そして、潮が再び動き始めるタイミングを見計らい、もう1度メインのエリアに戻ると……すぐにジャックハンマーで2ポンド半をキャッチ。

潮は動いていたのでその後もずっと粘ったがなぜかバイトがない。残り時間も少なくなり、一瞬、川でのスモールマウス狙いも考えたが、釣れたサイズが小さかったので、「優勝を狙うならそんなヤツらを狙っていてはダメだ」と以降完全に切り捨てることに。

そこで、この潮の動いている状況で狙いをボートドックの桟橋にチェンジ。しかし、バイトは遠い。とある桟橋を撃ち終えて次の桟橋まで移動しようとプレーニングしかかったそのとき、たまたま対岸のリップラップが目に留まった。この時点で残り約10分。自分の直感を信じてそのリップラップに入り……ラスト2分というところでジグヘッドリグで2ポンド半をキャッチ。結局この日は4本でのウェイインとなってしまったが、釣れる魚がすべてデカかったので、なんとか5位にとどまることができた。

これで決勝進出(12位まで)も見えてきたが、気がかりはタイド。潮の状況が最も厳しくなるのが3日目だった。この日も朝一のローライトで何本入れることができるかが勝負。

エリアはもちろんメインのグラスフラットエリア。しかし、2ポンド半1本獲った後、時間だけが過ぎていく。移動してボートドック、リップラップをやるものの全然喰わない。

潮が動くタイミングでメインエリアに戻っても無反応。完全に潮も止まり、ボートドックも釣れる気がしなかったので、別のエリアでのフリッピングに切り替えることに。すると、すぐに1ポンド半のキーパーが来た。「まだわからない。あと1本入れれば決勝に行ける」とやり切ったがタイムアウト。この日は2本でウェイイン。最終結果は14位だった。


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■ バスフィッシングをより深く楽しむために思うこと

優勝も狙える位置に着けていただけに悔しい結果だが、最初にも言ったように、多くの選手がリリースフィッシュの多いスタート地点近くのエリアで釣っていたのに対し、広大なグラスフラットから自分だけのキースポットを見つけることができたし、散々たる練習からよくここまでアジャストできたと思う。

かなり調子も上向いてきた感じで、初日、2日目とも最後まで集中力を維持して、本当に最後の最後にビッグフィッシュを獲っているし、そういう部分では良くやったと思う。

ただ、3日目に関してはもう少しできることがあったという反省はある。例えば、上位は軽めのスピナーベイトがキールアーだったようだけど、今考えると、グラスフラットで釣れない時間帯にもう少しスローな横の釣りを試していれば……と思う。

実際スピナーベイトも投げていたが、エリアが広大だし、ある程度速く釣るためにセットしていたのが1/2ozのスピナーベイトだった。で、それだと水深が浅いのでゆっくり巻くとスタックしてしまうから、どちらかというと速めのスピードでガーグリングさせていた。でも、自分のエリアにコンフィデンスを持てていたのだから、スピナーベイトのウエイトを3/8ozに下げてスローロールさせるという選択肢もあった。

これはトーナメントだからこそわかること。ひとりで釣りをしていてもなかなか気づけない。「今日は良く釣れたな」で終わってしまうかもしれない。でも、多くのアングラーが同条件下で厳格なルールに基づいて競うトーナメントでは、自分の選択が正しかったのかどうか、その結果が残酷なまでにはっきり出てしまう。自分以上に釣ってくるアングラーがいれば、そこから気づかされることもあるし、そのような過酷な環境で釣りを続けることが、自分を進化させてくれることになる。

ただ単に魚が釣れたとか釣れなかったという話しではない。そこを超えたおもしろさがあるのがバスフィッシング。なかでも、トーナメントには難しければ難しいほど、のめり込んでしまうような魔力がある。だから、バスフィッシングをより深く楽しむためにも、トーナメントに興味を持ってくれる人がひとりでも増えると嬉しい。

今シーズンのレギュラー戦も残り1試合。年間ランキングも上げることができたし、次のレイク・セントクレア戦でもなんとか上位でフィニッシュして、チャンピオンシップの出場権を取りたいね。泣いても笑ってもあと1戦。悔いのないよう全力で攻め続けます!

P.S. この試合の2日目にTVカメラが乗っていました。そのときの模様は以下からご覧ください。

■Chesapeake Bay BassCam
http://www.bassmaster.com/video/chesapeake-bay-basscam
動画下のスクロールエリア内下部「Morizo Shimizu with a feisty Chesapeake Bay bass」

■Bassmaster LIVE archive
http://www.bassmaster.com/video/bassmaster-live-chesapeake-bay-presented-lowrance-0
3つ並ぶ動画の一番下「Friday」

■タックルデータ
ロッド:ヘラクレス HCSC-611MHG サーバル
ライン:フロロカーボン 16lb
ルアー:ジャックハンマー 3/8oz(プロト)

ロッド:ヘラクレス HCSC-73HG レパード
ライン:フロロカーボン 18lb
ルアー:ジャックハンマー 3/8oz(プロト)

ロッド:シナジー CSYC-78H スーパーマグナム(プロト)
ライン:フロロカーボン 22lb
ルアー:クロー系ワーム テキサスリグ
シンカー:E.G.タングステンシンカー 1oz

ロッド:ヘラクレス HCSS-611M パワーシェイカー611M
ライン:PE 20lb
リーダー:フロロカーボン 10lb
ルアー:4インチワーム ノーシンカーリグ
6インチワーム 3/16ozジグヘッドリグ

■関連サイト:B.A.S.S. Bassmaster

清水盛三オフィシャルサイト「NEVER GIVE UP」
http://www.morizoshimizu.jp/

清水盛三オフィシャルブログ“I HAVE NO LIMIT”
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清水盛三オフィシャルFacebook
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