清水盛三が語る 2016バスマスターエリートシリーズ前半戦
ラバージグのカバー撃ちで勝負してつかんだ決勝への道(前編)
2016年シーズン前半戦が終了したバスマスターエリートシリーズ。その折り返しとなる第5戦で見事決勝進出を果たし、後半戦に向けて猛烈な追い上げを見せる清水盛三。今回は、その決勝進出の布石になった第2戦サウスキャロライナ州ウィンヤーベイ、第3戦アーカンソー州ブルショールズ&ノーフォーク、第4戦アラバマ州レイク・ウィーラーについて語ります。
「気持ちを強く持って自分の釣りを貫け!」と言ってくれたこの魚のおかげで長いトンネルを抜けることができ、トレドベンド戦の決勝進出につながることになる……
■ 第2戦ウィンヤーベイ 「エリアを見る感覚は間違っていない……」
第2戦の舞台、ウィンヤーベイは僕にとってまったく初めてで未知のフィールド。数本の川が流れ込む超広大なフィールドベイということでタイダルウォーターでもあり魚影も薄く、難易度超A級のフィールドと言える。
超広大なフィールドで限られた練習時間ということで、全部のエリアはとてもじゃないけど見ることはできない。かなり気になるエリアがあったんだけど、そのエリアまで走ろうとすると片道2時間のロングドライブ、さらに途中で給油も必要だったので、いろいろなリスクを考えて切り捨てることにした。年間チャンピオンを目指すうえで、初戦の順位から考えると、この2戦目を外すわけにはいかないからね。
そして、試合はスタート地点から比較的近いエリアをメインに釣った。ただ、近いと言っても40分掛かるので、このフィールドがいかに広大かというのがわかってもらえると思う。プラクティスでは、このエリアでワイルドハンチのカバークランキングのパターンを見つけていた。あとはタイドといかにタイミングを合わせるかということだったんだけど……
結局試合中はタイミングを合わせることができずクランキングは不発。そこで、アジャストするために同じエリアをテキサスリグで撃っていった。しかし、時期的にもまだスポーニングの魚も多く、喰いが浅くてショートバイトに悩まされた。結果的にウエイトを伸ばせず、97位という不本意な成績で2日間を終えてしまった。
エバーグリーンスタッフのブレットハイトが2位に入賞したけど、彼は僕が気になっていた片道2時間のエリアに4日間勝負に走っていた。さらに言うと優勝した選手も同じ川筋だった。体調的にもきつい状態だったので完全に勝負に行ききれなかったけど、「自分のエリアを見る感覚は間違っていない」と次につながるものもあった試合だった。
■第2戦 タックルデータ
ロッド:ヘラクレス HCSC-68MG オセロット
ライン:ナイロン 17lb
ルアー:ワイルドハンチ
ロッド:シナジー CSYC-71H スーパーディトネーター
ライン:フロロカーボン 20lb
ルアー:クロー系ワーム 6~7gテキサスリグ
シンカー:E.G.タングステンバレットシンカー6g、7g
■ 第3戦ノーフォーク&ブルショールズ 「初めてのレイクでグッドパターン発見」
変則的なフォーマットで行われた第3戦。ノーフォークとブルショールズという2つの湖をひとつの試合にまとめて、初日ノーフォーク、2日目と3日目をブルショールズ、最終日がノーフォークというスケジュールだった。
ブルショールズは今まで何回も釣ったことがあり、特に春のトーナメントではハイフィニッシュしていることもある得意なレイクの1つ。逆にノーフォークは今まで行ったこともないレイクだったので、プラクティス1日目は、まずノーフォークにボートを浮かべた。そして、湖の全体像を把握することに努めた。
プラクティス2日目は得意のブルショールズに。しかし、予想に反して全然釣れない。例年と違いかなり増水していたので、岸際にブッシュが無限にある状態だった。そこでバンクをきっちりチェックしていくと、まだスポーニングに絡む魚がたくさんいた。この日の状況から、ブルショールズはサイトフィッシングでいこうと決断した。
プラクティス3日目は再び、初日にエリアをザクッと見ただけのノーフォークへ。この日の天気は曇りで、時々パラパラと雨が降ることもあった。それとシャッドスポーニングも重なり、バスがアグレッシブな感じだった。そんな状況下でプロップマジックやスイムベイトがハマり、ノーフォーク攻略の糸口を発見することができた。残すプラクティス最終日は、ブルショールズでサイトフィッシングの確認に費やし公式プラクティスを終えた。
迎えたトーナメント初日、ノーフォークは霧に包まれていた。曇りであればプロップマジックやスイムベイトのパターンは絶対にハマる。しかし霧が思いのほか濃く、不運にもディレイスタートとなってしまった。約2時間後ようやく霧が晴れて、晴天無風のなかスタート。こうなると表層巻きのパターンは厳しくなってしまう。案の定、いろいろエリアを変えてみたもののまったく釣れない。
そうこうしているうちに11時半くらいから風が吹き始めて、ようやく1本目のキーパーをキャッチ。そしてノンキーパーだったが続けてキャッチ。そこから、似たような風の向き、当たり方をするエリアを探しながら走り回ると……入るエリア、入るエリアで魚を獲ることができた。
完全にパターンにハマり、入れ替えもして10ポンド12オンス、54位。数オンス違うだけで順位が大きく入れ替わるような混戦状態なので、決勝もまだまだ狙える好位置からのスタートだった。
2日目はブルショールズ。スタート直後はまだ薄暗くてサイトがしにくかったので、ノーフォークのようにスイムベイトを巻いていき、幸先よく3ポンドをキャッチ。日が高くなり水中が見やすくなってからサイトフィッシングに切り替える。
小さいサイズはパスして良いサイズのみを狙っていき、3ポンドを2本入れた。ただ、デカいのに限ってウッドカバーの物凄くややこしいところにいて、ルアーを入れるのも大変だし、うまいこと入れてもまったく操作できない。
あと2本というところで追加できないまま時間ばかりが過ぎていく。こうなるとサイズにこだわっていられない。それなりの魚をサクッと釣って、とりあえずのリミットメイク。
その後、サイトで探しながら沖側にスイムベイトを投げていると……まずまずサイズのスモールマウスが2本来て入れ替えに成功。この日は13ポンド4オンスでトータル49位。いまいち納得できない1日ではあったものの、かろうじて準決勝に進むことができた。
3日目準決勝もブルショールズ。前日の状況から、プラクティスで見つけていた場所から明らかに魚が減っていることがわかったので、朝9時まではそれらのエリアを見て、ダメだったらすっぱり切り捨てようと思っていた。そこで朝スタート前に、GPSのマップを見ながら良さそうなエリアをピックアップ。練習でも行ったことがない場所4カ所にマークを打った。
スタート後、まずは練習で見つけていたエリアに入ると、やはり予想通り魚はいない。9時近くなって、プラン通り新たなエリアをチェックに行くことに。まず、朝GPSにマークした1カ所目のエリアに入ったが、全然魚がいなかったので次に移動。そして2カ所目、3カ所目も何もいない。残るマークは1つ。そしてその4カ所目に入ると……爆発的に魚がいる。
すぐに3ポンドをキャッチ。しかしその後、別の魚を何本か狙ったがなかなか口を使わない。ついに残り時間もあとわずかに。そんななか、何気なく沖に向かって投げたドロップショットにキーパーがきた。それをヒントに、「見える魚ではなく沖にいる魚を釣ろう」と作戦を変更。その狙いが的中し2本追加。しかし、ここで時間切れ。トータル31ポンド13オンス、47位でこのトーナメントを終えた。
今シーズン初めて準決勝に進出することもできたし、初めてのレイクで良いエリアを見つけることに加えて、パターンを見つけることができたのは良かった。そういう意味でも、前回の反省点をしっかりクリアすることができたと思う。あとは、本当に微妙な部分が機能していないだけで、「それがうまく噛み合えば絶対上に行ける」そう信じて次の試合に臨んだ。
■第3戦 タックルデータ
ロッド:ヘラクレス HCSC-70ML エアレギウス7
ライン:フロロカーボン 10lb
ルアー:プロップマジック75
ロッド:ヘラクレス HCSC-73HG レパード
ライン:フロロカーボン 14lb
ルアー:スイムベイト
ロッド:シナジー CSYC-71H スーパーディトネーター
ライン:フロロカーボン 20lb
ルアー:各種ワーム 8.8gテキサスリグ
シンカー:E.G.タングステンバレットシンカー 8.8g
ロッド:ヘラクレス HCSS-611M パワーシェイカー611
ライン:フロロカーボン 7lb
ルアー:各種ワーム 1/4ozドロップショットリグ
■ 第4戦ウィーラー 「自分のスタイルを貫き……ビッグフィッシュ」
第4戦はレイク・ウィーラーで開催。前戦でつかんだ良い流れをさらに確実なものにするためにも重要な1戦だった……しかし、結果は85位。この数字だけ見るとせっかくつかみかけた流れを手放してしまったかのように思えるが、実は次の第5戦トレドベンドでの決勝進出をつかみとるキッカケを与えてくれた、大きな意味のある試合だった。
まずはプラクティス。今までのウィーラーからは考えられないほど、雨もなくカレントも完全に止まっていて、とてつもなく釣れない練習だった。選手同士の探り合いでは、「1日10ポンド釣れば上位にいけるんじゃないか」というほどタフな状況。
そんななか1カ所だけ小さなマリーナの中に普通のキーパーサイズだが魚がいっぱいいるところを発見できた。ルアーはクラッチヒッター。その他のエリアでは、単発だがラバージグのカバー撃ちでデカイのがポロッと獲れたので、クラッチヒッターでリミットをとってからジグで勝負に行くというプランを立てた。
そして迎えた試合初日。最終フライトだったこともあり、朝一キーパー場に入ってみると、すでにマリーナの中には白いボートが浮かんでいた。その先行者を意識しながらも、「自分は自分の釣りを」とクラッチヒッターを投げ始めると、すぐにキーパーをキャッチすることができた。
「人が流したあとでも釣れる」とそのまま流していく。僕の方がボートを流すスピードが速く、先行者と少しずつ距離が縮まってくるにつれ前のボートがはっきり見えるようになり、そのボートに乗っていたのは……なんとリッククランだった。そこからリックは左側を流していったので、僕は真っ直ぐボートを流していくことに。
すると奥にはブレントアーラーが。さすがに狭いエリアに3艇となると厳しい。そうこうしているうちに2人とも移動したが、僕は「もう少しこのエリアで粘ろう」と思ってクラッチヒッターを投げ続けて2本追加。フォローのドロップショットでも追加しリミットメイク達成。さらに、再びクラッチヒッターで1本獲って入れ替えと、ここまではプラン通りの展開。
そして、「ここから勝負」とこのマリーナを後にした。しかし、リミットメイクするまでに思った以上に時間が掛かってしまった。なので、勝負の釣りにあまり時間を割くことができず、結局ラバージグでは1本入れ替えただけに終わった。そして、ウェイインが始まると、戦前の予想に反してみんな物凄いウエイトを持っていた。初日の結果は95位。
2日目。こうなると「もう勝負に行くしかない」とこの日はひと流しだけしてすぐにマリーナを出て、ラバージグ1本でデカイのだけを狙っていこうと決断した。ただ、この日はファーストフライトなので、「先行者がいない状態でマリーナに入れればナイスサイズが獲れるかも」という期待もあった。
朝一まずマリーナに入り、クラッチヒッターをキャスト。すぐに1本目が来たが、期待に反して普通のキーパーサイズ。その後追加もできず、例の2人も入ってきたので、予定通り1周してすぐに移動。
「ここからが勝負!」
自分のスタイルは、誰にも釣ることができないビッグバスだけを常に狙っていくというもの。そのための両腕が「巻く釣り」と「撃つ釣り」だが、今回はその「撃つ釣りをやり切ることで道を切り拓く」と強く自分に言い聞かせて、ラバージグでバンクのレイダウン、ブッシュ等、目に見えるカバーを片っ端から撃っていく。そして……
ついに、この日のビッグフィッシュ賞に迫る5ポンドオーバーのビッグフィッシュがきた。「このサイズで揃えることができれば20ポンドを超える」と、似たようなロケーションに絞り込んでカバーにラバージグを撃ち続けていく。そしてリミットメイク。だが、5ポンドフィッシュ以外はキッカーを獲れずタイムリミット。結果18ポンド14オンスで85位。
もちろん満足いく結果ではないが、一筋の光が見えたような今シーズンのターニングポイントともなりえる試合だった。あまりの不調ぶりに、わかっていてもできなかったデカイ魚のみをストロングな釣りで追い続けるというスタイル。これこそが本来の自分の姿だったはず。ビッグフィッシュだけを狙い、自分の得意な釣りを貫き通す強い信念を持って試合に臨むこと。それを思い出させてくれたのが、今回の5ポンドオーバーだった。
プロとして結果がすべてだとは思うが、結果が伴わない試合でも決して無駄な時間を過ごしているわけではない。初戦より2戦目、2戦目より3戦目。そして、3戦目より4戦目と結果からだけでは計れないもっと大きなものをつかみとったレイク・ウィーラー戦。
「気持ちを強く持って自分の釣りを貫け!」と言ってくれたこの魚のおかげで長いトンネルを抜けることができ、次のトレドベンド戦の決勝進出につながることになる……
■清水盛三が語る 2016バスマスターエリートシリーズ前半戦
ラバージグのカバー撃ちで勝負してつかんだ決勝への道(後編)はコチラ
■第4戦 タックルデータ
ロッド:ヘラクレス HCSC-68MG オセロット
ライン:ナイロン 17lb
ルアー:クラッチヒッター(プロト)
ロッド:シナジー CSYC-71H スーパーディトネーター
ライン:フロロカーボン 20lb
ルアー:プロトラバージグ 1/2oz
■関連サイト:B.A.S.S. Bassmaster
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