清水盛三が語る バスマスターエリートシリーズ第7戦
夏の激タフ&超難解タイダルリバーを攻略し上位入賞

2014年8月7~10日にペンシルベニア州とニュージャージー州の間を流れるデラウェアリバーで開催されたバスマスターエリートシリーズ第7戦で15位入賞を果たした清水盛三。
いまだかつて経験したことがないほどの激しい潮位変化に悩まされながらも、初日の結果は2位。優勝を狙えるポジションからのスタートを切ったものの……難易度スーパー特Aクラスのフィールド、デラウェアリバーでの戦いを清水盛三が振り返ります。
■超広大なタイダルリバーに苦しんだプラクティス
今回試合があったデラウェアリバーというところはB.A.S.S.のトップカテゴリートーナメントが初めて開催されるフィールド。当然僕も釣りをしたことがない初めてのフィールドだった。しかも超広大な川なんで、プリプラクティスはしっかりしたかったけど、5月のダーダネル戦が終わってメジャーリーグフィッシングトーナメントに出場した直後に大移動するという強行スケジュールで、なんとか2日半取れただけだった。
デラウェアリバーは潮の満ち引きがあるタイダルリバーなんやけど、とにかく驚いたのが、その干満の差があまりにも大きいこと。今までにも、ルイジアナデルタやポトマックリバーなんかのタイダルウォーターを経験しているけど、ここまで増減が激しいところは初めてだった。釣りをしている間に2m近く増減する。
で、海に直結しているメインリバーには、いろんな国のでっかいタンカーがいっぱい通っているし、川といっても日本の川とは規模が全然違う。僕の地元で言うと淀川なんかを含めた大阪湾で釣りをしている感じと言ったほうがわかりやすいかもね。とにかく超広大。
しかも魚影がメチャクチャ薄くて、全然釣れない。アベレージサイズも小さくて、3ポンドでもスーパービッグと言えるホンマに難しいフィールドという印象だった。直前の公式練習に入ってからも、やっぱり釣れない。2日半の公式練習で釣ったバスは、初日2匹、2日目ゼロ、3日目2匹。試合ではホンマにゼロを覚悟しなければならないほど見えてなかった。
■DAY-1 ハニースポットを発見し2位発進
そして、試合初日。数少ない手掛かりである公式練習で釣った4匹から何かを導き出すしかなかった。それぞれ釣れた場所はバラバラだったけど、釣れた場所には何らかの意味があるんで、「その辺りに魚がいるはず、あとは潮の動き次第」と考えて粘る、もしくは何度も入り直すしかないと考えた。
で、朝一入ったのは、練習で2本釣っていたクリーク。メインリバーは汽水域だから、淡水が多い支流が良いと考えた。しかし、朝は超ロータイドで、ルアーを投げているところで水深20~30cmほどしかない。でも、とにかくこのクリークを片っ端から叩こうと2時間掛けて流したけどノーバイト。
「練習で魚を獲ったエリアがこれではヤバイな」とは思ったけど、これから潮が上がってくる時間なんで「まだまだ、これからだ」と思い次のエリアに移動。そこも練習で1匹釣っているエリアなんだけど、そこはメインリバーで、よりタイドの影響が大きい場所だった。
タイダルウォーターでは、「魚がいなくて釣れないのか、それとも潮が悪くて喰わないのか」をしっかり判断しなければならない。魚がいても潮が合わないと釣れないし、潮のタイミングが良くてもエリアを間違えていればもちろんダメ。
しかも、エリアが超広大で魚影も薄いとくれば、ルアーや釣り方、さらにはエリアが合っているのか間違っているのか、ちょっと釣りをしたぐらいでは確認しようがない。本当に確認しようと思えば一生掛かる。とにかく考えなければいけない要素が多すぎて、デラウェアリバーは今まで戦った中で一番難しいフィールドだと思う。
結局このエリアでも釣れず。早くもボウズを覚悟した。でも、「このまわりに魚はいるはず」と思い直してあたりを見渡すと……気になったのが、メインリバーから大きなワンドというかクリークにつながっている入口にあって、岸から伸びているロックパイル(石積)。そこをまわり込んで内側(クリーク側)に入ったところで、ロックパイルの石の影を狙ってクローワームのテキサスリグをピッチングで入れたらアタリがあった。
しかし、これはノンキーパー。でもやはり魚はいた。そしてその次のキャストでまたしてもバイト。これが2ポンド弱のナイスキーパー。「獲った!ゼロは免れた、ウェイインできる」とホッとしたよ。この時点で9時半くらい。
水位も上がってきていたし「メインリバーや元々クリーク内をウロウロしていた魚がこのスポットに集中してきているはず」と思って、次にスピニングタックルに持ち替えて狙いにいくと、3ポンドのビッグフィッシュがきた。ルアーは7インチストレートワームの1/8ozドロップショット。
このとき釣っていた内側のロックパイルの長さは約20m、メインリバーに面した外側も50mしかないというかなり狭いスポットだった。その後もドロップショットで、内側のロックパイルを角度を変えてしつこくキャストしながら粘り……さらに3ポンドと2ポンド弱の2本を追加。
この時点で約9ポンドという、このフィールドで考えるとすごいウエイトを獲ることができた。他のフィールドに置き換えて考えると倍の18ポンドくらいの計算になるかな。水位の上昇とともに魚が入って来ていたのは明らかだったけど、このウエイトなら「絶対上位に入っているはず」と思ったので、いったんその場所を離れ違う場所を見に行った。そこで1時間ほど費やしたが釣れず、ロックパイルに戻ってくると……
他のアングラーがモロに僕の釣っていたスポットに入っていた。その選手はそこで僕が釣っていたのを知っているにもかかわらず、いかにも自分の場所という感じで一向に動かなかった。正直納得いかない部分もあったけど、ここでイライラしても釣りに悪い影響が出てしまうからと気持ちを切り替えて、そのロックパイルの反対側(外側)にまわって釣りをすることにした。
そしてクローワームのテキサスリグをピッチングしていくと……キッカーとなる3ポンドがきた。冷静な判断によってこの1匹を獲ることができ、ウエイトを大きく伸ばした。これで初日トップ3は確定だと思って帰ったよ。結果12ポンド2オンスで2位と最高のスタートを切ることができた。
■DAY-2 狭いエリアを釣り切り、ロングシェイクでキッカーフィッシュ
試合2日目。この日は朝一から速攻で昨日のエリアに向かった。クオリティーの高い魚が固まっていることもわかったし、他の選手が入ってくるのも抑えたかったからね。
ただ、この日も初日と同じく、下げ潮の潮止まりからのスタート。エリアに着いてみると、やはりロータイドで完全に潮の動きも止まっていた。こうなると、昨日良かった内側のロックパイルにはまだ水がなく、外側も含めて狙ってみたものの、魚もまだ上がってきておらず開始1時間は全然釣れなかった。まあこれも予定通りで、初日の良いイメージが残っていて、「これから潮が上がってくれば絶対釣れる」と冷静でいられた。
そこで、ロックパイルはいったん攻めるのをやめて、そのまわりのメインリバー側にあるフラットに生えているグラスを狙っていくことにした。まずは、昨日良かったテキサスリグやドロップショットで探ってみたけどアタリなし。
ここで、「スピナーベイトを投げてみよう」と何かひらめくものが合って、Dゾーン3/8ozタンデムウィローに変えてキャストした1投目でいきなりのナイスキーパーをキャッチ。川のシャローエリアでは特にだけど、3/8ozが効くね。ホンマDゾーンが良い流れを作ってくれたよ。
そうこうしているうちに、メインのロックパイルの方に他の選手が入ってくるようになって……バスだけじゃなく他の選手の動きにも神経を尖らせて、自分のエリアを主張しながら釣らなきゃいけなかった。そんななかでテキサスリグのピッチングに強烈なバイトがあったんだけど、フックを伸ばされてバラしてしまった。
でも、そのあと同じくテキサスリグのピッチングで1本キーパーを獲ることができた。初日からメインの釣りの1つであるテキサスリグは、ロックパイルの石と石の隙間やロックパイル上にある杭を狙ってテンポ良くピッチングしていくという釣り方。狙う水深は減水時で20cmくらい、増水時で1m30cmほど。
さらに石の隙間を狙うんで、根掛かりのしにくさときっちり隙間に送り込むという点から今回は6gのシンカーを使っていた。きっちり隙間に落とし込もうとすれば重めのシンカーが必要になるけど、重すぎると根掛かりが多発して釣りにならない。今回の状況では5gだと軽いし7gだと重い感じで、6gがベストだった。こんな微調整ができるようにと、僕がつくり上げたE.G.タングステンバレットシンカーには6gというウエイトをラインナップしている。たった1gだけど、この差は大きい。
2本目を獲った後もロックパイルを流していって、先端付近に差し掛かったときにまた別の選手が目の前に入ってきて……ホンマにストレス全開だったけど、パッと来てすぐ釣れるほど簡単じゃないし、こっちは昨日から釣り込んで釣り方もわかっているし、と相手にせず、その選手の目の前でも2本連続でキャッチ。このときのルアーはストレートワーム7インチの1/8ozワッキーリグ。
そこから、潮がどんどん上がってきてカレントも強くなってきた。こうなるとバスが内側のロックパイルに上がってくることは初日の時点でわかっていたので、狙いを内側のロックパイルに絞った。そして少し遠めからドロップショットを入れていくと、狙い通りキーパーをキャッチ。リミットメイク達成。
その後もドロップショットで3ポンドオーバーのキッカーを獲って入れ替え。ドロップショットやワッキーを投げるときは、プレッシャーを掛けないように遠目からキャストして、パワーシェイカーの持ち味を活かしたロングシェイクで喰わせていた。
第5戦のダーダネルではカバー周りを釣るためのパワースピン・パワーシェイカーだったけど、今回は狭いエリアをロングシェイクでしつこく丁寧に釣るためのパワーシェイカーだった。さらに、しっかり石の隙間を釣れるように、流れの強さによってシンカーは1/8ozと3/16ozを使い分けていた。
【動画】>> Shimizu's feeding frenzy on the Delaware
■未体験の潮位変化に翻弄されたDAY-3
そして3日目準決勝。こうなったらもう例のエリアに行くしかないので、もちろん朝一から直行。で、この日の潮は下げ潮いっぱいの少し手前からのスタートだった。だから、潮止まりまでの約1時間は釣れる時間帯だったんで集中した。そして狙い通りテキサスリグでバイトがあったんやけど……喰いが浅くはずれてしまった。
そうこうしているうちに潮が止まって釣れない時間帯に突入。もうこの日は他のエリアに移動することは考えずに、潮が動き出すのをひたすら待ちながら釣り続けた。だけど、さすがにアタリがないと集中力を維持するのが大変だった。
2、3時間してようやく潮が動き出したので、「よしこれからがチャンス」と思って一番いい場所にテキサスリグをピッチング。するとすぐにバイト。でも、集中力が完全には維持できてなかったのか、またワームだけ取られてはずれてしまった。さすがに、このタフなフィールドで2回もミスしてたらダメ。
それと試合期間中、満月に向かっていたので日に日に水位の増減が激しくなってきていた。あとスーパームーンの影響もあるのか、特にこの日は上がってくる潮の動きがメチャクチャ速い。ついには水位がロックパイルを超えて、いわゆる日本のリザーバーのバックウォーターみたいな感じの流れになった。
川本来の流れと下流から潮が上がってくる流れがあって、しかもロックパイルの岬を釣っているから渦を巻く感じの複雑な流れで、ルアーが狙いのスポットに入らない。かといって、ウエイトを重くするとすぐ石の隙間に挟まって、根掛かりのオンパレードになってしまう。かなりストレスが掛かる状況で、リズムを崩してしまった。
そんななかで、ドロップショットでなんとか3本釣ったけど、2本はノンキーパー。朝の2バイトのうち、どっちかでも釣っていれば余裕で決勝に行けたはずだけど、結局1本のみのウェイインで1ポンド12オンス。最終15位で終了。
正直、今回は決勝進出だけじゃなく優勝を意識していたから悔しいね。それだけのポテンシャルがあるエリアだったと思う。このフィールドではスーパービッグといえる3ポンドを何本か釣っているしね。ただ、20mと50mのストレッチというすごく狭いエリア1箇所しか持っていなかったんで、もう1箇所は釣れるエリアが必要だった。
でも、超広大なタイダルウォーターで、しかも魚が少なくサイズも小さくて、これでは前にも言った通り、自分のエリアや釣り方が合っているのか確認することもできない。そんなフィールドでハニースポットを見つけられたことや、他の選手とのバッティング等いろんな意味で耐え忍んだことも含めて本当に良くやったと思う部分もあるよ。なんたって人類史上最強のケビンヴァンダムがノーフィッシュを食らうフィールドやからね。
まあ、なんとか修羅場パート1は無事クリアできたけど、次のカユーガレイク戦も修羅場パート2と言えるほどのフィールド。でも、その次の最終戦チャンピオンシップに向けてここが正念場。今回の試合を経験したことで確実に成長している自分自身のすべてをぶつけて全力で挑むつもりなので、みなさんも最後まで応援よろしくお願いします!
ロッド:ヘラクレス HCSS-611M パワーシェイカー611M
ライン:フロロカーボン 7lb
ルアー:7インチストレートワーム 1/8~3/16ozドロップショットリグ、ワッキーリグ
ロッド:ヘラクレス HCSC-67MHR レッドマイスター
ライン:フロロカーボン 14lb
ルアー:Dゾーン 3/8oz タンデムウィローリーフ
http://www.morizoshimizu.jp/
清水盛三オフィシャルブログ“I HAVE NO LIMIT”
http://ameblo.jp/king-morizo/
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